年々増加傾向にある【肺がん】喫煙だけじゃない?肺がんになる意外な原因は|医師が解説

 年々増加傾向にある【肺がん】喫煙だけじゃない?肺がんになる意外な原因は|医師が解説
Adobe Stock
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-01-03

肺がんになる意外な原因について医師が解説します。

広告

肺がんとはどのような病気か

肺がんと新たに診断される人の数は年々増加しており、2015年には約11万人(男性 約8万人、女性約3万人)が肺がんと診断されています。男女別では、男性のほうが女性の約2倍程度多く罹患しており、年齢が上昇すればするほど罹患率も高くなり、特に60歳以降になると急激に増加すると指摘されています。2018年の厚生労働省の報告では、肺がんは日本人のがんによる死亡数の第1位を占めているとのことであり、肺がんは現在のところ世界的に増加傾向にあります。

肺がんは、腫瘍が認められる患側はもちろんのこと、その反対側の肺実質やその他の臓器である脳、骨、肝臓、副腎、リンパ節などに転移しやすいと考えられています。転移形態は、肺で構成されたがん細胞が血液やリンパ液の循環に乗じて、他臓器に移動して増殖するために引き起こされますが、特に肺では多くの血管やリンパ管が構造的に張りめぐらされて存在するため、悪性腫瘍が他の臓器に波及しやすいと考えられます。

肺がんに伴う症状としては、大きく分けて原発巣やリンパ節転移による症状、あるいは遠隔転移に合併する症状に分類することができます。肺がん自体が他の悪性腫瘍と比較して自覚症状が出現しにくい疾患として代表的ですが、特に早期的な段階であるステージでは無自覚で経過することが多く、時に症状として咳や血痰、食欲減退などが認められることがあります。

肺がんの発症原因とは

肺がんは一般的に喫煙歴と深い関係にあることが多く、本疾患を予防するうえで禁煙は欠かせません。何より見逃してはいけない事実として、喫煙は肺がんの危険因子の重要な要素であることであり、喫煙者は非喫煙者と比べて男性で約4倍、女性では3倍近く肺がんになりやすいと言われています。さらに、喫煙行為を始めた年齢が若ければ若いほど、また喫煙量が多ければ多いほど肺がんを発症するリスクが高くなります。そして、受動喫煙(周囲に流れるたばこの煙を吸うこと)も肺がんのリスクを2~3割程度高めることが知られています。

肺癌
喫煙者は非喫煙者と比べて男性で約4倍、女性では3倍近く肺がんになりやすいと言われている。photo by Adobe Stock

肺がんは、喫煙習慣以外にも肺細胞の遺伝子に傷がつくことで発生すると考えられており、細胞に傷をつける原因は様々ですが、最大の原因としてたばこの影響が指摘されています。実際のところ、両親や兄弟、近い親戚などに肺がん発症者がいると、本人も肺がんを罹患する危険性が高くなる理由は解明されていません。

一方で、例えば家族の誰かが喫煙していると他の家族もたばこの煙を吸う機会が多くなる、あるいは同居者の受動喫煙などの影響もあって同様の生活習慣を共有しているという環境因子と肺がん発症リスクとの関連性が示されています。また、呼吸器系悪性腫瘍のひとつである肺がんの原因はタバコだけではなく、いわゆるPM10やPM2.5などを始めとする大気汚染物質もその発症リスクになります。

職業的に石綿などに曝露せざるを得ない状況や大気汚染が肺がんを発生するリスクを高めると言われています。世界保健機関によると、年間でおよそ120万人の死亡が大気汚染という原因が影響して引き起こされており、肺がんで死亡する人の約10%が大気汚染によると推測されています。今後は、世界レベルで大気汚染濃度を減少する試みに取り組むことで全体的に公衆衛生課題が改善して肺がんの発症リスクを少しでも低下させることが期待されるところです。そして、近年のさまざまな調査研究から、実は「女性ホルモン」が肺がんのリスク因子として有力視されてきています。

例えば、月経期間が長い女性や、エストロゲン補充療法を受けたことのある女性に、肺がんの発症率が高いことが従来から問題視されてきた経緯があり、これらの事実から肺がんにおけるエストロゲンの関連性についての研究が進められました。その成果があって、現在ではエストロゲンの体内合成にかかわる遺伝子と、特に肺腺がんとの関係や発症の仕組みが解明されつつあります。エストロゲンというホルモンに関しては高脂血症や高血圧の予防にも役立つ重要な女性ホルモンである一方で、月経期間の長い女性やエストロゲン補充療法を受けた経験がある女性の場合には、通常よりも肺腺がんのリスクが高くなることを認識しておきましょう。

肺癌
月経期間の長い女性やエストロゲン補充療法を受けた経験がある女性の場合には、通常よりも肺腺がんのリスクが高くなる。photo by Adobe Stock

まとめ

これまで、肺がんとはどのような病気か、喫煙だけじゃない肺がんを発症する意外な原因などを中心に解説してきました。

肺がんの主な原因は喫煙習慣であり、喫煙による肺がんの発症リスクは、喫煙しない人と比較して男性で約5倍、女性で概ね3倍程度とされています。

タバコには約60種類の発がん物質が含まれており、肺や気管支が繰り返して発癌性物質に暴露されることにより細胞に遺伝子変異が起こり、この遺伝子変異が積み重なると肺がんになると考えられています。それ以外にも、受動喫煙、大気汚染、女性ホルモンなどが肺がんの発症リスク因子として挙げられます。

肺がんは早期発見が非常に重要な観点となります。肺がんでは、慢性的な咳嗽、痰(特に血痰)、胸痛、呼吸困難などの症状が認められることが知られていますので、このような症状を自覚した場合には早期的に呼吸器内科、あるいは呼吸器外科に受診して、精密検査を受けましょう。

広告

AUTHOR

甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

肺癌
肺癌