「ひとりで食べるってこんなに自由なんだ」計画性ゼロの40代上京で見つけた“私の居場所”【経験談】

『45歳(独身)、どんな感じ?』(日本文芸社)より
『45歳(独身)、どんな感じ?』(日本文芸社)より

独身=寂しい、孤独といったイメージを持たれがちですが、本当に一人で暮らすことは楽しくないのでしょうか?イラストレーター・マンガ家の森下えみこさんも独身。森下さんの暮らしを描いた『45歳(独身)、どんな感じ?』(日本文芸社)では、マイペースに、ほどほどに人とのつながりもありながら、穏やかな生活の様子がうかがえます。本書に関連し、一人で暮らすこと・加齢による変化・心身を整えることを軸にお話を伺いました。

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「一般的ではない生活」が自分になじんでいる

——「一般的ではないいまが一番自分になじんでる気がする」と書かれていますが、過去の環境や状況のどういった部分が「なじんでいない」と感じていたのでしょうか?

周りが普通に結婚して子どもを産んで家を建てて……というなか、周りからも「結婚しないの?」「ひとりで寂しくない?」など色々と言われていたので、居心地悪く感じていました。

——40歳で上京されたのはどういった理由からだったのでしょうか?

トレンディドラマの影響で、高校生の頃から東京に憧れていました。東京勤務の会社に就職したはずが、地元配属になりタイミングを逃してしまって、「もう東京に住むのは無理かな」と思っていたんです。

ところが、イラストレーターになってから東京に行くことが多くなって「なんか住めるかも」と思って、流れに乗る感じで引っ越しました。計画性はゼロです。

「更年期は終わりがありますから」

——ある1日の流れを教えていただけますか?

起きて、公園を歩いたり体を動かして、家に帰り、適当に食べ、寝るまで仕事をしたり本を読んだり仕事したりします。更年期に入ってからは体調が悪く、1日寝込んでる日もあります。

——本のタイトルには「45歳」とあって、今は50歳になったとのことですが、中年女性が一人で暮らす中で不安に感じることはありますか?どんな対策をとっていますか?

具体的な不安を知らないまま不安でいても仕方がないので、まずは詳しく調べるようにしています。でも50代ともなると、不安になるのも慣れて大体パターンがわかるので、「なんかまぁいいか」となることも多くなりました。

——更年期症状に関する描写もありましたが、大変だった症状はどんなものでしょうか?どんな対策をとりましたか?

描く仕事なのに気持ちが沈んで鬱っぽくなってしまって、頭が動かなくて仕事ができないのが困りました。特に45歳以降は寝込みがちで、横になって起きて、横になって起きての繰り返しでした。

薬剤師さんに「更年期は終わりがありますから」と励ましてもらい、少し気がラクになりました。

——現在の日々の楽しみは、どんなことでしょうか?40代で新しく好きなものができたことで、どんな変化がありましたか?よかったことはありますか?

40歳で東京に引っ越してきて、住んでみたかった街に住んだので、街を歩いてるだけで楽しいということを知りました。井の頭公園を歩いたり神社に行って「頑張るぞ」と祈願したり、東京タワーに登って夜景を見たり……気分転換になる場所がたくさん思い浮かぶのが楽しいです。

——本の中では、40代で宝塚歌劇に出会ったことも描かれています。

宝塚はチケットがなくても、配信や過去の舞台映像など見たり、好きなジェンヌさん(演者)を見つけたら名前を覚えたり、過去に演じた役や好きなものなど色々と調べたり、観劇のために体調を整えたりと、よい影響が多いです。

「ひとりで食べるってこんなに自由なんだ」

——ひとりでご飯を食べることを寂しいと思ったことがあまりないと描かれています。「一人でいること」は寂しいと見られがちですが、森下さんはいつから一人でいるのが好きだと感じるようになりましたか?

実家がわりとピリピリしていたので、子どもの頃から夕食など祖父母含めてみんなで食べるときも、いつも怒鳴られないよう怒られないようにビクビクしていました。

なのでひとり暮らしを始めて、初めて自分の部屋で冷凍食品のピラフを食べたとき「ひとりで食べるってこんなに自由なんだ~」と感動しました。人と楽しく食べるのも好きですが、緊張して上の空になるので、ひとりで食べるのも好きです。

——あるお仕事の打ち合わせの描写で、本のタイトル案に「がけっぷち」という言葉がたくさん使われていました。「がけっぷち」という言葉について、どんな感覚でしたか?現在、ご自身の中で「がけっぷち」という感覚はありますか?

30代独身の『独りでできるもん』を描いたときによく「30代独身がけっぷち」と書かれたりしてましたが、「独身だからがけっぷちだよね」と普通に思っていました。40代になったらもう崖から落ちて、落ちた先に家を建ててお茶飲んでいるイメージです。

——色々な場面で家族がいることを前提としている仕組みはまだ多いですが、一人で歳を重ねていくにあたって、どんなことを備えていますか?

何かあったときの食料や貯蓄は20代の頃からしています。あとコロナが大流行していたときに友達と「もし感染したら毎日生存確認しよう」みたいなことを話したりしました。

完璧な老後は無理だと思うので、なるべく迷惑かけないようにしつつ……無理なことは諦めます。

『45歳(独身)、どんな感じ?』(日本文芸社)
『45歳(独身)、どんな感じ?』(日本文芸社)

【プロフィール】
森下えみこ(もりした えみこ)

イラストレーター、マンガ家。静岡県生まれ。コミックエッセイのほか、書籍や広告、雑誌などのイラスト、マンガを手がけている。主な著書に『40歳になったことだし』(幻冬舎)、『今日も朝からたまご焼き』、『独りでできるもん』シリーズ(共にKADOKAWA/メディアファクトリー)、『キャベツのせん切り、できますか?』(ナツメ社)、『あしたの、のぞみ』『えみこ開運中!』(共に日本文芸社)など多数。

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