「人前で泣いたことなんてなかったのに…」長く暗い、更年期のトンネルの中で〈体験談連載〉
更年期の症状は人それぞれ。自分に合う対処方法や治療を求めて、多くの人が試行錯誤しています。今回は、更年期を無事脱しつつある希望の星、ショップ&カフェの経営者・佐藤瑛子さん(仮名)にインタビュー。前編では更年期の始まりから、生活に支障が出るほどだったという、主な症状についてもうかがいました。
更年期のサインは軽めのホットフラッシュ
子供の頃からの夢を叶え、現在フラワーショップとカフェを経営する瑛子さん。更年期症状らしきものを初めて感じたのは46歳、極めて軽いホットフラッシュでした。「更年期症状が重かった母親からその苦労を聞いていたので、私は症状も大したことないし、更年期は軽めかも!?と最初は楽観視していました」。
ところが、ふと気づけばイライラや首の痛み、倦怠感で動けないといった、心身の不調が次々と襲いかかるように。「急に症状が出てきたような気がしたものの、思い返せばこの時期は仕事に加えて家族の入院や愛犬の介護と死なども重なり、心身ともに忙しさがマックスでした。そのせいで、最初は自分の症状に気付いていなかっただけかもしれません」。加えて家にいる時に理由もなく涙が出たり、頭の回転や体力の衰えを感じることもしょっちゅう。実は既に、更年期のサインは次々と現れていたのでした。
大人になって初めて人前で泣いてしまう
そうこうしながらも、外に出ると仕事もあってなんとか普通に過ごしていたのですが、ある日そんな更年期症状のひとつが、外出先で爆発してしまいます。「当時、仕事の他に商工会議所での活動にも参加していたのですが、そのミーティングの際にみんなの前で泣いてしまったんです。やるべきことがあるのに、なんだか頭がうまく回らなくてできない、みたいな状況になった時に気づいたら涙が出ていたのですが、人前で泣いたことなんてなかったので、これには自分でもびっくりしました」。
ミーティングに参加していたのは、彼女以外ほぼ男性。しかも普段テキパキと元気な姿の彼女しか見たことのない周りの人は、なぜこの人は突然泣き出したんだろうと思ったのか、ポカーンとした表情に。「それを見たら余計焦ってしまって、これは別に泣きたくて泣いてるわけではなく、勝手に出てくるんです、すみません!! 更年期の始まりなんです! とか言ってしまって、それを聞いてまた周りがシーン・・・みたいな。じゃあしょうがないね、とはならずに、なんか腫れ物に触るような雰囲気になってしまったんです」。結果、気まずさに耐えかねて、それ以来ミーティングには参加しなくなりました。
続かなかった漢方とプラセンタ注射
そんな瑛子さんですが、更年期症状に対する治療を何もしなかったわけではありません。実は生理痛や子宮内膜症などで以前から婦人科には通っていたため、更年期症状に関しても相談していました。「先生に更年期かもと伝えたら、漢方を出してくれたんです。でもお恥ずかしい話、毎日飲み続けるというのがめんどくさくて。当然、効果はなかったわけですが、先生にそれを伝えたら次はプラセンタ注射を勧められました」。こちらは一週間に1度の注射で済むので漢方よりは続けられたそう。「とはいえ、効果を実感できないうちに、ちょうどコロナのワクチン接種が始まったことで、プラセンタもやめてしまったんです。短期間に注射ばっかりするのもどうなんだろう?とか考えてしまって・・・」。
押し寄せる自己否定感
どんなに更年期症状がキツくても、仕事だけは頑張っていた瑛子さんですが、それでも心身の不調からできないこともあって、家にいる時間が増えたのもこの頃。その様子を見た彼女の夫は、本当に辛かったら仕事辞めてもいいよと声をかけてくれました。「普通に考えたら嬉しい言葉だと思うのですが、私は逆に自分の経済力なんて大したことないんだなとか、夫がいないと生きていけないんだ・・・という方向に気持ちが向いてしまったんです」。この負の感情からなかなか抜け出せなくなってしまい、最終的には自分なんて生きている意味がないのでは? という強い自己否定感に苛まれるようになってしまいます。
そこから数年。「明らかに今、更年期を抜けつつある感じがあります」と笑顔で語る瑛子さん。そのきっかけとなったのは、人生の中心でもあった仕事を整理したことだったのだとか。心身ともに疲弊していた更年期から徐々に脱出できた、その具体的な経緯は後編で詳しくお伝えします。
AUTHOR
山田メノポ
更年期歴5年のアラフィフライター。出版社勤務を経て、ファッションやライフスタイル誌の編集やライティングなど、フリーランスとして活動。本業の傍ら、更年期症状という同じ悩みを持つ人に、リアルな声と情報をお届けするべく奮闘中。趣味はネットでセレブのゴシップと発言小町を読み耽ること。
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