閉経を迎えた女性がかかりやすい「3つの病気」医師が解説

 閉経を迎えた女性がかかりやすい「3つの病気」医師が解説
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-12-17

「閉経を迎えた女性がかかりやすい病気3つ」を医師が解説します。

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閉経を迎えた女性がかかりやすい病気1「糖尿病」

閉経を迎えて、女性が更年期に入ると、エストロゲンプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが急激に減少することが広く知られています。特に、エストロゲンは血糖値を下げるインスリンの働きをサポートする作用があります。更年期を迎えるにあたって、エストロゲンの量が減少すれば、相対的にインスリンの働きも弱くなり、血糖値が下がりにくくなることで糖尿病発症リスクをする上昇させます。

一般的に、女性は40代頃から更年期と呼ばれるフェーズに入り、この時期には体が火照って疲労を感じやすいなど辛い期間であると考えられていますが、実は更年期には糖尿病の発症とも関連があることはほとんど知られていません。血糖値が上昇する原因として最近忙しくて外食機会が頻繁に増加した、昔に比べて体重増加が著しい、周囲環境などで過剰なストレスを抱えているなどの他に、女性特有の要因として更年期前後におけるエストロゲンの分泌量低下が挙げられます。

女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには様々な健康リスクから女性の身体を守る働きがあることが知られています。その代表例として血糖値を調整する働きも有していますが、エストロゲンの分泌量は、女性の場合にはおよそ40代頃から減少し始めて、50代の閉経期になれば急激に落ち込みます。本来であれば、女性はエストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンに保護されているため、男性と比して糖尿病に罹患しにくいという傾向がありますが、特に更年期を過ぎるとエストロゲンの分泌量が低下して糖尿病を発症する危険性が増します。

血糖値が高くなっていても自覚症状が無い方がほとんどであるからこそ、更年期の時期を迎えたタイミングで一度血液検査を含めて糖尿病に関する精密検査を受けてみることは有用であると考えられます。

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閉経を迎えた女性がかかりやすい病気2「自律神経失調症」

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることでさまざまな症状を引き起こす病気の総称です。医学的に正式な病名ではありませんが、診断書などで診断名として用いられる際はストレスや不安などからくる軽症のうつ病や、いわゆる不安神経症や気分障害などの症状が一部含まれると考えられます。

自律神経失調症の症状は個々によってさまざまであり、身体的な症状としてはだるい、眠れないなどの全身症状と、頭痛、動悸、息切れなどの部分的な症状がありますし、精神的な症状としては情緒不安定、いらいら、不安感などがあります。逆に言うと、これらの多種多様な症状があるにもかかわらず、体に医学的な器質的異常所見がなく、明らかな精神的疾患もない場合などに、「自律神経失調症」と便宜的に診断されることがあります。

通常、不規則な生活やストレス、ホルモンの乱れなどが本疾患を発症させる原因になることから、不規則な生活を送っている人ストレスを感じやすい人、閉経を迎えた女性など更年期で女性ホルモンのバランスが乱れやすい人などに本疾患は起こりやすいと考えられます。

閉経を迎えた女性がかかりやすい病気3「骨粗鬆症」

世界保健機関によれば、「骨粗鬆症」は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴としており、骨の脆弱性が増大して骨折の危険性が増大する疾患であると定義されています。一般的に骨粗鬆症とは、骨の強度が低下することで引き起こされると考えられています。骨の強度を規定する要因としては、骨密度と骨質が挙げられ、約70%が骨密度、残りの30%前後は骨質に影響されると言われています。

通常、骨粗鬆症の原因には、原発性と続発性の2種類があり、原発性の骨粗鬆症では、その原因となる明らかな疾患などはなく、ほとんどは閉経を迎えた女性において女性ホルモンの低下などによって引き起こされるものです。健康な骨の維持には骨の形成や吸収といった代謝のバランスが鍵となりますが、加齢に伴うビタミンDや副甲状腺ホルモンの働きの異常性変化によって骨の代謝のバランスが崩れていきます。特に、女性の場合には、閉経や加齢によって骨の分解を抑制するエストロゲンというホルモンの分泌が急速に低下していくことで、骨の形成が吸収に追いつかなくなり、より骨が脆弱になる方向性へと傾きます。

まとめ

これまで、閉経を迎えた女性がかかりやすい病気3つを中心に解説してきました。

閉経を迎えた女性においては、エストロゲンなどの女性ホルモンが減少し始めて、更年期の時期を迎えることで、どんな女性にも糖尿病、自律神経失調症、骨粗鬆症などの疾患を罹患するリスクが増大することが指摘されています。普段から特段の自覚症状がなくても、閉経期や更年期前後になればこれまでの生活習慣を改善してみて、規則正しい生活スタイルと健康的な意識づけを実践してみましょう。

閉経を迎えた女性が、自ら病気を早期発見して的確に治療するとさまざまな症状を良好にコントロールできる期待が持てますので、心配であれば必要に応じて専門医を受診して相談するように取り組みましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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