膵臓が溶ける緊急事態も!急性膵炎・慢性膵炎とはどんな病気?膵炎になりやすい人の12の特徴

 膵臓が溶ける緊急事態も!急性膵炎・慢性膵炎とはどんな病気?膵炎になりやすい人の12の特徴
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膵臓は胃や腸とは違ってあまりなじみのない臓器で、症状が出ていても膵臓の病気と気づかないことが多くあります。この記事では、代表的な膵臓疾患である急性膵炎、慢性膵炎のサインや膵炎を起こしやすい人の特徴などを解説します。

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膵臓はどんな働きをするのか?

膵臓はおへその少し左上、胃のちょうど裏側にある長さ15cmほどの細長い臓器で、おもに2つの働きをしています。1つは膵臓から分泌される膵液を十二指腸に排出し、食べ物の消化吸収を促進する働きです。もう一つは、インスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する働きで、これらのホルモンは血糖値を調節します。また、膵液は弱アルカリ性となっており、胃酸の影響で酸性になった食べ物を中和する働きがあります。酸に弱い十二指腸を守り、消化酵素が働きやすい環境をつくっているのも膵臓の働きによります。

膵臓
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膵臓に起こるおもな病気

膵臓の病気はおもに「急性膵炎」「慢性膵炎」「膵臓がん」などですが、これらの疾患は近年、徐々に増加しています。とくに急性膵炎や慢性膵炎の原因として大きな割合を占めているのは、長年にわたる飲酒です。飲酒量が増えるほど、急性膵炎や慢性膵炎の罹患率が高くなります。また、和食から欧米型への食生活の変化も影響しています。脂っこいものや肉類に偏った食事は、膵臓病の原因となる胆石をつくりやすくなり、膵炎の原因になります。食べ過ぎや肥満によって起こる膵炎は、とくに女性に多く見られます。いわゆる生活習慣病としては、高血圧や糖尿病などがよく知られていますが、実は膵臓病の発症にも生活習慣が深く関わっています。

なお、膵臓がんは30年前の10倍以上に増えており、現在では、肺がん、大腸がん、胃がんに続き4番目に多いがんとなっています(死亡数順)。 膵臓がんは症状が現れにくく、進行が早いため、自覚症状が出て発見されたときにはかなり進行しているケースが少なくありません。

急性膵炎とはどんな病気か?

自らの消化酵素で膵臓を消化してしまう

急性膵炎は、膵液に含まれる消化酵素が自らの膵臓を消化し(自己消化)、組織の壊死とそれに伴う炎症を起こす病気です。激しい炎症を伴うことが多く「おなかのやけど」ともいわれます。膵液にはタンパク質を消化するトリプシンなどの消化酵素が含まれており、通常、膵臓の中では働かない状態、すなわち非活性化の状態ですが、これが何らかのきっかけで活性化され、膵臓自身を消化してしまいます。50~60代以上の中高年齢の人に多くみられ、軽症の場合でも1~2週間の入院が必要です。とくに、膵液が周囲の組織にもれ出て広がった壊死部に腸内細菌が感染してしまい、敗血症を起こすような重症なケースでは、命に関わることもあります。

急性膵炎の症状とは?

みぞおちのあたりに激しい痛みが起こる

急性膵炎の症状の特徴は、急に起こるみぞおちあたりの激しい痛みです。多くは、お酒を飲んだり、食事をしたあと数時間後に発症し、ときにはお腹全体が痛くなることがあります。また、放散痛(痛みが離れたところに響くこと)といって、背中や腰のほうが痛むことや、吐き気や嘔吐、発熱などを併発する場合もあります。急性膵炎の多くは軽症で、膵臓は元どおりに回復します。しかし、20%ほどは膵臓の炎症が全身に広がって、血圧の低下、呼吸困難、尿量低下、意識を失うなど重篤な症状となることがあります。これは「重症急性膵炎」と呼ばれ、死亡率10%の危険な状態です。また、発症時は軽症でも、数日後に重症化することがあるため、決して油断できません。

慢性膵炎とはどんな病気か?

