皮膚や白目部分が黄色くなる…「黄疸(おうだん)」とは何か?どんな病気のサイン?医師が解説
「黄疸」という言葉を聞いたことがありますか?全身の皮膚が黄色くなる黄疸、どんな病気のサインなのか、医師が解説します。
黄疸は、ビリルビンという色素が何らかの原因で血中に増加する結果として、全身の皮膚や眼球粘膜に過剰に沈着した状態を指しています。
ビリルビンという色素は、赤血球のヘモグロビンという色素から肝臓で合成される物質ですが、肝硬変や肝炎の疾患などによって血液中のビリルビン濃度が増加して、皮膚や目の白い眼球結膜部が黄色く見える黄疸状態を引き起こします。
今回は、知っているようで意外と知らない黄疸に関する医学的内容や黄疸と柑皮症との違い、そして黄疸はどんな病気の兆候として現れるかなどを中心に解説していきます。
知っているようで意外と知らない黄疸について
黄疸とは目に見える皮膚の黄染の意味ですが、正確にはビリルビンという物質による皮膚の黄染と考えられます。
黄疸では、血中にビリルビン(黄色の色素)が過剰になって高ビリルビン血症を発症することで、一般的に皮膚や白眼が黄色くなります。
ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する過程の中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されて、血流によって肝臓に運ばれ、そこで胆汁(肝臓で作られる消化液)と結合します。
そして、ビリルビンは胆管を通って消化管に移動して、大部分のビリルビンは便中に排泄されますが、少量は尿中に排泄されますが、万が一ビリルビンが肝臓や胆管を正常に通過できない場合にはビリルビンは血液中に蓄積して、皮膚に沈着して黄疸を引き起こします。
また、多くの黄疸の患者では、便とともにビリルビンが排除されず、尿中に排泄されるビリルビンの量が増加することによって尿の色が濃くなり、便の色が薄くなるとも言われています。
成人では、黄疸自体はあまり自覚的な症状を引き起こしませんが、患者さん自身は黄疸に気付かずにしばしば家族や職場の同僚から指摘されることもあります。
ビリルビンの血中濃度が高くなると、胆汁が分解されたときにできる物質が体内に蓄積することで、全身にかゆみが生じることがあります。
黄疸と柑皮症との違い
柑橘類を過剰に摂取した際の皮膚の黄染を柑皮症(呼び方:かんぴしょう)と呼んでいて、柑橘類などに多く含まれるビタミンAの前駆物質であるカロテンの過剰摂取により、皮膚にカロテンの色素が沈着して手の平や足の裏が黄色くなる状態です。
カロテンは脂溶性のため、基礎疾患として脂質異常症がある場合には血中カロテン濃度が上昇しやすくなり、柑皮症に罹患しやすいと言えます。
柑皮症の症状が重度の場合には、全身の皮膚の色調が黄色くなりますが、黄疸とは異なり、白目の眼球結膜部分は黄色くなりません。
柑皮症は、原因となっている柑橘類やカボチャ、ニンジン、ホウレンソウ、トウモロコシ、パセリなどの食品を過剰に摂取することを中止すれば基本的には症状が改善すると考えられています。
黄疸はどんな病気の兆候として現れるか?
肝細胞性に黄疸が出現する病気の一つとして肝炎が挙げられます。
肝炎自体は、肝臓の炎症をきたして、その発症原因は多くはウイルスですが、自己免疫疾患や特定の薬剤使用によって引き起こされることも見受けられます。
肝炎は肝臓に損傷を与えて、ビリルビンを胆管に運ぶ能力を低下させることが知られており、経過が短い急性肝炎や急性ウイルス性肝炎においては黄疸を引き起こすと考えられています。
また、長期間にわたって大量に飲酒することに伴って罹患するアルコール性肝疾患も黄疸を発症する原因になりますし、それ以外にも毒素、および一部のハーブ製品なども肝臓に悪影響を与えて黄疸を発症する可能性が懸念されています。
一般的に、肝臓で合成された胆汁は胆管を通って十二指腸に排泄されます。
ところが、胆管の狭窄や閉塞が直接的な原因となって、胆汁の流れが妨害されて、血液中にビリルビンが逆流したために生じた黄疸を閉塞性黄疸と呼称しています。
主に、胆管の狭窄、あるいは閉塞の根本的な原因として最も頻度が高いのは胆管結石と考えられています。
胆管内に生じた結石や、胆嚢から胆管内に落下してきた結石が胆汁の流れを妨害する、あるいは胆管周囲に認められる悪性腫瘍が胆道を閉塞させて黄疸を発症させる原因となります。
他にも、胆管の粘膜から生じる胆管がん、あるいは膵臓の悪性腫瘍が巨大化して膵内を通る胆管を圧迫することで胆汁の流れが妨害されて黄疸の症状が認められることもあります。
また、胆管が閉塞すると、ビリルビンが血液中に蓄積することが知られており、ほとんどの閉塞の原因は胆石によって引き起こされます。
それ以外にも、がん(膵臓や胆管のがんなど)や自己免疫に関連する肝疾患(原発性胆汁性胆管炎や原発性硬化性胆管炎など)によって黄疸が引き起こされる場合も見受けられます。
まとめ
今回は、知っているようで意外と知らない黄疸に関する医学的内容や黄疸と柑皮症との違い、そして黄疸はどんな病気の兆候として現れるかなどを中心に紹介しました。
柑皮症とは、ミカンなどの柑橘類に含まれるカロテン色素が手掌部や足底部などに沈着した状態であり、黄疸では眼球結膜部が黄色くなりますが、柑皮症では眼球結膜が黄色くなることはないという観点から両者を区別することができます。
黄疸とは、血液中のビリルビンが過剰に増加して、皮膚や眼球が黄色くなることであり、黄疸を引き起こす主な原因は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、胆石症、腫瘍による胆管閉塞などが挙げられます。
黄疸では、皮膚や白眼の部分が黄色くなると共に、ビリルビンの血中濃度が高ければ高いほど、全身のかゆみ症状や慢性的に嘔気や嘔吐などの症状が出現する場合もありますので、気付いた時点で早急に消化器内科など専門医療機関を受診して適切に対応しましょう。AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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