「午後になると眠くて集中できない」のは〈隠れ低血糖〉かもしれません|産業医が解説
「昼食後、午後になるとどうにも眠くて集中できない」と感じたことはありませんか?食後の眠気ではなく、その原因はもしかすると「隠れ低血糖」にあるかもしれません。産業医の視点からそのメカニズムと対策について解説します。
「午後になると眠くて集中できない」それ、“隠れ低血糖”かもしれません|産業医が解説
まず、低血糖とは、血液中のブドウ糖(血糖)濃度が異常に低下した状態を指します。
一般的には、糖尿病の治療中に起こる急激な血糖値の低下を指すことが多いですが、「隠れ低血糖」は、血糖値が正常範囲内ではあるものの、食後など急激な血糖値の変動を繰り返すことで、様々な不調を引き起こす状態を指します。
この隠れ低血糖の主な原因は、血糖値のジェットコースター現象です。
1.血糖値の急上昇
私たちが食事をすると、食べ物に含まれる糖質が分解され、ブドウ糖として血液中に取り込まれます。特に、菓子パンや丼もの、ラーメン、清涼飲料水など、精製された糖質を多く含む食品を摂取すると、血糖値は急激に上昇します。
2. インスリンの過剰分泌
血糖値が急上昇すると、体は血糖値を下げようと、膵臓からインスリンを大量に分泌します。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませることで血糖値を下げるホルモンです。
3. 血糖値の急降下(低血糖状態)
インスリンが過剰に分泌されると、血糖値は下がりすぎることがあります。これが「隠れ低血糖」の状態です。
脳のエネルギー源は主にブドウ糖であるため、血糖値が急激に下がると、脳がエネルギー不足に陥り、眠気や倦怠感、集中力の低下といった症状が現れます。
この眠気が、多くの人が経験する「食後の眠気」の正体である可能性が高いのです。
この他にも、隠れ低血糖は、以下の症状を呈することがあります。
- 集中力の低下
- 思考力の鈍化
- 強い眠気
- 倦怠感
- イライラ
- 気分の落ち込み
- 震え
- 動悸
- 冷や汗
- 頭痛など
これらの症状は、特に昼食後に現れやすいため、午後の仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
単なる眠気だと片付けずに、自分の食生活を見直してみることが重要です。
隠れ低血糖の対策
隠れ低血糖を改善するためには、血糖値の急激な変動を抑えることが最も重要です。
以下の対策を日々の生活に取り入れてみましょう。
1. 炭水化物の質を見直す
・ 精製された糖質を避ける
白米、白いパン、うどん、菓子パン、清涼飲料水など、精製された糖質は血糖値を急激に上げやすいです。
・ 未精製の穀物を選ぶ
玄米、全粒粉パン、そばなど、食物繊維を豊富に含む食品は、糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を抑えます。
・ 食物繊維を先に食べる
食事の最初に野菜やきのこ、海藻など、食物繊維を豊富に含む食品を摂ることで、後から食べる糖質の吸収を穏やかにする効果が期待できます。これを「ベジファースト」といいます。
2. 食べ方を工夫する
・ よく噛んでゆっくり食べる
咀嚼回数を増やすことで、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐだけでなく、消化吸収も緩やかになります。
・ 一食に偏らず、バランス良く食べる
炭水化物、タンパク質、脂質をバランス良く摂ることで、血糖値の急激な変動を抑えられます。特に、タンパク質や脂質は消化に時間がかかるため、腹持ちが良く、満腹感を持続させる効果があります。
3. 食事の回数やタイミングを調整する
・ 間食を上手に活用する
どうしてもお腹が空いて集中力が切れてしまう場合は、血糖値の急上昇を招かないよう、ナッツやチーズ、ゆで卵など、血糖値を上げにくい食品を少量摂るのがおすすめです。
4. 食後の過ごし方
・ 食後に軽く体を動かす
食後15〜30分程度の軽い散歩や、職場でできる簡単なストレッチなどは、筋肉がブドウ糖を消費するため、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。エレベーターではなく階段を使う、遠回りしてデスクに戻るなど、小さな工夫から始めてみましょう。
・ 昼食後の喫煙やカフェイン過剰摂取に注意する
喫煙やカフェインは、血糖値を上昇させる作用があるため、食後に摂取すると血糖値の急変動を招く可能性があります。
まとめ
午後の眠気や集中力の低下は、単なる気のせいではなく、隠れ低血糖という体のサインかもしれません。
これを放置すると、仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、イライラしやすくなったり、将来的に糖尿病のリスクが高まったりする可能性もあります。
まずは、昼食に何を食べているか、どのように食べているかを見直すことから始めてみましょう。
菓子パンや丼もの、ラーメンなどの単品メニューから、定食のようにバランスの取れた食事に変えてみる、食事の最初にサラダを食べる、食後には少し散歩をしてみるなど、これらの小さな意識改革が、午後のパフォーマンスを劇的に改善する第一歩となります。
もし、上記のような対策を試しても改善が見られない場合や、症状が重い場合は、糖尿病内科など専門医療機関に相談することをお勧めします。
日々の体調管理に気を配り、最高のパフォーマンスで仕事に臨みましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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