繰り返す炎症のため、膵臓の細胞が破壊される

慢性膵炎は、長年にわたって膵臓の炎症を繰り返しているうちに、膵臓の正常な細胞が徐々に破壊されていく病気です。細胞が破壊され続けると、繊維のような組織が増え(繊維化)、膵臓が硬くなり、治療をしても元に戻ることはありません。また、繊維化に伴い、カルシウムが沈着して石灰化が起こり、膵管に膵石という結石ができることもあります。細胞の破壊が進んで膵臓の働きが衰え、機能が5分の1以下になると、インスリンの分泌が足りなくなり、膵性糖尿病になるなど、全身に大きな影響を及ぼします。

慢性膵炎の症状とは?

繰り返す腹痛や吐き気などが起こる

慢性膵炎でも、急性の炎症が起こる場合には、急性膵炎のようにみぞおちのあたりに痛みが起こります。背中や腰に放散痛が起こることもあります。また、急性膵炎ほどの激痛ではなく、みぞおちのあたりに鈍痛が起こることもあり、腹痛はおもに飲酒や食事のあと数時間経ったころに起こります。そのほか、吐き気やお腹がなんとなく重苦しい感じ、腹部膨満感、食欲不振などの症状が見られることもあります。

膵炎になりやすい人の12の特徴

膵炎は飲酒や食生活の偏りなど、日常の生活習慣の乱れが重なって起こる生活習慣病の一つといえます。また、膵臓は、疲弊していてもなかなか症状が現れないため注意が必要です。次の項目に当てはまる人は、膵炎に罹るリスクが高いのでチェックしてください。

① 長年、ほぼ毎日お酒を飲み続けている

アルコールは、膵臓にとって大敵。長年の飲酒で膵臓への負荷が蓄積される。膵炎や膵臓がんを発症しやすいので要注意。

② 油っこい食べ物が好き

膵臓には脂肪を分解する消化酵素リパーゼを分泌する働きがある。そのため、油っこい食事は膵臓を疲弊させる原因に。膵炎や膵臓がんの予防には和食中心の食事を心がける。

③ 太っている

肥満があると膵臓の病気のリスクが高くなる。また、脂質異常症や糖尿病になりやすく、膵臓に負担をかけることに。

④ 酒好きで一度に大量に飲む

大量のアルコールは、膵臓を刺激してダメージを与える。炎症により、膵臓が溶けてしまうことも。とくに急性膵炎の原因になりやすい。

⑤ 脂質異常症である

脂質異常症の人は、胆石ができやすい。胆石がつまると、激しい腹痛に襲われる。膵炎の原因になりやすいので要注意。

⑥ 仕事や人間関係でストレスを抱えている

自律神経のバランスが崩れると、膵機能に悪影響を及ぼす。膵臓がんや膵炎の発症に関わっているため、心身ともに十分な休息を心がける。

⑦ 運動不足である

運動不足は、肥満、糖尿病、脂質異常症のどれにも深く関わっていて、膵臓にもその影響が及ぶ。予防には運動の習慣が大切。

⑧ 不規則な食事をしている

ホルモンや消化液の分泌に追われ、膵臓が疲弊してしまう。膵炎、膵臓がん予防には規則正しい食事が勧められる。

⑨ たばこを吸っている

喫煙は膵臓がんのリスクを約2倍に高める。また、慢性膵炎の発症や進行を早めることも分かっている。

⑩ 胆石が見つかった

胆石症は、胆汁の成分が固まる病気で、膵炎の発症や進行に悪影響を及ぼす。胆石症の人は定期的な経過観察と食生活の改善を。

⑪ 糖尿病である

膵臓には血糖値を調節する働きがある。糖尿病があると膵臓に負担をかけるうえ、膵臓がんのリスクも高くなる。

⑫ 家族に膵臓病の人がいる

家族に膵臓病の人がいると、膵臓病のリスクが高いことが分かっている。膵炎、膵臓がんのほか、胆石症にも注意が必要。

まとめ

急性膵炎や慢性膵炎は、お酒の飲みすぎや脂肪の多い食事の摂り過ぎ、肥満などが原因で生活習慣の一つといえます。膵炎が起こると、飲食後、数時間後に膵臓が位置するみぞおちや背中に痛みが現れることが多く、そのサインを見逃さないことが大事です。また、膵炎になりやすい人には特徴があり、該当する項目がある場合は注意が必要です。気になる症状がみられた場合は、消化器科を受診してください。とくに急性膵炎は、場合によっては命に関わるため、強い症状でなくても早期の対処が必要です。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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