舌にしこり、口から異臭がする…もしかして舌がんかも?舌がんになりやすい人の特徴は|医師が解説

 舌にしこり、口から異臭がする…もしかして舌がんかも?舌がんになりやすい人の特徴は|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-12-14

舌がんになりやすい人の特徴を医師が解説します。

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舌がんとはどのような病気か

舌がんは、舌に形成される悪性腫瘍であり、舌以外にも、歯茎、上顎部、頬部粘膜などに認められる口腔がんのひとつのタイプと認識されています。2018年時点では本邦で舌がんと診断された方は約5000人であり、口腔がんの中で舌癌が占める割合はおおむね6割程度と言われていて、男女比にすると3:2とやや男性に罹患者数が多いです。舌がんを発症する好発年齢は、60代以降に最も発症率が多いと指摘されていますが、若年者にも稀に認められます。

舌がんは、鏡を利用して実際に患部を自分で確認することができる悪性腫瘍です。舌の先端部や表面中央部分ではあまり認められない一方で、舌の両脇に形成されることが多く、時に舌裏側など見えにくい部位に発生することもあります。

舌がんの自覚症状としては、舌に硬いしこりが触れることがありますが、強い痛みや大量の出血があるとは限りません。がんが進行すれば痛み症状が悪化して病変部から出血が持続する、あるいは口から異臭が認められることが挙げられます。

舌癌
舌がんは舌の両脇に形成されることが多い。 イラスト/Adobe Stock

 舌がんができやすい人とは

舌がんの明確な原因は明らかではありませんが、過去の研究から日常的に喫煙飲酒によって、化学的な慢性刺激が舌部分に与えられている人、適切でない詰め物や偏位している歯牙などによって機械的な慢性刺激を受けている場合には、より発症しやすいです。また、口腔内が不衛生な状態が継続している、あるいは白板症を始めとする舌粘膜の病変が時に加齢に伴って癌化することも考えられますので、慎重に経過観察することが重要です。

 舌がんの治療予防策は?

舌がんに対する一般的な治療方法は、個々のがん患者さんにおける病変の進行度や全身状態などから判断されることになっています。通常、がんの進行度は腫瘍の広がりを示すT因子リンパ節への転移の有無や個数を示すN因子遠隔臓器への転移の有無を表現するM因子の3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで病期(ステージ)ごとに分類されることが知られています。

舌がんに対する具体的な治療法は、標準的なガイドラインに基づいて、それぞれの全身状態や年齢、治療希望なども含めて担当医と相談しながら考慮していきます。一般的には、舌がんの治療においては、手術療法が中心となっています。詳細な手術の種類としては、まずは舌部分切除術が知られており、この術式では早期の舌がんと診断されてがん病変部が比較的小さい場合に舌の可動する場所の一部のみを切除する手術です。舌部分切除術では部分的に舌を切除しますので、切除範囲が小さく済み、摂食嚥下機能、あるいは発音機能にはあまり影響を及ぼさずに再建する必要性は低いと考えられています。時に、手術治療にくわえて放射線治療が組み合わされる場合もありますし、術後に薬物を用いた化学療法、および放射線治療を混ぜ合わせる補助療法を実践することも考えられます。

 まとめ

これまで、舌がんとはどのような病気か、舌がんになりやすい人の特徴やその治療予防策などを中心に解説してきました。

舌がんを含めた口腔がんの患者数は日本においては増加傾向を認めており、毎年3000人以上の方が口腔内の悪性腫瘍によって亡くなっている事実があります。特に、舌は普段の生活で食事中に味を感じる、食物をのどに送り込む、人と会話する際に発音するなど我々が生きていくうえで重要な機能に大きく関連しています。したがって、安心した生活を生涯に渡り長期的に過ごすためには、舌がんを早期的に発見して必要に応じて専門医に受診して個々の状態に応じて適切な治療方法を提案してもらうことが重要です。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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