「ただの腹痛」と放置しちゃダメ!すぐに病院に行くべき「腹痛」その見分け方や基準とは?医師が解説


腹痛の原因によっては、症状を放置すると生命に直結するような重大な病気である可能性も考えられます。医師が解説します。
すぐに病院に行くべき「腹痛」の見分け方とは?
腹部に強い痛みを自覚する背景には胃や大腸、膵臓や胆嚢などに主たる原因が認められることが往々にして存在し、腸閉塞、急性膵炎、胆嚢炎などの可能性が考えられます。
腸閉塞
腸閉塞における代表的な症状は、嘔気、嘔吐、腹満感、腹痛、便秘などがあり、大きく分けて機械的腸閉塞と機能的腸閉塞があります。
機械的腸閉塞とは、腸が物理的な原因で詰まってしまうタイプである一方で、機械的腸閉塞は腸が物理的に閉塞している状態で、そのなかでも閉塞性と絞扼性に分けられます。
- 閉塞性腸閉塞
血行障害を伴わず、胆石や腫瘍、腹部手術などによる癒着などが原因で腸管が塞がれることで発症します。
- 絞扼性腸閉塞
腸管の血行障害を伴い、腸重積や鼠径ヘルニア嵌頓、腸軸捻転症などにともなって腸管がねじれることが主な発症原因であり、特に、絞扼性腸閉塞の状態になると、腸管の血行が滞ることにより、腸が壊死する場合があるために早めの対応が必要です。
急性膵炎
腹痛発作などを引き起こして、軽症の場合には、数日の絶食と補液加療で、合併症なく治癒します。
ところが、重症急性膵炎では、膵臓から逸脱した膵酵素やケミカルメディエーターによって全身組織の血管内皮が障害 されて、血管透過性が亢進する病態となります。
軽症の急性膵炎では、炎症が膵臓とその周辺までに限局し、死亡率は5%未満であるといわれていますが、重症急性膵炎では、持続性の臓器不全または多臓器不全がみられて、ほとんどの患者で少なくとも1つの局所合併症を伴い、死亡率は30%超となります。
胆嚢炎
胆汁が滞留することによって胆嚢の炎症を起こす病気であり、急性胆嚢炎では、強い腹痛や発熱、吐き気や嘔吐などが現れます。
このような場合には消化器内科などを受診して医師による問診などの診察を受けて、腹部超音波検査や画像検査、あるいは上部消化管内視鏡検査などの精密検査を受けることが有用です。
いずれにしても腹痛を呈する原因がよく分からない場合には、まずは内科や救急科を受診しましょう。
診察した後、様々な精密検査の結果によって正確な診断を付けることで治療の方向性が判明しますし、必要に応じて個々のケースにおいて適切な診療科を紹介してくれますので安心してください。

腹痛が起こった時の対処策は?
おなかの痛みを感じてしばらく様子をみていると自然に軽快していく一時的なものであれば、必ずしも病院やクリニックを受診する必要性は高くありません。
しかし、腹痛を呈する原因には、急性膵炎で重症化して、命にかかわるケース、あるいは腸閉塞や胆嚢炎など、手術が必要になる重篤な病気も隠れていることが時にあることを忘れてはいけません。
例えば、おなかの痛みがこれまで経験したことがないぐらいひどい場合、あるいは痛みが理由で動けずに冷や汗をかいている方や疼痛症状が原因で食事がとれずに体重減少が著しく認められる人では早期的に医療機関を受診することが勧められます。
さらに、突然強い痛みが起きて段々と症状が悪化していく場合、話しかけても反応せずに意識状態が悪くなっている時、または血を吐く、血便を認めている方のケースでは迅速な治療が必要であると考えられますのですぐに救急車を呼びましょう。
医療機関での症状の伝え方
実際に、自分がおなかの痛みを感じた際に医療機関で医師や看護師さんにわかりやすい言葉で症状を正しく伝えるために重要な事項を伝えておきます。
□ 痛みが始まった時期
そのひとつとしては、痛みが始まった時期をなるべく正確に伝えるように意識して、果たしておなかの痛み自体が急激に悪化したのか、あるいは徐々に痛みが強くなったのか、そしてどのような状態の時に腹痛を感じるかを詳細に訴えましょう。
□ 食事内容
また、食事内容が原因でおなかの痛みが起こっていることも考えられますので、普段食べないものを食べたとき、あるいは外食して生ものを摂取した場合などは出来る限り担当医に伝えるように心がけましょう。
□ 痛む部位
診察時には、しんどくてもおなかのどのあたりがもっとも痛む部位なのかを正確に示すことが非常に重要です。
□ 痛み具合
一番しんどい腹痛部位がちょうどへそ周辺なのか、右下腹部あたりなのか、そしてその場所がズキズキ痛むのか、チクチクするだけなのかなどなるべく痛みを簡易的な言葉で表して医師などへ伝えるとより正確な診断をするうえで参考になります。
□ 腹痛以外の症状の有無
さらに、発熱や頭痛など腹痛以外の症状を認めている場合、あるいは下痢や血便など便通異常を引き起こしている方においては、それらの事実も正直にあわせて担当医などに伝えるように認識しておきましょう。
まとめ
「腹痛を時に自覚していったん症状が出るとなかなか治らない」、「腹痛を感じたときに病院や診療所は何科に行けばいいのか?」など心配になることもありますね。
実際のところ、腹痛を呈する疾患は多種多様です。
時に、腹痛の原因が、腸閉塞や急性膵炎、胆嚢炎など、症状を放置すれば生命に直結するような重大な病気である可能性も考えられますので、心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診しましょう。
一般の人が、おなかの痛みを感じた場合、受診する前に腹痛の原因を明確に特定するのは難しい状況も想定されますので、まずはかかりつけ医に相談する、あるいは総合内科や総合診療科、救急科などを受診することも検討してください。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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