【胃潰瘍】腹痛だけじゃなく吐血することも!若者の罹患率も高い?胃潰瘍とはどんな病気?医師が解説

 【胃潰瘍】腹痛だけじゃなく吐血することも!若者の罹患率も高い?胃潰瘍とはどんな病気?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-02-19

知っているようで意外と知らない「胃潰瘍」について、医師が詳しく解説します。

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胃潰瘍とはどのような病気か

胃潰瘍という疾患はストレスや薬物などが原因で発症することが多く、まさに現代社会における代表的な病気であると言えます。

胃液中に含まれる塩酸やペプシンといった物質が、過剰に産生されて胃を保護している消化管粘膜を消化してしまう、あるいは胃粘膜を防御している因子が減弱することによって胃壁に潰瘍性病変を形成します。

胃潰瘍における自覚される症状の約9割は腹痛であると考えられており、そのほとんどが上腹部のみぞおち周囲に腹痛を感じることが多く見受けられ、基本的には食後に痛みが出現しやすく、食事を過多に摂取しすぎると長時間に渡って腹痛が継続します。

胃潰瘍に罹患しても全く症状を感じないケースもあって、自分で気が付かないままに知らず知らずのうちに潰瘍が悪化して胃に穴が空いて穿孔を引き起こすことによって、初めて腹部の激痛を自覚して胃潰瘍が発見される場合もあるので注意が必要です。

胃潰瘍では胃粘膜が胃酸などによって傷つけられて、吐き気や嘔吐症状を引き起こす比較的身近な病気であり、胃の粘膜が強い炎症を起こすために、胃の痛み以外にも腹部不快感、吐き気、嘔吐など多彩な症状を呈することが予想されます。

胃潰瘍を発症した場合には、胃酸と共にどす黒くなった血液成分を吐血することがあって、このような場合には、出血性胃潰瘍と呼ばれています。

出血性胃潰瘍では、ちょうど潰瘍が認められる部位の血管が破裂するのが原因であり、出血して吐血した際には冷や汗、頻脈、血圧低下、腹部の激痛を自覚することもあります。

胃潰瘍
胃潰瘍 illustration by Adobe Stock

胃潰瘍になりやすい人とは

胃潰瘍の実に70%以上においてピロリ菌が原因であると考えられていて、このピロリ菌に仮に感染したからといって胃潰瘍や胃癌が必ず発症するわけではありませんが、感染した人のほとんどに萎縮性胃炎が引き起こされると言われています。

根治的に除菌しない限りピロリ菌は胃内に生息し続けると考えられています。

また、胃潰瘍は通常では痛み止めとして処方されるNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬の長期服用している人でも発症しやすいと考えられています。

普段の食生活や食事習慣も胃潰瘍発症に大きくかかわっていて、暴飲暴食、寝る直前に食事を摂取する、よく噛まないで早食いする、刺激の強い香辛料などを始めとして胃を刺激するものを過剰摂取するなど不規則な食生活を行うと胃潰瘍の原因となることがあります。

また、胃酸の分泌を促進する食べ物として焼肉、コーヒー、濃い紅茶や緑茶、アルコール、強い香辛料などが知られており、それ以外にも脂肪性の食品を好んで摂取している人は胃潰瘍発症につながりやすいと考えられます。

日常的に過度のストレスがかかり、イライラ感が募る、過労で睡眠不足に陥る、緊張や不安状態が襲ってくるなど肉体的あるいは精神的なストレスが胃潰瘍の原因となることは多いと言われています。

胃潰瘍は、個々の性格とも密接な関わりがあることが指摘されており、特に普段から神経質で几帳面な人、あるいはストレスをため込んで悩みや責任をひとりですべて抱え込む傾向がある場合には罹患しやすい病気です。

喫煙は胃粘膜の血流を低下させると考えられており、胃潰瘍を発症させる引き金となることがありますし、アルコールはたばこと共に代表的な嗜好品であり、日常的に継続して大量の飲酒をしていると胃に過度の負担がかかって胃潰瘍の原因となることが知られています。

胃潰瘍
胃潰瘍の発症には、普段の食生活や習慣、ストレスなどが大きく関わっている。 illustration by Adobe Stock

胃潰瘍の治療予防策は?

胃潰瘍は以前から男性に多く発症すると伝えられていましたが、近年では更年期前後の中年女性にも多く認められますし、若年者における罹患率も高くなる傾向があります。

胃潰瘍を発症すると自覚症状の9割は上腹部のみぞおち部分に腹痛を感じると言われており、胃粘膜から出血することで貧血や黒色便などの全身症状が出現します。

過度のストレスがかかり、イライラ感が募る、過労で睡眠不足に陥る、緊張や不安状態が襲ってくるなど肉体的あるいは精神的なストレスが胃潰瘍発症の引き金になると指摘されていますので日常的に少しずつでもストレスを発散できるように努めることが重要です。

胃潰瘍に対する治療手段としては、胃酸分泌を抑制する薬や胃粘膜を保護する薬などを服用すると共に、ピロリ菌を根本的に除菌する治療法も効果的です。

以前より胃潰瘍に対するピロリ菌の除菌治療は保険適応として実践できますので、万が一ピロリ菌が原因で胃潰瘍を発症している場合には抗生物質や胃粘膜保護剤を1~2週間服用することによって治癒効果が期待できます。

まとめ

これまで、胃潰瘍とはどのような病気か、胃潰瘍になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

胃潰瘍は、主にピロリ菌による感染、もしくは解熱鎮痛薬のひとつである非ステロイド系抗炎症薬の長期間の内服などによって胃の粘膜がただれる、あるいは喫煙や飲酒、過剰なストレス、刺激物の摂取などによって胃壁の粘膜が障害される病気です。

胃潰瘍は現代社会の代表的な病気のひとつであり、胃液中に含まれる胃酸成分やペプシンと呼ばれる物質が胃を保護している粘膜を消化してしまうことによって発症すると考えられています。

以前は男性に多く発症する病気でしたが、近年では女性や若年者の発症率も高くなり身近な疾患として認識されていて、胃潰瘍が発症すると、各々のケースでみぞおち周辺の心窩部痛、嘔気、嘔吐、食欲低下、体重減少、吐血や下血など様々な症状が認められます。

普段から腹部症状を自覚している方、不規則な生活習慣を送っている場合、胃潰瘍を発症しているかどうか心配な人は最寄りの消化器内科など専門医療機関を受診して一度相談されることをお勧めします。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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