できないことが増え、ついには「消えてしまいたい」と思うまでに…彼女を救ったもの #更年期ing

できないことが増え、ついには「消えてしまいたい」と思うまでに…彼女を救ったもの  #更年期ing
更年期ing

40代後半に突入し、心も体も不調な日が増えた。でもこれって何?病気?更年期?それとも気のせい?そんな不安や葛藤、やりきれない気持ちを抱えているのは、あなただけではありません!ライター山田メノポさんによる連載「更年期ing(アイエヌジー)」では、更年期と今まさに向き合っている方からすでに乗り越えた方まで、さまざまな人の「更年期との付き合い方」「更年期を過ぎた、今」を取材します。

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自身の症状が更年期由来なのか、非常に判断がつけにくいのがメンタルの症状。今回ご紹介する専業主婦の山上さくらさん(53歳、仮名)も、主に無気力や自己肯定感の低下といったメンタル面での症状に悩まされたそう。現在は更年期もピークを超え、過ごしやすくなったという彼女が、どのようにその症状と付き合い、そこから抜けることができたのか?お話を伺いました。

「そうか、これが更年期か!」

主婦業の傍ら、不定期に自宅での料理教室を開催しているさくらさん。今は少し更年期を抜けてきたような気がするという彼女が、なんとなくの不調に気づいたのは5年前、48歳の時でした。「最初はそうと気付かなかったのですが、思い返すとその頃から、寝ている時に目が覚めると汗をかいていことが、度々ありました。暑くて布団を剥ぐ、汗冷えで布団を掛ける、を一晩に何度も繰り返していました」。

眠りの質が低下したことで心身の疲れが溜まったのか、そこからココロの症状にも苦しめられるように。「なぜか朝きちんと起きられなかったり、家のことができなかったり。さらにそんな自分の不甲斐なさを責めるようになってきたんです」。当時はまだ更年期とは気づかず、理由がわからないままやる気が出ない日々を送るうち、メンタルの不調が悪化。「できないことが増え、己の存在価値を疑ったり、酷いときにはもういつ消えても構わないと思いながら過ごしていたのが、何よりも辛かったです」。

更年期
photo by Adobe Stock

特に解決策もなく、ただ鬱々と落ち込んだり、イライラとしながら過ごしていたある日、ベッドで起きた瞬間にふと「これはもしかしたら更年期の症状なのでは?」と思ったさくらさん。「そうか、これが更年期か!それなら仕方ない!と思えました。元来が楽天的というか、あまりネガティブ思考にならないタイプだったので、思い切って開き直り、とことん自分を甘やかそうと」。彼女の場合、そうできる状況だったのも功を奏したのかもしれません。

「その頃はちょうど仕事をしていなかったため、メンタルの問題があっても、対人関係などで支障が出ることはありませんでした。また、さらにこの前年、震災による避難生活で同居していた両親が元の自宅へと戻り、夫と猫との2人と一匹の生活に戻っていたので、食事の支度などに煩わされることもなく、自分のペースで日常を送れていたことも、不幸中の幸いでした」

とはいえ、更年期症状に対して何もしなかったわけではなかったとか。「とりあえずという感じで『命の母』を服用していました。これのおかげで、気がついたらホットフラッシュがだいぶ軽くなった気がします。そこで治ってきたからと飲むのをやめてしばらくすると、症状が復活するのでまた飲み始める・・・というのを繰り返していましたね。あと、イライラの一番の被害者である夫には、『本当にごめん。だけど更年期のせいだから!許して!』と時折伝えるようにしていました(笑) それで受け入れてくれていた夫には本当に感謝です」

そんな日々のメンタル症状の解決に向け、一歩踏み出したのは、更年期を自覚してから2年が経った頃。「しなければならないことが特にない、というのも考えものだなと思ったんです。私の場合、カラダの症状よりも無気力や自己肯定感の低さなど、メンタルの方がやられていた気がするので、思い切って新しいことを始めてみようと。それが自宅での料理教室でした」。

料理が好きで友人たちに振る舞っていたところ、作り方を教えてほしいと言われることが増え、料理教室の開催を勧められるようになっていたさくらさん。「それまでは両親との同居や猫を飼っていたのもあって躊躇っていましたが、飼い猫の旅立ちをきっかけに始めてみることに。忙しくし過ぎず自分に丁度いいペースでやっているので、カラダの負担にはならず。でも頭は使って適度な刺激はあるというのがいいのか、もういつ消えてしまってもいい というような消極的な思考がなくなったんです」。

実はここ数年、さくらさんが一番メンタル的にキツかったのが春。自然豊かな地に建つ自宅は森に囲まれており、その木々が芽吹く頃になると「また春が来てしまったか…」と落ち込んでいたそう。「庭の手入れが追いつかず、冬の間にやり残してしまった所にまた草木が生い茂り、やり切れなかった自分を責め、落ち込み、自然の勢いに息苦しさを感じていたのです」。

ところが、不思議なことに今年の春はその生き苦しさを感じなかったといいます。「晴れていれば庭に出て手入れをし、草木の芽吹きを愛おしく思い、春の風を心地よく感じている、ある日そんな自分に気づきました。これってもしかして、更年期症状が抜け始めた感じ? と」。

新しい挑戦を通じて、やる気が出ずに焦る日々から脱出しつつある今。更年期症状を体験してみたからこそ、思うことがあるというさくらさん。「更年期の症状は、人によって症状の重さや長さ、種類も千差万別。だからこれっていう解決策を示すのは難しいけど、全員に言えるのは自分をとにかく責めないこと。それからいつか必ずトンネルを抜ける日が来ること。また、辛い時は一人で考え込まずに人に助けを求めること。それに尽きると思います」。

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