産業医が教える、ストレスから来る体の症状「こんな不調には注意!」 "危ない兆候"についても解説
日々のストレスは、心だけでなく身体にも様々な不調を引き起こすことがあります。身体症状として現れる場合、本人がストレスと気づいていないケースも少なくありません。今回、産業医の視点から、よくある症状とその背景を解説します。
産業医が教える、ストレスから来る身体の症状とは
過度のストレスから来る、代表的な身体症状としては、頭・脳の関連では、頭痛・めまい・ふらつき・集中力低下などが挙げられます。
消化器系
- 胃痛
- 吐き気
- 下痢
- 便秘
- 食欲不振
呼吸器系
- 息苦しい
- 過呼吸
- 喉の詰まり感など
循環器関連
- 動悸
- 胸の圧迫感
- 血圧上昇など
筋肉・関節部位
- 肩こり
- 腰痛
- 関節痛
- 全身倦怠感
皮膚の関連症状
- 湿疹
- じんましん
- かゆみ
- 脱毛など
睡眠障害
- 不眠
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 寝ても疲れが取れないなどの変化
また、過度のストレスによって、特に、過敏性腸症候群を引き起こす可能性があります。
過敏性腸症候群
腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などをくり返す病気が過敏性腸症候群ですが、これはストレスを受けやすい几帳面な性格の20〜40歳代に特に多くみられて、過労や睡眠不足、不規則な食生活や不規則な排便などが誘因となることが知られています。
ストレス耐性が低い人が、過度の緊張によって自律神経が乱れると、腸管にけいれんが起きて排便のリズムが崩れることによって、下痢などの便通症状がもたらされることにも繋がります。
日々の生活のなかで緊張を感じて、不安になることがあると、腸全体の働きが影響を受けて、下痢などの症状が出現することがありますので、多大なストレスや過度の緊張などに伴って自律神経のバランスが崩れている人は過敏性腸症候群を発症しやすいと考えられます。
ストレスが発症に関連している過敏性腸症候群は、腹痛や腹部全体の不快感だけでなく下痢や便秘症状を伴う疾患であり、男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型、女性では便秘型として出現することが多いと伝えられています。
自律神経やホルモンのバランスの乱れ
ストレスによって、自律神経の乱れが起こり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、内臓・血流・呼吸など様々な体の部位に悪影響を及ぼします。
ストレスは、ホルモンバランスの変化を引き起こして、ストレスホルモン(コルチゾール等)の過剰分泌により、消化器・免疫・睡眠へ悪影響を与えることがあります。
また、免疫力低下を助長させて、風邪をひきやすい・口内炎・帯状疱疹など免疫異常が出やすいともいわれています。
産業医がよく見る相談例
頭痛・肩こりが続く場合には、長時間労働・PC作業・ストレスが関連している可能性が考えられます。
また、胃の不調・食欲不振の場合には、精神的プレッシャー・不安感が背景にあるパターンが多いです。
息苦しい・動悸・胸の痛みを呈する際には、不安障害・パニック傾向、また眠れない・起きられないなどの症状を認める際には、うつ・適応障害などを疑います。
症状を軽視して、放置すると、メンタル疾患(うつ・適応障害・不安障害)へ移行することもありますし、心筋梗塞・脳卒中など生活習慣病悪化を招き、長期欠勤・休職に発展しやすい危険性があります。
産業医としての対処アドバイスとしては、ストレスによって、体の不調をきたしている場合には、休息・睡眠を最優先にして、労働時間・負荷の調整を行う、産業医面談・職場の相談窓口利用する、必要に応じて、心療内科・内科等を受診することを推奨します。
産業医が教える、こんな不調が起こったら要注意!
普段の疲れやストレスは誰にでも起こると軽く考えがちですが、ストレスに伴う体の不調症状を放置すると深刻な病気や心身の不調につながるケースがあります。
産業医の立場から、「これは注意した方がよい身体のサイン」をご紹介します。
咳が止まらずに2週間以上継続している場合
喘息・COPD・咳喘息・肺疾患・感染症などを疑います。
微熱が続く・倦怠感がある
結核・膠原病・がん・慢性疲労・心因性などの関連を考慮しますし、急な体重減少をみたときには、糖尿病・甲状腺疾患・悪性疾患・うつ病などを鑑別疾患として挙げます。
胸の痛み・息切れの場合
心筋梗塞・狭心症・不安障害・肺塞栓症を考えて、動悸・めまい・立ちくらみなどの症状を訴える際には、貧血・不整脈・自律神経失調・パニック障害などの可能性を検討します。
頭痛がひどく、手足のしびれ・脱力が認める場合
脳梗塞・神経疾患・頚椎症・多発性硬化症などの病気を検討しますし、不眠で朝起きられない際には、うつ・適応障害・睡眠障害・過労などを疑います。
食欲不振・胃腸不良症状を認める場合
胃腸疾患・うつ・自律神経失調症などを考えます。
消化器症状の中でも、特に胃もたれは、食後や食間に胃が重く感じる症状のことであり、暴飲暴食、加齢やストレスなどが影響して、胃の運動や消化機能が低下することにより引き起こされやすくなります。
特に、日々の慢性的なストレスによって、胃の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れると、食べ物を消化して、小腸に送り出す機能が低下して、胃もたれが自覚されやすくなります。
胃の働きは、自律神経によってコントロールされていて、長期間のストレスによって自律神経のバランスが乱れると、食べ物を消化する準備をして小腸に送り出す胃の役割が低下することにつながります。
通常、食べ物が何らかの影響により消化が遅くなって、胃に食べ物が残留し続ける状態になると胃もたれなど不快な症状が出現しますし、胃もたれの感じ方も、人によって様々です。
ケースバイケースですが、例えば胃もたれの症状として、胃がずっしりする、常に腹部が苦しい、消化不良を起こして胃が張っている、長期間に渡って吐き気を催す場合なども存在します。
産業医が見る “危ない兆候”
症状が長期間続く場合です。数日ではなく、2週間以上続く症状がある場合には、要注意です。
日常生活や仕事に支障がある、「咳+倦怠感」「息切れ+動悸」「不眠+体重減少」など複数の症状が重なる場合には、特に治療介入する必要性が高いと考えられます。
産業医からのアドバイスとしては、セルフチェックをすることが重要であり、「たかが咳」「たかが疲労」と甘く見ずに、『症状が続く・悪化する・他の症状もある』場合は、可及的速やかに専門医療機関を受診することをお勧めします。
まとめ
ストレスが身体に出たときのサインとして、原因不明の体調不良が続く、精密検査を実施しても異常がない、休むと改善し、働くと悪化するような場合には、早めに産業医に相談する、適切に受診することが心身の健康を守ることにつながります。
例えば、咳が2週間以上止まらない、下痢や胃もたれが悪化する、微熱や倦怠感が続く、息切れ・動悸がある、不眠や体重減少が続く際には、症状を放置せずに、適確に専門医療機関を受診して、詳細に相談するように心がけましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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