「お腹が痛い…」放置すると命にかかわる場合も…。「腹膜炎」になりやすい人の特徴は|医師が解説

 「お腹が痛い…」放置すると命にかかわる場合も…。「腹膜炎」になりやすい人の特徴は|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-11-26

腹膜炎は、急激に発症して放置すると命に関わる可能性がある疾患です。医師が解説します。

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「腹膜炎」とは、どのような病気なのか

腹膜炎とは、お腹にある腹腔内の臓器の炎症が腹膜に及ぶ病気のことです。

腹膜とは、胃・腸・肝臓などお腹の臓器の表面を覆っている膜のことです。

腹膜には多くの血管やリンパ管が走行し、内臓の動きをサポートして保護する機能があります。

腹膜炎は、全体に広く炎症が広がる“汎発性腹膜炎”と腹膜の一部のみに炎症が生じる“限局性腹膜炎”の2種類があります。

汎発性腹膜炎の多くは、胃や腸などの消化管に穴が開き、内容物が腹腔内に漏れ出すことが原因である一方、限局性腹膜炎は、胃や腸などの消化管に穴が開いた際などに腹膜の一部に炎症を起こし、そこに膿瘍が形成されるものです。

発症

腹膜炎を発症すると、腹痛や発熱などの症状が引き起こされ、病状が重症化すると敗血症や多臓器不全に進行して命に係わることもあります。

代表的な治療は腹膜炎の原因となる病気の治療を行い、抗菌薬の投与やたまった膿を排出するドレナージ処置など専門的かつ集学的な治療を早急に行う必要があります。

治療

腹膜炎は、発症原因となる病気の治療を行いながら、抗菌薬の投与などを行って腹膜の炎症を抑える治療が必要になりますし、特に汎発性腹膜炎の場合には緊急手術が基本的には必要となります。

また、限局性腹膜炎のケースでは、膿瘍を体外へ排出するドレナージ治療を行い、敗血症や多臓器不全に陥っている場合には、人工呼吸管理など集約的治療が必要です。

「腹膜炎」になりやすい人の特徴

腹膜炎は、お腹の臓器を覆う腹膜に炎症が生じる病気で、多くはお腹の臓器の炎症が腹膜に広がることで発症する病気であり、主な原因は潰瘍やがん(悪性腫瘍)などが挙げられます。

食道や胃腸、胆嚢などの部位にこれらの病変がある人は、消化管に穴が開きやすく、内容物がお腹の中に漏れ出て腹膜炎になりやすいと考えられます。

また、虫垂炎や胆嚢炎など強い炎症が生じる病気を抱えている場合には、臓器に穴が開いていない状態でも腹膜に炎症が及ぶことがあります。

特殊なケースでは、肝硬変を患っている場合に、病気に伴って、お腹に水がたまり、腹腔内に細菌が侵入することで特発性細菌性腹膜炎を発症する可能性が挙げられます。

また、胃がんや卵巣がんなどに罹患している人が、腹膜にがん病変が転移するがん性腹膜炎という種類もあり、がん性腹膜炎の場合には、腹部の張りが強くなり、進行すると腹腔内に癒着が生じて、腸閉塞や尿管閉塞などを引き起こす可能性があります。

まとめ

腹膜炎とは、お腹の中の表面を被っている腹膜が炎症を起こしている状態です。

急激に発症して放置すると命に関わる可能性がある腹膜炎においては、突然の腹痛、持続的な激痛、発熱などの症状が認められる場合があります。

腹膜炎をきたす原因としては、胃・十二指腸潰瘍穿孔、大腸穿孔、虫垂炎、胆嚢炎、急性膵炎、がん、肝硬変に合併する特発性細菌性腹膜炎などが挙げられ、特に潰瘍やがん病変を持つ人は腹膜炎になりやすいと考えられます。

腹膜炎に対する治療としては、原則として緊急手術になりますし、腹膜炎が悪化すると全身に細菌が広がる敗血症や多臓器不全となり、命の危険にさらされますので、人工呼吸器や人工透析などの集中治療が必要となります。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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