若い人に増加傾向の【炎症性腸疾患】とは?原因不明の慢性の下痢、残便感がある人は注意!医師が解説

 若い人に増加傾向の【炎症性腸疾患】とは?原因不明の慢性の下痢、残便感がある人は注意!医師が解説
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若い人で多く発症する原因不明の炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)といえば、潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的です。ともに指定難病ですが、患者数は増え続けています。病気を見分けるには、どのような症状に注目したらよいのでしょうか。総合東京病院(東京都中野区)消化器疾患センターの松橋信行センター長に症状や治療法などについて、お話を伺いました。

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増加の原因は欧米型食生活に関連?

「日本での潰瘍性大腸炎とクローン病は、集計データのある1970年代以降、今世紀に入っても一貫して増え続けています。潰瘍性大腸炎の患者数は、最近は30万人近くなるのではとも言われます。以前は欧米で圧倒的に多かったのですが、近年は日本も最も多い国となってきました。

この増加の原因の詳細はまだ確定されていませんが、欧米型になった食生活との関連が疑われます。動物性脂肪、飽和脂肪酸や糖類が多い食物を食べることが増えてそれが腸内細菌の変化を起こしていることが関連していると推測されます。ほかに、口の中の虫歯菌の関与もあるようです。若い人に多い理由の詳細は分かっていません。男女別では男性の方が多いですが大きな差ではありません。新型コロナ感染症では下痢を伴うこともありますが、新型コロナ感染で潰瘍性大腸炎やクローン病が増えるということはなさそうです。」(松橋先生)

潰瘍性大腸炎。具体的な症状は?

「典型的な潰瘍性大腸炎では、あるときからだんだん下痢になって排便後も残便感を感じるようになったり、夜間にもトイレに行くようになり、便に血が混じるようになって腹痛や熱が出たりしてきます。血と粘液が混じった濁ったケチャップのような感じの便を粘血便と言います。発症時期は比較的はっきりしていて本人が大体このころと分かります。ひどくなると勤務や通学など困難になりますが、軽症の場合はあまり症状が出ません。」(松橋先生)

初期は自覚症状が少ないクローン病、どんなことに気を付けたら?

「クローン病は、ちょっと様子が違っていて、いつ発病したのか、本人でもよく分からないことも少なくありません。受診の直接の理由は腹痛、下痢、血便、肛門痛、やせなどのほか、健康診断での貧血、血中のアルブミンやコレステロールなどの栄養の指標の低値、炎症反応が出ているとの指摘など、いろいろです。この病気は肛門の病変が多いので、痔ということで肛門科に通っていたがなかなか治らなかったというケースも少なくありません。

診断がついた時点から振り返ってみると、実は何年か前から軽い症状が出没していたということはまれでなく、また、健診結果がかなりの異常値でも、その割にはケロッとしている人もいます。腸閉塞による急な強い腹痛や腸に穴が開いて緊急手術が必要となるなどの激しい症状で発症する人もいますが、はじめは大した自覚症状がない人もいるのです。」(松橋先生)

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2つの疾患の違いは?

「両疾患とも原因の詳細はまだ不明です。潰瘍性大腸炎は大腸だけの病気なので、小腸に病変があれば潰瘍性大腸炎ではありません。クローン病は、小腸下部と大腸に病変が多いのですが、口から肛門までのあらゆる部位が侵される可能性があり、特に肛門病変は半数ないしそれ以上に見られます。また、潰瘍性大腸炎の病変は基本的に腸の表面の粘膜だけであるのに対しクローン病は粘膜より深い層まで侵されるため、クローン病では腸が変形して狭くなり便が詰まって腸閉塞を起こしたり、腸の外側の臓器へと病変が広がっておなかに膿がたまってしまったりすることがあります。その結果、クローン病では手術が必要となってしまうことが少なくありません。

両疾患とも内視鏡やCT等で病変を調べることで診断されます。また、両疾患とも、長期の経過を経て病変部にたちの悪いがんができてしまうことがあり、それに対する監視も重要な課題です。潰瘍性大腸炎とクローン病は異なる病気ですが、まれに両者の中間みたいな例があります。両疾患とも単一の遺伝子の異常で起きている病気ではなくいろいろなメカニズムが関与しており、両方の疾患に共通に関与する異常があるためと考えられます。」(松橋先生)

治療:新薬を含めた新たな治療体系

「ひと昔前までは治療薬の選択の幅が非常に狭かったのですが、最近は2つの疾患とも新しい薬がどんどん出てきています。これらの疾患は体の免疫機構が自己の腸組織を誤って攻撃してしまうことで起こるもので、新薬の多くは免疫機構の暴走を止めるためのものです。創薬技術の進歩で目的の免疫関連分子の作用を強力にブロックすることが可能になり、治療効果が示されています。2つの疾患の成り立ちには多くの共通点があり、これら新薬を含めた治療薬には両方の疾患に効果を発揮するものも多いです。ただ、これ1つですべてについて完璧に有効、いうものはまだありません。

また、これで治療したらそのあと再発しなくなる、という治療薬もまだ開発されていません。新薬が利用できるようになり選択の幅が広がったことは朗報ですが、従来からの薬剤の重要性は変わっておらず、実際に最初に使う薬剤として最も適切なのは従来薬であることが多いです。治療は薬物治療が中心ですが、クローン病では、食事の代わりにタンパク質を分解したアミノ酸を含む栄養剤を飲むようにすれば一定程度炎症を抑える効果があることも分かっています。また、特にクローン病では禁煙が非常に重要です。

潰瘍性大腸炎は、特に比較的に軽いケース、ないし病変の範囲が狭いものでは、何年かすると治ってしまって治療が不要になることがあります。一方、クローン病も症状に波がありますが、治ってしまうということはまれで、大半は長期間の治療を続けざるを得ない状況です。」(松橋先生)

思い当たる症状がある人は、近くの医療機関に早めの受診を

「両疾患とも厚生労働省の特定疾患に指定されており、医療費補助の制度があります。長引く下痢、残便感、夜間便、血の混じった便、体重減少などがありましたら、ストレスと片付けずに一度近くの医療機関を受診しましょう。専門病院への受診に関しては、ご近所のかかりつけ医の先生からの紹介状を持参していただくとスムーズです。」(松橋先生)

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お話を伺ったのは…総合東京病院消化器疾患センター長 松橋 信行医師

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ヨガジャーナルオンライン編集部

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ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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