心配事があると腹痛→下痢に…人口の約15%が発症している「過敏性腸症候群」なりやすい人の特徴は?
心配なことがあると急にお腹が痛くなる、下痢になる…下痢止めが手放せない、そんな方はもしかしたら過敏性腸症候群かもしれません。どんな病気なのか?発症しやすい人の特徴を解説します。
過敏性腸症候群とはどのような病気か
腸という臓器は「第二の脳」とも呼ばれるほど独自の神経ネットワークを多数持っており、脳からの指令が無くても活動することが出来ると言われています。
「腸脳相関」とは、生物にとって重要な器官である脳と腸がお互いに影響を及ぼしあうことを意味している言葉であり、ストレスを感じるとおなかが痛くなって便意をもよおすことも腸脳相関のひとつであると認識されています。
ストレスが発症に関連している過敏性腸症候群は、腹痛や腹部全体の不快感だけでなく下痢や便秘症状を伴う疾患であり、男性では腹痛やお腹の不快感をともなう下痢型、女性では便秘型として出現することが多いと伝えられています。
命に直結する致命的な病気ではありませんが、電車の中などトイレのないところでは非常に困るなど生活の質を著しく悪化させます。
過敏性腸症候群を発症する原因は、はっきりとはわかっていませんが、最近の研究では、何らかのストレスが加わると、ストレスホルモンが脳下垂体から放出されて、その刺激で腸の動きが悪化して、過敏性腸症候群の典型症状が認められると想定されています。
過敏性腸症候群では、腸が刺激に対して「知覚過敏」になり、ほんの少しの痛みやストレスから、脳のストレス反応を惹起して、症状が悪循環になるという負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。
過敏性腸症候群になりやすい人とは
腸管に明らかな炎症や潰瘍などの病変がないのに、腹痛や腹部不快感に下痢や便秘を伴う症状が続く病気を過敏性腸症候群と呼んでいます。
血液検査や内視鏡検査でも顕著な異常が見つからず、日々のストレスで腹部症状が悪化することから心身症のひとつとして認識されています。
過敏性腸症候群は、人口の約15%程度に認められるとされており、そのなかでも特に女性に引き起こされやすい疾患であると認識されていて、年齢を重ねるごとに罹患頻度は減少していくことが判明しています。
腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などをくり返す病気が過敏性腸症候群ですが、これはストレスを受けやすい20〜40歳代に特に多くみられて、過労や睡眠不足、不規則な食生活や不規則な排便などが誘因となることが知られています。
ストレスや緊張によって自律神経が乱れると、腸管にけいれんが起きて排便のリズムが崩れることによって、下痢などの便通症状がもたらされることにも繋がります。
日々の生活のなかで緊張を感じて、不安になることがあると、腸全体の働きが影響を受けて、下痢などの症状が出現することがありますので、多大なストレスや過度の緊張などに伴って自律神経のバランスが崩れている人は過敏性腸症候群を発症しやすいと考えられます。
過敏性腸症候群の治療予防策は?
日常的に溜まった過労や睡眠不足が影響するだけでなく、食事が不規則な生活が長期的に継続されると身体がストレスを感じて、腸管運動が異常に活発化して下痢などの便通異常症状を引き起こして過敏性腸症候群を発症することにつながります。
これらの便通異常の症状に対して対症療法を活用して改善させることも一時的な対処法としては悪くありませんが、根本的に腹部症状を引き起こす原因となっている日々のストレスを解消して対策を講じることが最も重要なポイントと考えられます。
腸はストレスの影響を受けやすく極めてデリケートな臓器であり、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、腸管機能にも異常を呈して過敏性腸症候群を発症する可能性もありますので、ストレスを自分なりに上手に解消することが重要な観点となります。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診してください。
まとめ
これまで、過敏性腸症候群とはどのような病気か、過敏性腸症候群になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。
過敏性腸症候群は、小腸や大腸に器質的な異常所見が指摘されないのにもかかわらず下痢や便秘などの便通異常を伴う腹部不快感が慢性的に長期間にわたって繰り返される病気を指しています。
現代社会はストレス社会とも言われており、現代人の体調や腸の状態とストレスは密接な関係にあって、過剰なストレスは過敏性腸症候群を始めとして心身に多彩な不調を呈することが判明しています。
過敏性腸症候群を予防する為にも、休日などは心を解放して、心身ともにリラックスするとともに、普段から十分な睡眠と休養、バランスの優れた食事、適度な運動を実践するなど、規則正しい生活を心がけて腸の調子を安定的に良好に保ちましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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