症状が似ていて見分けるのが難しい…更年期障害とうつ病の違い、見極めるポイントは?精神科医が解説

 症状が似ていて見分けるのが難しい…更年期障害とうつ病の違い、見極めるポイントは?精神科医が解説
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豊田早苗
豊田早苗
2023-05-04

更年期世代のメンタル不調、実はうつ病かもしれません。精神科医が、見極めるためのポイントを解説します。

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更年期障害では、顔がほてる、体がだるい、手足が冷える、異様に汗をかく等の体の症状だけでなく、夜なかなか寝付けない、些細なことが気になる、気分が憂鬱等のメンタル的な症状を自覚することがあります。

そして、この更年期障害で自覚するメンタルの症状は、やっかいなことに、うつ病の症状と似ていて見分けることが難しいです。

でも、どんなに症状が似ていても、見分けるのが難しくても、その症状が更年期障害によるものか?うつ病なのか?見極める必要があります。

なぜなら、更年期障害であればホルモン補充療法や漢方薬による治療、うつ病であれば、抗うつ剤による治療や認知療法といったように行う治療が全く違い、もしうつ病であった場合、放置することで症状が悪化し、治癒するまでに長い年月がかかったり、治療困難になってしまう危険性があるからです。

では、どのように見極めるのか?

更年期障害とうつ病を見極めるポイントについて説明いたします。

1:症状の割合

更年期障害では、体の症状とメンタル的な症状、どちらが多いですか?ときかれたとき、「夜眠れなかったり、気分が落ち込んだりするけど、顔も火照るし、汗も凄く出る」といった具合に、メンタル的な症状と体の症状を大体半々ぐらいで答える人が多いです。

一方、うつ病では、多少、頭痛がするとかめまいがする等の体の症状があっても、「気分が落ち込んで仕方ない、毎晩眠れず、眠れてもすぐ目が覚めてしまう、なーんにもしたくない、することが億劫」といった具合に、圧倒的にメンタル的な症状の方が多く、メンタルの不調を強く自覚します。

うつ
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2:症状の程度

更年期障害では、気分がゆううつと言っても、「今日は気分が悪いなあ、なんだか憂鬱だなぁ、あんまりやる気が出ないなぁ」と、何となく憂鬱、何となく意欲が出ないと感じることが多いです。

一方、うつ病では、「憂鬱で何もしたくない、起きたくない、食事をしても美味しくない、友達と話をしても楽しくない」など、ハッキリと気分の落ち込みや意欲の低下を自覚し、生活や仕事に支障が出ます。

3:症状の持続性と悪化

更年期障害は、エストロゲンを分泌する指令が出ても分泌できない今までと違う状況に身体が反応して症状が出ています。

ですので、身体がエストロゲンが分泌できないこと、つまり、エストロゲンの減少に慣れてくれば、症状は治ってきます。

*更年期障害は、大体2年ほどで、約80%の人は症状が治ると言われています。

ですが、うつ病は、時間が経過しても治ることはありません。

放置することで症状は悪化し、「自分はダメな人間だ。生きている価値はない、死にたい」等の考えが浮かぶようになってきます。

また、更年期障害では、毎日症状が同じというわけでなく、日によって、憂鬱な日もあれば、そうでない日もあったりします。ですが、うつ病では、基本的に毎日、気分が憂鬱で、やる気が出ない。眠れないし、食事も美味しくない日が延々と続きます。

このように、更年期障害で起こるメンタル的な症状とうつ病には違いがあります。

加えて、心の内を話できる人がいない、人目を気にしやすい、物事を白黒つけないと気が済まない、「〜すべき」思考が強い、生理前後で気分が不安定になる等、ストレスを溜め込みやすい人、ホルモンの変化に敏感で気分変動が起こりやすい人は、更年期にうつ病を発症しやすいと言われていますので、注意が必要です。

もし、自分が感じている症状がうつ病かも知れないと思った場合は、精神科もしくは心療内科を受診して相談するようにしましょう。

精神科や心療内科が受診しにくい場合は、とりあえず、更年期障害を対応している産婦人科で相談されても良いです。

放置せず、早めに対応することが、心の病気を長引かせないポイントです。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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