「部屋が汚い!」は、うつの始まり?放置すると重度のうつになる可能性も…精神科医が解説

 「部屋が汚い!」は、うつの始まり?放置すると重度のうつになる可能性も…精神科医が解説
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豊田早苗
豊田早苗
2023-06-19

うつに気づくためのサインとは?精神科医が解説します。

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「部屋が汚い!」は、うつの始まり?

うつ病になると、「何も出来なくなる」「何もしたくなくなる」などの症状が出ます。

ですが、いきなり、何もできなくなったり、何もしたくなくなるわけではありません。

うつ病を発症する方の多くは、真面目で何事にも一生懸命に取り組む方です。

だから、多少、気が重くても、前向きになれなくても、仕事や家事・育児をこなそうと頑張ります。

でも、うつ病は、心も身体も悲鳴をあげている状態。

いくら本人がいつも通り仕事や家事・育児をこなそうとしても、いつも以上に時間がかかり、効率が悪くなります。

1日は24時間。

1つのことを成し遂げるのに時間がかかるようになると、当然、後回しにしなければいけない事ができてきます。

真面目で何事にも一生懸命、責任感の強い人が何かを後回しにしなければいけない状況に陥った時、何を後回しにするのか?

もっとも多いのが、部屋の掃除です。

家の中のことは、外からは見えませんので、多少、疎かになっても、人から低評価されたり、批判されることはありません。

特に自分の部屋となれば、なおさら。家族に迷惑がかかることも少ないです。

というわけで、うつ病の始まりとして、「部屋が汚れている状態」「片付けができていない状態」が見られることがあります。

部屋が汚い以外に、料理に時間がかかるため、レトルト食品や冷凍食品を頻繁に使うようになるケースもあります。

うつ病
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放置していると重度のうつ病になってしまう場合も

部屋が片付いていない状態って、別に悪いこと?仕方ないでしょ?と思うかもしれませんが、本当にそうですか?

掃除できていない部屋を片付いていない部屋を見る度に、できない自分を責めていませんか?自分はダメだと思っていませんか?睡眠時間を削ってでも今まで通りにこなす事を考えたりしていませんか?

こころと身体が悲鳴をあげているサインとして出ている「部屋が汚い!」が、自分を責めることに繋がり、さらに、こころと身体を疲弊させてしまう悪循環を起こしてしまい、うつ病を悪化させることになることもあります。

重度のうつ病では、何も出来なくなります。

朝起きることも、食事することも出来なくなります。

それは、気持ちの問題ではありません。

完全にエネルギーが枯渇してしまっているため、したくても出来ないのです。

こころと身体が悲鳴をあげていることに気づかないと、気づいて受け入れないと、こころを動かす、身体を動かすエネルギーは、枯渇する一方です。

出来ない自分、ダメな自分を受け入れることは難しいです。

でも、完璧な人なんていません。

弱い部分がない人なんていません。

出来ない自分、ダメな自分を受け入れて助けを求めることは、自分を守ることに繋がります。

今まで通りの自分に戻ることに繋がります。

これ以上、エネルギーを枯渇させないために、自分の異変に気づくこと、そして、受け入れることが大切です。

早く元の自分に戻りたい!と思うなら、なおさらです。

いつもと違う自分に気づこう!

「部屋が汚い」「部屋が片付いていない」は、うつ病の始まりと話を進めてきましたが、もちろん、「部屋が汚い」=「うつ病」というわけではありません。

もともと掃除が苦手で、あまりしない方だという人もおられるでしょうし、部屋が汚いことなんて気にならないから掃除しないだけであったり、仕事や育児が忙しくて、掃除する時間がないだけという方もおられることと思います。

そういった元々の性格とか仕事や育児の問題ではなく、ポイントは「今までと違うかどうか」です。

「仕事や育児は今までと変わらないのに、週1回の掃除が月1回になっている」「綺麗好きで、部屋の隅々まで掃除していたのに、最近は、部屋の隅など細かいところが掃除できてなくて、ゴミが溜まっている」等、「今まで、こんなことはなかったのに!」という変化があるかどうかです。

もし、今までと違う変化がある場合は、疲れやすかったり、朝スッキリ起きれない、涙もろい等、心身が疲弊しているサインが他にないか?自分を振り返ってみてください。

頑張り屋さんだからこそ、しなければいけない気持ちが強すぎて、身体やこころが悲鳴をあげていることに気がついていないのかもしれませんから。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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