認知症と間違いやすい【高齢者のうつ病】高齢者専門の精神科医が教える、うつのサインと認知症との違い

 認知症と間違いやすい【高齢者のうつ病】高齢者専門の精神科医が教える、うつのサインと認知症との違い
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人生100年時代、医療の進歩とともに寿命は年々延びています。その中で注目したいのはいかに健康寿命を延ばしていくかということではないでしょうか。今回は精神科医である和田秀樹先生の著書『70歳が老化の分かれ道』から、長く元気でいられるための知恵をご紹介します。

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70代以降の人が一気に老け込む大きな原因の1つとして、「うつ病」があります。うつ病になると食欲も落ち、外出する気分にもならず運動量が一気に少なくなります。すると運動機能も脳機能もあっという間に衰えてしまいます。では、70代のうつ病にはどのような傾向があり、どう対応したらいいのかをチェックしていきたいと思います。

見過ごされがちなうつ病

脳内のセロトニンや男性ホルモンが減少している高齢者はうつになるリスクも高くなっています。意外なことに、70代前半くらいまでは、認知症の人よりもうつ病の人の方が多いのです。しかしこの世代のうつ病はうつだとあまり認識されず、見過ごされているケースが多いのが現状です。

「歳のせい?」と思ったら実はうつの症状だった

なぜそのようなことが起こるのか。その原因は「歳のせい」で片付けられてしまうことです。うつの症状である、「最近、やる気が起きない」「食欲がなくなった」「夜、何回も目が覚める」「早朝に起きてしまう」といった症状を訴えたとしても、「歳のせい」として扱われてしまうことが往々にしてあるからです。このような症状は典型的なうつ症状であるものの、本人も家族も歳のせいだから仕方ないと専門医にみてもらわずに過ごしてしまうケースがよくあります。

もう一つ、うつが見逃されやすい理由に、高齢者のうつ病の症状はあまり目立たないという特徴があります。心理的症状よりも「腰が痛い」「身体がだるい」「便秘」といった身体的症状の方が気になり、うつだと気付かれにくいのです。このように、高齢者のうつは、なかなかうつ病と認識されづらい特徴があります。

高齢者のうつのサインとは

ではどうしたら良いのでしょうか。それはうつ病のサインを見逃さないことです。ここでのポイントは、「うつ病」と「認知症」どちらなのか判断することです。「物忘れが多くなって、外出もしなくなった」これはうつの症状でもあり、認知症の症状でもあり、判断が難しいことがあります。いちばんの方法は、その症状がいつから始まったのかを確認することです。認知症は病状がゆっくり始まっていきます。いつから症状が出ているかと聞かれてもはっきりと答えられない場合が多いのが認知症の特徴です。一方、うつ病の場合は、1ヶ月くらいを境に急に病状が進みます。急に物忘れがひどくなった、全然着替えをしなくなった、食欲がなくなったという場合は、うつ病の可能性が高いと考えられます。うつの可能性があれば、早めに専門家への受診をすることで重症化せず元気を取り戻すことができるでしょう。

私たちが思っているよりも、70代のうつ病は数として多いにもかかわらず、見逃されている現状があることがわかります。気持ちも健康でイキイキといるためにも、周囲が早めにそのサインに気づいて対処していくことが大切です。

70歳
『70歳が老化の分かれ道』(和田秀樹 著、詩想社)

著者/和田秀樹
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に『自分が高齢になるということ』(新講社)、『年代別医学的に正しい生き方』(講談社)、『六十代と七十代心と体の整え方』(バジリコ)、『「人生100年」老年格差』(詩想社)などがある。

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文/桑澤仁美

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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