睡眠時間が長すぎると認知症になりやすい?認知症にならない睡眠とは|精神科医が解説

 睡眠時間が長すぎると認知症になりやすい?認知症にならない睡眠とは|精神科医が解説
canva
豊田早苗
豊田早苗
2023-05-13

寝すぎると認知症リスクが高まる?精神科医がそのメカニズムと対策を教えます。

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寝すぎると、認知症発症リスクが高くなる!

寝すぎると、認知症になりやすい!って、知っていましたか?

海外や日本で行われた睡眠と認知症の関係を調べた調査によると、1日の総睡眠時間が10時間以上の人は、睡眠時間が6時間程度の人と比較して、認知症になる危険性が2.2倍だったそうです。

睡眠時間が長いと認知症になりやすい!なんて、ちょっと驚きですよね。

そして、さらに付け加えると、一時的に、いわゆる、普段の睡眠不足を補う寝溜めとして睡眠を10時間以上とるのも、昼寝を1時間以上行うのも、夜中の3時以降に眠るのもたとえ睡眠時間は6時間から7時間であったとしても、認知症になりやすいという結果も出ています。

何故、睡眠をとり過ぎると、認知症になりやすいのでしょうか?

それは、睡眠の質が関係しています。

睡眠の質が悪いと脳のゴミ(アミロイドβ)が溜まる!

睡眠には、脳を休めるノンレム睡眠と身体を休めるレム睡眠があります。

さらに、ノンレム睡眠は、深いノンレム睡眠と浅いノンレム睡眠の2つに分類でき、深いノンレム睡眠が寝入り3時間以内に起こる睡眠を質の高い睡眠といい、起床時の熟睡感の決め手となります。

また、深いノンレム睡眠は、起床時の熟睡感をもたらすだけでなく、認知症を引き起こす原因となるアミロイドβ等の脳のゴミを取り除く時間帯でもあります。

つまり、深いノンレム睡眠が起こらなければ、アミロイドβなどの脳のゴミを取り除くことができず、脳内に溜まっていき、将来、認知症を発症する要因となります。

さて、認知症を予防する上で非常に重要な深いノンレム睡眠ですが、眠りに入れば、いつでも起こるのか?というとそうではありません。

深いノンレム睡眠は、深部体温の変化や睡眠時間、年齢など様々な要因によって、起こったり、おこならかったり、時間が短くなったりします。

もう少し、詳しく言うと、30歳を過ぎると、睡眠時間が長くなると、朝方になって眠ると、深いノンレム睡眠が起こりにくくなります。

睡眠の質をアップして認知症を予防しよう!

認知症になる危険性を減らすためには、深いノンレム睡眠のある質の高い睡眠を取る必要があります。

そこで、質の高い睡眠を取るために知っておくと良い事について3つ紹介いたします。

1:寝る1時間前にお風呂に入る

30歳を過ぎると、生理的な深部体温の変化が緩やかになります。

結果、睡眠時の深部体温の変化量が少なくなり、深いノンレム睡眠が起こりにくくなります。

そこで、寝る1時間前にお風呂に入ります。シャワーではなく、40℃から42℃ぐらいのお湯に入浴します。(温度は、季節によって、あまり熱いお湯にならないように調節してください)

お風呂に入り、一旦、深部体温を上昇させることで、深いノンレム睡眠を起こすために必要な睡眠時の深部体温の急激な変化を作る基盤ができます。

お風呂
寝る1時間前に入浴しましょう。
photo by canva

2:ストレッチ

お風呂に入ったあと、寝るまでの1時間の間に、軽くストレッチをしましょう。

時間は10分程度で構いません。

肩や首を回したり、両手を組んで腕を前や上に伸ばしたりと、筋肉の凝りをほぐすようにストレッチします。

筋肉の凝りがほぐれると、血管が拡張しやすくなり、お風呂に入り温まった血液が手先足先までスムーズに流れるようになります。

体の末端まで、血液がスムーズに流れることで、手足からの体温の放熱が起こりやすくなり、深部体温の低下を促します。

そして、急激な深部体温の低下が起こることで、眠気が生じるとともに、深いノンレム睡眠のある質の高い睡眠を取ることができるようになります。

3:真っ暗な部屋で寝ない!

真っ暗闇は、不安を感じさせる環境であるため、完全に部屋を暗くして眠ると、自覚していなくても脳が不安を感じ、警戒体制に入ってしまいます。

脳が警戒体制に入ると、交感神経の働きが活発になるため、深いノンレム睡眠が起こりにくくなります。

完全に明かりを消した真っ暗闇の部屋ではなく、月明かり程度の明るさ、加えて、白色系ではなく、オレンジ系の色の明かりになるよう照明器具を調節して眠るようにしましょう。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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