旅行が認知症予防に効果的?精神科医が「旅行は最強の脳トレ」と語る理由

 旅行が認知症予防に効果的?精神科医が「旅行は最強の脳トレ」と語る理由
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豊田早苗
豊田早苗
2023-03-11

精神科医の豊田早苗先生は「旅行は最強の脳トレ!」と語ります。その理由とは?

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1:旅の計画は、脳を若返らせる

旅行計画を立てる時って、「どこに行こうかな?」「行った先で何をしようかな?」など、ワクワクしませんか?

このワクワクする気持ちは、脳内におけるドーパミン分泌を促してくれます。

ドーパミンは、やる気ホルモン。

ドーパミンが分泌されることで、脳の働きが良くなり、集中力や注意力が高まります。

ただ、ドーパミンが分泌され過ぎると、交感神経が活発になり、脳の血流が悪くなって、脳に十分な酸素や栄養源を運ぶ事ができなくなってしまい、空回りしてしまいます。

そんな事態にならないようにしてくれるのが、セロトニンと呼ばれるホルモン。セロトニンは、旅行のパンフレットやインターネット等に掲載されている美味しそうな食べ物や素敵な景色の写真を見ることで五感が刺激されて、分泌されます。

ワクワクしすぎて、ドーパミンが大量に分泌されても、セロトニンがドーパミンの暴走を抑え、程よく働くように調節してくれるのです。

そして、また、セロトニンは、記憶や思考の整理にも関与しており、脳が上手く働くために重要なホルモンでもあります。

脳は、約150億個の神経細胞の集まりで、神経細胞同士がドーパミンやセロトニンなどの情報伝達物質をやり取りすることで、働いています。ですが、年をとるにつれて、こうした情報伝達物質の分泌は悪くなり、脳が上手く働かなくなっていきます。もの忘れやウッカリミスが起こるのは、このためです。

つまり、旅の計画を立てることは、ドーパミンやセロトニンの分泌を促し、脳を若返らせてくれるのです。

旅行
旅の計画を立てることはドーパミンやセロトニンの分泌を促し、脳を若返らせてくれる。
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2:旅を楽しむことは、前頭葉を活性化させる

旅行に出かけると、美しい景色や美味しい食べ物を食べたりしますよね。

テレビやパンフレット、インターネットでみたことはあっても、実際に目にしたり、食べたりするのは、初めてだったりもします。

そんな「初めての体験」は、前頭葉を刺激し、活性化してくれます。

また、旅行は、日常から離れる事ができる時間でもあります。いつもの日常から離れることで、溜まっていたストレスを解消することが出来ます。ストレスは、溜め込むことで、脳とくに前頭葉の働きを悪くし、ストレス性の脳萎縮を引き起こすと言われています。

前頭葉は、脳の司令塔。

記憶力や思考力、集中力や注意力、コミュニケーション力や言語力など、ありとあらゆる働きに関与している場所でありながら、最も早くに老化が起こる場所です。

旅行に出かけることは、前頭葉が刺激され脳の老化を遅らせてくれるとともに、ストレスから脳を守ってくれます。

もし、時間ができたら、行ってみたい場所に旅行に出かけてみてはいかがでしょうか?

旅を楽しむ
旅行に出かけることは、前頭葉が刺激され脳の老化を遅らせてくれるとともに、ストレスから脳を守ってくれる。
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3:旅を懐かしむことは、海馬を刺激し活性化する

旅の思い出って、どんな旅行であっても、懐かしく感じませんか?

この「懐かしい感情」は、脳の海馬と呼ばれる部分を刺激します。

海馬は、記憶の中枢で、目や耳から入ってきた情報を一時的に保存し、長期的に記憶して置くほうがよいかどうかを判断する場所です。

また、海馬は、位置情報を把握する空間認識に関与しており、スムーズに目的地に辿り着けるようサポートしてくれている場所でもあります。

認知症になると、「物事を覚えることができなくなる」「道に迷ったりする」ことが起こってきます。これは、海馬の脳神経細胞が破壊され、働きが低下してしまったことが原因です。

脳の神経細胞は、この世に生を受けて以降、減ることはあっても増えることはありません。ですが、懐かしい感情は、海馬を刺激し、海馬の脳神経細胞を増やすと言われています。

「楽しかった旅行も終わってしまった!」と嘆くのではなく、楽しかった旅行を思い出してみてください。

海馬が刺激されて海馬の脳神経細胞が増え、「なりたくない病気第1位」と言われる認知症の発症を防いでくれますよ!

まとめ

旅行が脳の老化抑制や認知症予防に効果的な理由について簡単に説明させていただきました。

旅行は「計画する」「実際に旅行に行く」「思い出す」全ての段階において脳を刺激し、活性化してくれる最強のツールです。

また、実際に旅行に出かける事ができなくても、旅行気分を味わうことでも同じような効果が得られると言われていますので、旅行に行くことは難しいという方は、パンフレットや動画などで旅行気分を味わって見るのもいいかもしれません。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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