ただれやザラザラ…舌にできたできものの正体。これは口内炎?舌がん?それとも…医師が教える見分け方

 ただれやザラザラ…舌にできたできものの正体。これは口内炎?舌がん?それとも…医師が教える見分け方
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-12-21

舌に違和感があるなと思ったら、できものが!?これは口内炎なのかそれとも舌がんなのか、見分ける方法はあるのでしょうか?医師が解説します。

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口内炎とはどのような病気か

一般的に口内炎とは、口腔内や口唇、舌の粘膜などに炎症が生じて、水疱や潰瘍、白苔などの粘膜病変を生じるものを指します。

口内炎の発症には、虫歯やサイズの合っていない義歯による粘膜への刺激、細菌・ウイルス・真菌などの感染、自己免疫疾患、全身性皮膚疾患によるものなど、様々な原因があります。

特に、原因として多いのはウイルス感染によるもので、単純ヘルペス感染症、帯状疱疹、ヘルパンギーナ、手足口病、麻疹、風疹などの一症状として口内炎が現れます。

また、口腔内の常在菌が異常増殖することや、梅毒・淋菌などの細菌が口腔内に入り込むことで口内炎を生じることもあります。

細菌感染による口内炎は口腔内が不衛生な環境の場合には、非常に治りにくく症状が遷延化して悪化することがあるため注意が必要です。

口内炎による痛みの有無や粘膜に生じる病変のタイプは発症原因によって大きく異なり、数日で治る軽度なものから重症化するものまで多岐にわたります。

ステロイド治療や抗がん剤治療を受けている人、白血病などのように免疫力が低下している状態の人では、口腔内に常在する真菌であるカンジダが異常増殖して口内炎を引き起こすこともあります。

抗がん剤をはじめとした薬剤や放射線治療などによって、口腔内や舌の粘膜にダメージが加わると口内炎を生じることが時にあります。

また、自己免疫疾患であるベーチェット病、あるいはクローン病や全身性エリテマトーデスなどではアフタ性口内炎と呼ばれる痛みを伴う白いびらん状の口内炎や潰瘍性口内炎を形成することがあります。

そして、全身性皮膚疾患である尋常性天疱瘡や類天疱瘡などのように、身体の至る所に水疱などの皮疹を生じる皮膚疾患では、口腔内にも皮疹を生じることがあります。

喫煙者に起こる口内炎の場合には、口の中の粘膜や舌に白い斑点ができるのが特徴です。

口内炎は粘膜への慢性的な刺激によって発症するケースも想定されていて、例えば、虫歯で先端が鋭利になったものや、サイズの合っていない義歯の長期間にわたる装着によって粘膜に慢性的な刺激が繰り返されると、その部位に口内炎を生じます。

口内炎
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舌がんとはどのような病気?

舌がんとは、口の中にできる癌の中で最も多く発生し、全口腔がんの約50%以上を占めています。

舌がんの発生率は、年間約2000人であり、統計学的に男女比は2:1で、女性に比べて、男性に多く発生します。

年齢層は、50歳代~70歳代に多く、初期の舌がんは、大きな症状の変化はありませんが、口腔内の小さな異変を、いち早く察知して早期治療を行うことが重要です。

舌がんの発生部位は、舌の両側部が約9割で、残りは舌の表面や舌の裏、舌の先端部分に発生します。

初期の舌がんでは、あまり自覚症状はなく、舌の表面がザラザラしたり、白い斑点のようなものができる場合がありますが、病状が進行すると、徐々に舌の特定の部分が痛み出したり、食べ物がしみたりする変化が認められます。

病状が悪化すれば、病変部は治りにくく、粘膜のただれや潰瘍が舌にできて、出血や口の汚臭を伴うこともあり、さらに腫瘍が進行すると、ザクロのような潰瘍となって、周辺にしこりができる、耳が痛くなる、食べ物を飲み込むのに時間がかかることにつながります。

舌がんは、比較的治りやすく、早期であれば80%~90%完治するといわれています。

口内炎と舌がんとの見分け方とは?

口内炎には、さまざまな種類があり、舌や口の中の粘膜だけでなく、唇にできることもあり、中には口内炎と気付きにくいものもあります。

なかには、なかなか治らない口内炎で病院を受診し、ほかの病気が発見されるケースもあるために、長引く口内炎には舌がんなど重篤な病気が隠れている可能性を認識する必要があります。

口内炎は、通常口の粘膜のいたる所にできて、直径2~10㎜の円形または楕円形で表面は白く、周辺は赤くなる特徴があります。口内炎では、複数部位に発生することも多く、通常であれば約1週間~2週間程度で、自然に治癒して、患部も特段残らずに綺麗になおります。

口内炎は赤く縁どられた円形の白い潰瘍を呈しますが、それに対して舌がんの場合は、患部の縁周囲がギザギザしていて、境界ラインがはっきりせず、いびつな形をしているのが特徴的。口内炎は潰瘍の周辺が赤くなるのに対し、舌がんは、潰瘍が硬くて硬結として触れます。

口内炎は、一般的に痛みを強く感じることが多いのに対して、舌がんは初期には自覚症状がほとんどなく、痛みも軽度であり、万が一にも痛みが出現した際には、舌の全体的ではなく、局所的に疼痛を自覚するのも特徴のひとつです。

口内炎は、発症してからおよそ数週間程度で完治しますが、それ以上の期間が経過しても、症状が治らない場合には舌がんの可能性も否定できません。

特に、舌がんは早期で発見すれば、比較的治りやすく、舌も温存することができますし、日々の生活のなかで自分の目で舌を目視して確認できる身体の部位でもあるため、セルフチェックを継続して小さな異変に気づくことが大切です。

まとめ

これまで、舌にできたブツブツの正体は何なのか、口内炎や舌がんの見分け方などを中心に解説してきました。

舌がんの初期段階では、口内炎の症状と似ている為に、舌がんに罹患した人の多くは、「初めは口内炎だと思っていた」と口をそろえます。

口内炎と思っていたら、実は舌がんの初期症状だったとの場合が少なくありませんので、常日頃から舌がんと口内炎の見分け方を理解しておくことは重要なポイントとなります。

舌にブツブツやザラザラ、ただれができて、なかなか治らない、症状が悪化するような場合には、口腔外科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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