ただの腹痛とは違う?意外と知らない【虫垂炎】なりやすい人の特徴は?予防・治療法は?医師が解説

 ただの腹痛とは違う?意外と知らない【虫垂炎】なりやすい人の特徴は?予防・治療法は?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-10-25

虫垂炎という病気を知っていますか?

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虫垂炎とはどのような病気か

通常では、小腸部位から大腸に移行する箇所には、盲腸と呼ばれる部位があり、その盲腸部から突出している突起物を「虫垂」と呼称しています。

虫垂炎とは、大腸の一部である虫垂という場所に炎症が起こっている状態を指します。

虫垂炎は一般的に盲腸とも呼ばれていますが、いわゆる子供から大人まで幅広い年齢層で発症するとされている頻度の高い病気です。

虫垂炎の原因としては、明確には判明していませんが、どうやら虫垂部に便や植物の種などが入り込むことによって細菌感染を合併して発症すると言われています。

虫垂
盲腸部から突出している突起物が「虫垂」。イラスト/Adobe Stock

この疾患に罹患すると、右下腹部の痛みや吐き気、食欲不振などの消化器症状が出現しますが、一般的に虫垂炎の症状は時間経過に応じて変化するという特徴があります。

初期の段階では食欲低下や臍部周囲の不快感などが自覚され、炎症が波及するにつれて疼痛部位が心窩部あたりから右下腹部へと移動するようになります。

古典的にも急性虫垂炎の代表症状は心窩部痛または臍周囲痛に続いて起こる短時間の悪心嘔吐や食欲不振が有名であり、疼痛そのものが咳嗽や動作で悪化することが知られています。

特に、子供や高齢者、あるいは妊婦さんでは症状の訴えが客観的に捉えにくく、各々の虫垂炎のケースによって自覚する症状の程度も変わってくるので正確な判断が難しい病気とも言えます。

虫垂炎になりやすい人とは

慢性的に便秘を抱えている人は、虫垂炎になりやすいと考えられています。

解剖学的に虫垂の片側端は盲腸側に窓口が開いていますが、反対側については行き止まりになっているために、仮に虫垂の内部に硬便が詰まって虫垂壁の粘膜に炎症が起こり腫れて内腔を塞ぐと、虫垂内部の圧力が著明に高くなります。

そして、虫垂内の圧力が上昇して逃げ場を失うと、虫垂へ送られる血流が障害を受けて、虫垂粘膜層に十分な血液が届かなくなり細菌感染を合併しやすくなることで虫垂炎が発症することに繋がります。

硬い便は通称で糞石とも呼ばれ、この糞石による虫垂内腔の閉塞が虫垂炎の原因とも考えられており、この糞石成分は食物繊維が少ない食生活が関与して形成されると伝えられています。

また、子どもでは虫垂炎は手術を必要とする疾患の中で最も多い疾患であるとされ、その要因の一つは主に内腔閉塞で起こる虫垂のみの変化によって起こるもの、そしてもう一つの原因として周囲の腸炎に続いて二次性に発症するものが考えられています。

いわゆる便秘傾向や胃腸炎などの風邪、あるいは過労やストレス、そして暴飲暴食などといった日常生活の不摂生によって体力が消耗して、免疫力が低下することで細菌やウイルスに感染しやすくなってしまっている人も虫垂炎を発症しやすいと考慮されます。

虫垂炎の治療予防策は?

現実的に医療機関などで急性虫垂炎を診断する方法としては、医師の腹部触診、血液検査、腹部CT検査、あるいは超音波検査などを実行します。

虫垂炎の所見が軽症であれば、抗生剤によって炎症を抑えこんで制御する治療が行われ、中等度以上に炎症所見が進行した虫垂炎のケースでは手術による治療が必要な場合もあります。

虫垂炎を発症した際の治療方法としては、抗生剤を使用して虫垂の炎症を抑える保存的な療法、あるいは根本的に虫垂切除処置を実施する手術治療のふたつが大きく推奨されます。

多くの症例では保存的治療で症状が改善することが認められますが、実際に治療を行う担当医から個々の炎症状態、保存治療の適応があるか、手術治療の必要性などを十分に確認したうえで治療法を選択するように心がけてください。

急性虫垂炎は炎症が比較的早期に進行して悪化する病気であり、発見が遅れることも往々にして認められ、気付いた時には重症状態になる場合もありますので格段の注意が必要であると考えられます。

万が一、炎症がさらに悪化すると虫垂壁の外部にも強い炎症像が波及して、腹部症状が重篤化して腹膜炎と呼ばれる状態に進行してしまい緊急的な処置が必要になることもあります。

虫垂炎は便の塊などが虫垂周囲を塞ぎ細菌感染することによって発症する恐れがあると考えられているので、普段から便秘を改善して食物繊維の多い食事メニューを摂取して栄養バランスの取れた食生活を心掛けるように意識しましょう。

さらに、便秘がひどい場合には通常よりも虫垂部が圧迫されて、壊死や炎症を起こしやすいと考えられますので、日常的にヨーグルトや納豆など腸内環境を調整して整腸作用を有する食事を積極的に食べることによって便秘症にならないように注意しましょう。

まとめ

これまで、虫垂炎とはどのような病気か、虫垂炎になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

虫垂炎は、糞石などに伴って虫垂内腔の閉塞が原因となって、腸の入り口である盲腸から垂れ下がっている虫垂という部分の炎症によって発症すると考えられています。

この病気は、男女関係なく子供から成人および高齢者に至るまで幅広い年齢層で発症すると言われており、特に10〜20代頃での発症が疫学的に多いとされています。

虫垂炎では、右下腹部に激しい腹痛の症状が出るのが通常であり、症状を放置すれば病状が悪化することが多いですので、腹部の痛みが右下腹部へ移動するようであればできるだけ早く病院を受診するように心がけましょう。

また、日常生活の不摂生そのものによって体力が消耗して細菌やウイルス感染に発展する場合も十分ありうることから、常日頃から規則正しい生活習慣スタイルを送ることが虫垂炎にならないための予防策になります。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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