中高年のしつこい便秘や細い軟便…もしかして?便からわかる、がんや病気のサイン|医師が解説

 中高年のしつこい便秘や細い軟便…もしかして?便からわかる、がんや病気のサイン|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-08-17

細い軟便が続いたり、便秘や下痢を繰り返す…もしかしたら、病気のサインかもしれません。

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便の状態は、食べた物の内容だけでなく、その時々の腸の状態によって大きく変化するため、便の性状は健康状態を知るための指標になるといわれています。「便が細くなる=大腸がんである」とは限りませんが、大腸がんの典型的な症状であることに変わりなく、便が細い状態が続く時には、大腸がんなどの病変が隠れている可能性が否定できません。特に、大腸がんの症状は、がんが存在する部位によって若干異なることが知られています。細い軟便が継続する便通異常などの症状を見逃してしまい、他の部位にがん病変が転移してしまうと、がんの治療が長引く、あるいは命に係わるなど大事に至ってしまったりすることも十分に考えられます。

今回は、細い軟便が続くのは「がん」のサインか、便からわかるがんや特に大腸がんの病気のサインなどを中心に解説していきます。

便からわかるがんや病気のサインについて

便は、その人の健康状態や病気のサインを示す指標になるといわれています。

一般的に、健康な人の便は水分量が70〜80%で、適度な柔らかさを保った「バナナ型」で、色は黄味に近いほど腸内細菌の善玉菌が多いと考えられています。

一方で、生活習慣の乱れや多大なるストレスを抱えている、大腸がんなどの病気が存在する場合は、その影響が便にも表れて、便の色が黒く、きつい悪臭を伴うこともありますし、便の形状が細くてゆるい軟便や下痢になることもあります。

通常であれば、健康な人の便の太さは通常3~4cmほどの直径がありますが、腸内環境の悪化など様々な原因により、便の直径が1cmほどの細い便が出る、あるいは残便感を伴うことがあります。

便が細くなる原因となる代表疾患としては、大腸がんが挙げられます。

大腸癌
便が細くなる原因となる代表疾患としては、大腸がん。photo by Adobe Stock

大腸がんの存在に伴って、狭い大腸を何とか通った便は細い形となりますし、もし大腸がんで便が細くなっている場合には、大腸がんの病変自体がそれなりに進行している可能性がありますので、早急に精密検査を受ける必要があります。

早期段階における大腸がんでは有意な自覚症状はほとんどありませんが、がん組織が進行して成長すると、血便、便秘や下痢などの便通異常、あるいは便そのものが細くなる狭小化といった所見が認められるようになります。

例えば、直腸部位からS状結腸部の周辺でがん組織が成長すると、排泄される便が普段より細くなる傾向があります。

特に、直腸がんの場合には、便に比較的鮮血に近い血液が付着して発見されることが多いですし、がん腫瘍によって直腸内が圧迫されて狭くなると、便が狭小化して細くなるのみならず排便後も残便感や違和感が残存することになります。

がんが進行して大きくなると、がんからの出血が増えるために貧血が見られたり、直腸の通りや機能が障害されて便が細くなったり、残便感、腹痛を感じたりすることがあります。

また、下行結腸やS状結腸でがん病変部によって腸管内腔が狭くなると、便が通過しにくくなり便秘と下痢を繰り返す便通異常、あるいは間歇的腹痛や腸閉塞などの症状を呈することもあります。

大腸がんについて

中高年齢層を過ぎてから「最近便秘傾向である」あるいは「普段から細い軟便がある」「下痢と便秘を繰り返すことが多い」などの症状を認める場合には早めの大腸検査をお勧めします。

その背景には、大腸がんが、どのような症状がきっかけで見つかったかという過去の研究において、大腸がんと診断された1600人程度の初期症状を解析した結果、細い軟便が続くなど便通異常の変化を認めたケースが実に7割以上存在したという事実が存在します。

これらのことから、いかに普段の排便変化で大腸がんが発見される割合が高いかということを解釈することができます。

進行した大腸がんのケースでは、大腸の腸管内腔部ががん組織の存在によって狭くなるために排便がスムーズに行えなくなるために便秘症状になります。

大腸がんが進行すると、大腸が狭くなるにつれて便内容物が停滞して、数回に分けて便意を催すことに繋がり、細い軟便が頻回に続くことがあります。

大腸の腸管粘膜の内部に悪性腫瘍が形成された場合、がん組織は新生血管を張り巡らせて栄養分を身体から奪い取ろうと働いて、細い軟便や血便症状が出現します。

大腸がんの早期段階では自覚症状はほとんどありませんが、がん病巣が進行すると細い軟便が続く、血便(便に血が混じる)、あるいは下血(腸管からの出血によって赤または赤黒い便が出る)などの症状が認められるようになります。

「長期に渡って細い軟便の状態が継続している」「便に血が付着した」という症状があれば、消化器内科や大腸肛門科を受診して大腸全体をチェックすることが勧められます。

まとめ

今回は、細い軟便が続くのは「がん」のサインか、便からわかるがんや特に大腸がんの病気のサインなどを中心に解説しました。

日常生活で細い軟便など便通異常がある際には、大腸がんなどの病気が隠れている可能性がありますので、普段から便を観察する習慣をつけておきましょう。

大腸がんを発見しても、早期の段階であれば、病変を切除することでかなりの方が治癒できる期待がありますので、心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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