「認知症になりやすい人」の特徴とは?将来の認知症リスクを減らすためにできること|精神科医が解説
認知症になりやすい人とはどんな人でしょうか?精神科医が解説します。
1:家族に認知症の人がいる
アルツハイマー型認知症を引き起こす原因と言われているアミロイドβの蓄積や凝集に関与しているのがアポリポタンパクEです。
アポリポタンパクEの型は、APOE遺伝子によって決定され、ε4遺伝子を持っていると、将来、認知症を発症するリスクが3〜10倍高くなると言われています。
ε4遺伝子は、優性遺伝。
つまり、両親のどちらかがε4遺伝子を持っていると、その子供は、ε4遺伝子を引き継ぎます。
ご家族に40〜50代の若い年代で認知症を発症した方がおられる場合、ε4遺伝子を持っている可能性が高く、将来、アルツハイマー型認知症を発症しやすくなります。
ただし、遺伝性のアルツハイマー型認知症は10%ほどで、90%は遺伝とは無関係の発症と言われています。
2:タバコを吸う人、タバコの煙を吸う人
ニコチン含有タバコを吸うと、体内に吸収されたニコチンの作用によって、血管が収縮し、血圧が上昇します。
血圧が高い状態(収縮期血圧160以上、または、拡張期血圧100以上)が続くと、脳血管性認知症を発症するリスクが6〜10倍高くなると言われています。
また、タバコの煙には、活性酸素を発生させる成分が多く含まれており、体内における酸化が過剰となり、細胞にダメージを与える酸化ストレスとなります。
酸化ストレスによって、血管は動脈硬化を起こし、脳ではアミロイドβが溜まりやすくなります。
つまり、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症を発症しやすくなります。
3:お酒をたくさん飲む人
アルコールをたくさん飲めば飲むほど脳は萎縮し、さらには、血液中の中性脂肪やコレステロールが増加し高脂血症を引き起こす要因となります。
加齢による脳萎縮に加えて、アルコールによる脳萎縮が起これば認知機能は低下しやすくなり、注意力や記憶力の低下が起こってきます。
高脂血症になれば、脳血管性認知症を発症するリスクが高くなります。
また、アルコールを摂取することでビタミンB1が欠乏し、ウエルニッケ脳症を引き起こす危険性もあります。
ビール(アルコール度数5%)で500ミリリットル(中瓶1本)、ワインで180ミリリットル(グラス1.5杯)、日本酒で180ミリリットル(1合)程度の飲酒に留めておきましょう!
4:ストレスを溜め込む人
ストレスを感じるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが分泌されます。
コルチゾールは、脳の海馬と呼ばれる部分に作用し、記憶力を低下させます。
また、ストレスによって、夜ぐっすり眠る事ができなくなると、睡眠中に除去されるはずのアミロイドβが除去しきれず、脳内に溜まることになります。
アミロイドβが脳内に溜まりやすくなれば、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高くなります。
実際、睡眠障害がある人では、1.5倍認知症を発症するリスクが高いと言われています。
5:運動習慣のない人
運動を行うと、全身の血流が良くなります。
全身の血流が良くなると、脳の血流も良くなり、脳由来神経栄養因子(BDNF)が増えます。
大脳は、約150億個の神経細胞の集まりで、無数の神経情報ネットワークを構築し、情報のやりとりを行っています。
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、神経細胞同士の繋がりである神経情報ネットワークが新たに構築されたり、既存の神経情報ネットワークの整備に関与しています。
運動習慣がないと、脳由来神経栄養因子(BDNF)が増えないため、運動習慣のある人に比べて、20年早く脳が老化すると言われています。
また、運動は、認知症発症リスクが2倍高くなると言われている糖尿病を引き起こすリスクを抑えます。
週1回運動するだけで、認知症の発症リスクが40〜50%減るという研究報告もありますので、運動を全く行っていない人は、ストレッチやウオーキングなど手軽にできる運動を生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか?
6:加工食品をよく食べる人
ポテトチップスやカップラーメン、菓子パンやビザ、ドーナツやケーキなど、砂糖や脂肪分、塩分や食品添加物が多い加工食品の割合が1日の総摂取カロリーの20%を超えると、1.25倍認知症発症リスクが高くなると言われています。
1日の摂取カロリーは、大体2000キロカロリー。
その20%というと、400キロカロリーです。
これは、ハンバーグにトマトやレタスをサンドした普通のハンバーガー1個分に相当します。
え!まずいかも?と思った方は、加工食品を少し減らして、果物や野菜など未加工食品を増やすようにしてみてはどうでしょうか?
ほんの少しの努力が将来の認知症発症リスクを減らしてくれますよ!
AUTHOR
豊田早苗
鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。
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