「最近、お酒を飲む量や頻度が増えた…」実はうつのサイン?うつと気が付きにくい症状|精神科医が解説

 「最近、お酒を飲む量や頻度が増えた…」実はうつのサイン?うつと気が付きにくい症状|精神科医が解説
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豊田早苗
豊田早苗
2023-08-04

「最近、お酒を飲む量が増えた」もしかしたらそれは、うつのサインかもしれません。精神科医が解説します。

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飲酒量が増えるのは、ストレスサイン?

ビールや日本酒、焼酎やワインなどアルコール飲料を摂取すると、一般的に、それまでの重い気持ちや疲労感は吹き飛び、気分が良くなったり、心地よい気持ちになることができます。

これは、アルコールを摂取すると、肝臓で代謝できずに残ったアルコールが血液によって脳に運ばれて、脳神経細胞を刺激、ドーパミンやセロトニンが分泌されるためです。

ドーパミンは、ご褒美ホルモンで、通常は、美味しいものを食べたり、嬉しいことがあったりした時に分泌され、気分を陽気にし、楽しい気持ちにしてくれる物質です。

このドーパミンがお酒を飲んだ時は、お酒が好き嫌いに関係なく分泌されます。

そして、セロトニンは、幸せホルモン。

気分がハイになり過ぎないように調整しながら、心地よさを感じさせ、ストレスを和らげる働きがあります。

アルコールは、この2つのホルモンの分泌を促し、現実の辛さやストレスから解放してくるため、その効果を一度体験してしまうと、趣味活動など他にストレス発散の手段をもっていない、気分転換出来ない時、脳裏に浮かぶのは、お酒を飲んだ時の心地よさ・快楽さとなります。すると、ストレスを感じると、お酒を飲んでストレスを発散する、気分転換を図るという行動パターンが構築され、お酒を飲むことが徐々に習慣化していきます。

*お酒を飲めない人、弱い人、大量に飲酒しすぎた人では、アルコールが肝臓で代謝される割合が低いため、大量のアルコールが脳に運ばれてしまい、ドーパミンやセロトニンが分泌されても、アルコール毒性の方が優ってしまうため、逆に気分が悪くなります。

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耐性ができやすことがアルコール依存を引き起こす

お酒を飲んで、ストレスが発散できるなら、気分転換できるなら、それはそれで良いのですが、問題は、アルコールによるドーパミンやセロトニンの分泌促進作用は、耐性ができやすいという点です。

つまり、はじめはビール1杯飲めば心地よい気分になることができていたのに、何回か繰り返しお酒を飲むうちにビール1杯では心地よい気分になることができなくなり、「もう少しだけ」と、知らず知らずのうちに、飲む量が増えていってしまいます。

そして飲むのを止めれば、「不安に駆られる」「落ち着かない」「眠れない」などの状態になるため、お酒を止めることができなくなってしまいます。

お酒の量が増えている場合は要注意!

うつ病は、ストレスが原因で発症する心の病気です。

うつ病を発症すると、「やる気が出ない」「気分が落ち込む」「突然、涙が出る」「夜眠れない」等の症状がでます。

こうしたうつ病の症状を病気とは気がつがず、お酒を飲んで症状を紛らわしているケースがあります。

確かに、お酒を飲めばそれまで憂鬱だった気分が晴れるかもしれません。嫌なことを忘れることができるかもしれません。夜寝付きやすくなるかもしれません。

ですが、それは一時的なもの。

根本的なことが解決されない限り、症状がなくなることはありません。

なくならないどころか、お酒を止めれば、かえって症状が強くなってしまったりもします。

自分の弱さを認めることは勇気がいることです。

ですが、弱い部分がない人なんていません。

お酒を飲む量が増えてきている場合、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

嫌な気分を紛らわすために飲んでいませんか?

嫌なことを忘れるために飲んでいませんか?

もし、そうであれば、うつ病やうつ状態が根底にある場合もありますので、要注意です。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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