アレルギーは治ることはあるの?どのタイミングでなるの?【いまさら聞けないアレルギー】医師が解説
花粉、ハウスダスト、食品、薬品etc.アレルギーになるのはなぜ?今更聞けないアレルギーについて、医師がわかりやすく解説します。
アレルギーとはどのような病気か
アレルギーとは、食べ物や薬剤、花粉、ハウスダストなど通常であれば身体に特殊な害を与えない物質に対して、過剰な免疫反応が出現する状態を指しています。
アレルギーに伴う症状も多彩であり、軽度なケースは自然に軽快することが大多数ですが、重度な場合には気管支喘息の際に呼吸困難が悪化して窒息を引き起こす、蜂に沢山刺されて血圧が急低下して意識を失うなどアナフィラキシー症状が出現することもあります。
重度のアレルギー反応が出現した際に、適切な対処を実施せずに治療が遅れると命にかかわることもあります。
現在、日本では2人に1人が何らかの物質(アレルゲンと呼ぶ)に対してアレルギーを持つと言われています。
年々、アレルギー患者数が増加傾向にあることが注目されており、その背景には近年における生活様式や環境の変化などが挙げられています。
アレルギーが疑われる症状を認める際には、できるだけ速やかに専門治療や生活環境の是正改善などを開始することが重要な観点となります。
「免疫」とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体に対して、自分たちの身体を自然に守る防衛反応のことであり、通常であれば身体に害を与える異物のみを攻撃する仕組みになっています。
ところが、遺伝的に生まれつき免疫反応が過剰になりやすい体質である、あるいは家の埃や花粉など異物になる物質を過剰に取り入れてしまうような周辺環境に住んでいることなどが原因となって、全身に多種多様なアレルギー症状が引き起こされることがあります。
アレルギーは治ることがあるのか
アレルギーの症状はそれぞれの疾患によって異なり、軽症である場合には自然と症状が軽快していくことがほとんどですが、重症なケースでは気管粘膜が肥厚して呼吸困難に陥る場合も想定されています。
さらに、血管が過度に拡張して血圧が急激に低下して、めまいや意識消失などの症状が出現することもあり、適切に対処しないと生命に直結することも少なくありません。
アレルギーに伴う症状は年齢を重ねるごとに変化していくことも特徴のひとつとして捉えられており、幼少期にはアトピー性皮膚炎に罹患して、加齢に伴って成長していくにつれて気管支喘息やアレルギー性鼻炎などを発症するようになっていくことが多いです。
このようなアレルギー症状の連鎖を「アレルギーマーチ」と呼称しており、アレルギー症状を事前に発症させないように予防することが大きな課題となっています。
アレルギー疾患というものはひとつの病名ではなく、過度な免疫反応の異常によって生じる病気の総称を意味しており、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などさまざまな種類があります。
アレルギーが原因となって発症する疾患の一つとして、「アナフィラキシー」と呼ばれる病気があります。
アナフィラキシーは、一般的にはハチ毒や、抗菌薬、解熱鎮痛薬などの薬剤、そして鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、そばなどの食物など、アレルギーを起こす物質に体が曝露されることで発症します。
アナフィラキシーの原因となった物質を特定するためには、アレルギー専門外来で血液検査や皮膚プリックテストといった検査が行われます。
多くの場合には抗原に曝露されてから30分以内に目のかゆみに伴う眼球充血、鼻閉感などで発症して、そののち顔面が蒼白になり、口唇および舌の粘膜が腫脹して浮腫反応が起こります。
また、胸などにおける発赤症状や全身に葦麻疹が形成されて気分不良や悪心・嘔吐などの消化器症状が認められるケースも存在しますし、それ以外にもアナフィラキシーの症状は多種多様であると言われています。
アレルギーの病気の治療は、大きく分けると「症状に対する治療」と「炎症を抑える治療」、そして「免疫療法」があります。
アレルギーの症状があるときに症状を抑えるための治療では、アレルギー性鼻炎の鼻水やくしゃみ、アトピー性皮膚炎の皮膚のかゆみなどに対しては、抗ヒスタミン薬などが使用されますし、喘息発作のときには気管支拡張薬が使用されます。
アレルギーの病気の一部では、アレルギー性の炎症が起こり、喘息では気管支に、アトピー性皮膚炎では皮膚に、アレルギー性鼻炎では鼻に炎症が起こります。
これらの炎症に対しては、炎症を抑えるような治療を行います。
炎症を抑える薬で一番使用されているのが「ステロイド」と呼ばれる「副腎皮質ホルモン」の薬であり、ステロイド薬は内服や注射の場合は、長期間継続すると全身にさまざまな副作用が出現します。
そのため、アレルギーの病気では、吸入薬や外用薬、点鼻薬など、その炎症のある場所にだけ効果が得られるように工夫されています。
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の治療法のひとつとして、100年以上も前から実施されているアレルゲン免疫療法があり、特に最近では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場して注目を浴びています。
「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニのアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが1日1回、少量の治療薬から服用を開始して、その後決められた一定量を数年間にわたり継続することで治療を実践することができます。
基本的には、初めて薬を服用する際には、専門医療機関で医師の観察のもとで実施し、2日目以降は自宅で服用治療を行う流れになっています。
この治療が適切に行われると、アレルギー症状を治癒する効果が期待できますし、仮にアレルギー症状が完全に制御できない場合でも、症状を出来る限り緩和して、アレルギーに対する治療薬を減量することに繋がります。
まとめ
これまで、アレルギーとはどのような病気か、アレルギーは治ることがあるのかなどを中心に解説してきました。
アレルギーは、特定の物質(アレルゲン)に対して白血球など血液中の細胞が担っている免疫反応が過剰に働くことによって引き起こされます。
アレルギー疾患に対する重要な治療は、まず原因となるアレルゲンを身のまわりから除去することであり、アレルギーの原因を除去する時期と、成長とともに少しずつアレルゲンの負荷を増やしていくフェーズを見極めて、症状を徐々に緩和することが重要です。
残念ながら現時点では全面的にアレルギーを即効的に治す治療法はなく、自然に治ることを期待するのは厳しいかもしれませんが、アレルギーの大部分は、適切な予防策や治療を講じることで大きな支障なく日常生活を送ることができます。
心配であれば、アレルギー外来など専門医療機関に相談してみましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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