親が認知症かもと思ったら|子供から親に「かけてはいけない言葉」と心がけたい意識とは
親が高齢になると気になるのが認知症。しかし、「認知症」という病名は広まっている一方で、その症状や適切な対応はあまり知られていません。 そこで今回は、「親が認知症かも?」と思ったときに気をつけたい言葉と意識についてお話しします。
「親が認知症かも?」と思ったらチェックしてみよう
「認知症って要するに『もの忘れ』だよね?」と思う人もいるかもしれません。たしかに認知症症状のひとつとして「もの忘れ(記憶障害)」がありますが、それ以外にも、
・注意障害:注意力を維持できない
・言語障害:言葉が出ない/理解できない
・見当識障害:時間や場所を把握できない
・実行機能障害:手順を考えて行動できない
などの症状が現れます。
日常生活で次のような場面が増えていないかチェックしてみましょう。
□何度も同じ話をする
□約束を忘れている
□物をなくすことが増えた
□同じものを何回も買ってくる
□部屋が以前より散らかっている
□料理の味つけに失敗している
□ATMや家電製品をうまく扱えない
あてはまるものが多い場合は、認知症を疑ってみてもいいかもしれません。
認知症かも?そんな親にかけてはいけないNG言葉
「親が認知症かも」と思ったときは、まず言葉かけに注意を向けてみましょう。ここではNG言葉をご紹介します。
「おかしいから病院に行くよ」
「認知症かも」と思ったら、早めに病院を受診するのがおすすめ。服薬で症状の進行を緩和できますし、そもそも認知症ではない病気が見つかる可能性もあるからです。
しかし、病院に誘うときの言葉かけには注意が必要。
「(親が)認知症かもしれないから」
「(親が)最近おかしいから」
と、親を主語にして「問題」や「異常」を指摘すると、「私はまだボケていない!」「おかしくない!」と拒絶されてしまうかもしれません。
ここで意識したいのが、「私」を主語にした「Iメッセージ」です。
Iメッセージを使うと「(私が)心配だから一度病院に行こう」など自分の気持ちを伝えやすくなり、親も受け入れやすくなります。
「また失敗してる!忘れてる!」
物をなくしたり、前話したことを忘れていたり……。親のそんな様子を見ると、つい「またなくしたの?」「前も言ったでしょ?忘れたの?」と指摘したくなります。
しかし、自分の失敗を指摘されるのは恥ずかしいもの。何度も「また?」と言われると、親は子どもの介入を拒絶したり、失敗してもごまかしたりと、症状を隠すようになります。
その結果、子どもは親の症状が悪化するまで気づけなくなってしまうのです。
「これ認知症にいいらしいよ」
世の中には「認知症にいい」とされる食品やサプリ、トレーニングがたくさんあります。
しかし、「認知症かも?」と不安や葛藤を抱えている段階で「これ認知症にいいらしいよ」とあれこれ提案されると、「私は認知症じゃない!」と抵抗したくなります。
「脳トレをやってみなよ!」と渡されても、「もしできなかったら……」と怖くて手に取れないかもしれません。「どうしてやらないの!認知症になってもいいの?」と責められると、ますますつらくなってしまうでしょう。
「認知症かも?」と思ったときに意識したいこと
親の気持ちに寄り添う
先ほどのチェックリストで挙げた項目は、認知症の「中核症状」と呼ばれる症状の一例です。一方、認知症には「行動・心理症状(BPSD)」と呼ばれる症状もあります。
BPSDは、認知症の中核症状が、心や行動に引き起こす二次的な症状。
「自分は何もできない」と無気力になったり、「前はできていたのに!」とイライラしたり……と気持ちが不安定になることもあれば、暴言や暴力、物をなくしたときに「盗まれた!」と主張する「もの盗られ妄想」などの問題行動に発展するケースもあります。
「親が認知症かも?」と思うと「早く対応しなきゃ」と焦ってしまいますが、まずは落ち着いて親の不安や怖さに寄り添う姿勢こそが、BPSDの予防につながっていくのです。
1人で抱え込まない
「認知症かも」と疑ったときには、1人で抱え込まずに地域包括支援センターや精神保健福祉センターで相談してみましょう。家族だけの相談を受け付けている病院もあります。
「親のことは子どもが見なければ!」と思いつめる人もいますが、親子だからこそお互いに感情的になって状況がこじれることもあります。子どもが何度言っても耳を貸さない親が、第三者に言われるとすんなり受け入れることもあるのです。
まわりの人の力をどんどん借りていきましょう。
参考文献:
中島健二・天野直二・下濱俊・冨本秀和・三村將編集(2013)認知症ハンドブック 医学書院
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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