「音楽が聴けない」「テレビを見れない」実はうつのサイン?うつと気が付きにくい症状|精神科医が解説
うつ病で、「音楽を聴きたくても聴けない」「テレビを見ることができない」という症状が出ることがあります。一見、うつ病とは無縁と思われる症状が、なぜ出るのでしょうか? その理由について説明していきます。
集中力の低下
うつ病は、ストレスが原因で起こる心の病気です。ですが、検査に異常がないから全く体に何の異常も起こっていないというわけではなく、脳の中では、今までとは違う異変が起こっています。
その1つが脳内伝達物質の1つであるセロトニンの減少です。
セロトニンには、ドーパミンやノルアドレナリンの分泌を調整して、気分を安定させる働きや睡眠や体温を調節し生体リズムを作る働きがあります。
また、セロトニンは、思考力や集中力にも関与しており、セロトニンが減少することで、集中力が低下し、集中力を持続させることが困難になったりもします。
このセロトニン減少による集中力の低下が、「音楽を聴きたくても聴けない」「テレビを見ることができない」といった症状を引き起こします。
音楽を聴いていても、集中力が続かないので、意識が他のことに逸れやすく、音は耳に入っているけれどもメロディーにならないため、音楽を聴いて楽しむ、ゆったりすることができなくなります。
また、テレビは、一度に沢山の情報が目や耳から入ってきますし、ドラマや映画ならストーリーを把握して先の展開を予測しながら見る必要があります。
セロトニンは、神経伝達物質で、目や耳から入ってきた情報を脳の神経細胞から神経細胞へと伝えていく役割もありますから、減少すれば、情報伝達が上手くいかず、テレビを見ていても内容が頭に入らない、ストーリーを把握できないために、つまらなく感じてしまい見ることができなくなります。
音に敏感になる
うつ病では、ストレスに対抗するため交感神経の働きが活発になります。交感神経の働きが活発になると、脳の中でアドレナリンと呼ばれるホルモンが分泌されます。
アドレナリンは、戦闘ホルモン。
アドレナリンが分泌されることで、体は、警戒体制に入るため、些細な音にも敏感に反応するようになります。
「音楽が聴けない」「テレビが見れない」は、集中力低下による症状である場合もありますが、音への敏感さが生じているために、音楽やテレビが耳ざわりに感じてしまうからという場合もあります。
本来は、アドレナリンが分泌され、体が戦闘モードになっても、セロトニンがアドレナリンの暴走を食い止め、戦闘モードを解いてくれるため、「音が気になって仕方ない!」という状態に陥ることはありません。
ですが、うつ病では、セロトニンの分泌が減少しているため、アドレナリンの暴走を止めることができません。そのため、アドレナリンの分泌により生じた音への過敏な反応を抑えることができず、持続するため「音が気になって仕方ない!」「うるさくて仕方ない!」という状態になってしまいます。
些細な音にも反応してイライラしてしまう、音が耳ざわりで仕方ない状態が解消できないことで、余計にストレスを生み出す悪循環も起こり、ますます症状が悪化していく危険性もあります。
セロトニンを増やそう!
セロトニンを増やす方法として、「朝日を浴びる」「食べ物をよく噛んで食べる」などがありますが、ここでは色を感じることでセロトニンを増やす方法を紹介致します。
私達が目にする景色や物体は、初めから色がついた状態で目に映っているわけではありません。
目に入っているのは、色ではなく光で、色はついていません。
でも、色がついて見えるのは、目から入ってきた光の情報を脳が受け取り、色付けしているからです。
そして、脳が色付けする時に、脳内でホルモンが分泌されます。
この脳が色付けを行う際に分泌されるホルモンですが、赤はドーパミン、ピンクはオキシトシンという具合に、色によって分泌されるホルモンが違います。
さて、うつ病で減少するセロトニンを分泌させる色は、何色だと思いますか?
答えは、青色(水色もOK)です。
青色(水色もOK)を見たとき、もしくは、イメージした時、脳内ではセロトニンが分泌されます。
海や空を眺めていると、気持ちが落ち着きませんか?
それは、脳内でセロトニンが分泌されているからなのです。
このように色を感じることによって、セロトニンの分泌を促すことも可能です。
セロトニンを増やすために、朝日を浴びたり、よく噛んで食べる習慣をつけることも大切ですが、色を感じることでもセロトニンを増やすことができるので、覚えておくと便利かもしれませんよ!
AUTHOR
豊田早苗
鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く