過去の嫌な記憶を急に思い出す「フラッシュバック」とは?臨床心理士が解説

 過去の嫌な記憶を急に思い出す「フラッシュバック」とは?臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2025-05-06

「ふとした瞬間に過去の嫌な記憶がよみがえってしまう」「忘れたいのに何度も思い出してしまって苦しい」と困っていませんか。それはフラッシュバックと呼ばれる症状かもしれません。今回はフラッシュバックそのものの解説に加え、フラッシュバックの対処法もまとめました。

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フラッシュバックとは?

「フラッシュバック」という言葉を耳にしたことのある人は多いはず。しかし、フラッシュバックがどういうものかは案外知られていません。ここでは、フラッシュバックとは何かを解説します。

トラウマの再体験

フラッシュバックは、「トラウマの再体験」により生じます。

トラウマとは、簡単に言えば「心の傷」のこと。

・事件や事故に巻き込まれた

・災害を体験した/災害のニュースを見聞きした

・いじめや虐待を受けた

などの非日常的な出来事によるものがイメージされやすいでしょう。

しかし、もっと日常的な出来事もトラウマになりえます。

たとえば、

・上司から強く叱責された

・友達から無視された

・みんなの前で失敗した

といった体験などです。

上記のようにトラウマとして植え付けられた記憶が、自分の意思とは関係なく突然に思い出され、しかもその内容がまるで今まさに起きているかのように生々しく展開されるのが、フラッシュバックです。

フラッシュバック
photo by Adobe Stock

フラッシュバックはなぜ起きる?

トラウマ体験をすると、それ以降トラウマ体験と似た状況(危険のサイン)を感じると、脳がフラッシュバックを引き起こすようになります。

たとえば、「ちょっと来なさい」という言葉で呼び出され、そのあと上司から強く叱責されたトラウマ体験を持つ人は、別の人から「ちょっと来なさい」と言われた瞬間、上司とのやり取りをありありと思い出し、苦しくなってしまうかもしれません。

もちろん、脳は私たちを苦しめたくてフラッシュバックを起こしているのではありません。いち早く危険の可能性を知らせ、対処できるよう促しているのです。

しかし、本当は危険ではないのに、脳が「危険かも!」と判断して、フラッシュバックを何度も起こすと、私たちの心と身体はそのたびに過去のトラウマ体験に引き戻され、苦しくなってしまいます。

フラッシュバックの対処法

フラッシュバックの対処法は、

・「今ここ」の安全を感じる

・リラックスする

の2つのアプローチが大事です。

「今ここ」の安全を感じるアプローチ

■「今ここ」の身体感覚に意識を向ける

グラウンディング

座って両足で地面をゆっくり踏みしめます。今の感覚を取り戻せるまで、足踏みをしたり、手を握ったり開いたりを繰り返します。

・54321法

54321法は次の手順で実施します。

目に見えるものを5つ確認

→耳で聞こえるものを5つ確認

→肌で感じるものを5つ確認

このセットが終わったら、

目に見えるものを4つ確認

→耳で聞こえるものを4つ確認

→肌で感じるものを4つ確認

このあとも見えるもの、聞こえるもの、感じるものを3つ、2つ、1つ…と確認していきます。

「1つ」まで終わったら、再び5つから始めます。

■アファメーション(宣言)で「今ここ」に意識を戻す

「私は今ここにいる」

「それは終わった、今の私は安全だ」

「それは過去のことだ」

「これはフラッシュバック」

など、言葉にして宣言することで、意識を「今ここ」に戻していきます。

リラックスする

■深呼吸をする

深い腹式呼吸は、心と身体をリラックス状態へと導きます。

ここでは、4-7-8呼吸法をご紹介します。

【1】4秒かけて息を吸い、お腹がふくらむのを感じる

【2】7秒間息を止める

【3】8秒かけて息を吐き、お腹がへこむのを感じる

この【1】から【3】の手順を5〜10分程度繰り返します。

■安心できるグッズを持っておく

安全・安心の感覚とつながれるものを使います。これは、少しホッとしたり、元気になったりするようなものです。

たとえば、

・好きなぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる

・好きなお菓子を食べる

・大きなブランケットにくるまる

・思い出の写真を眺める

・安心安全な人と一緒にいる

・安心安全な場所を思い浮かべる

などの方法があります。

さいごに

ここまでフラッシュバックの対処法について解説しました。しかし、フラッシュバックが起きたときに、いきなり対処法を試そうとしてもうまくいかない可能性があります。

まずは、フラッシュバックに見舞われていないときに、自分にしっくり来る方法をいくつか練習し、使いこなせるようになっておきましょう。

参考文献

・白川美也子(2016)赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア 自分を愛する力を取り戻す[心理教育]の本 アスク・ヒューマン・ケア

・服部信子(2024)今すぐできる心の守り方 フラッシュバック・ケア KADOKAWA

武蔵野大学心理臨床センター「こころの傷つき体験をしたあなたのためのワークブック」

日本心理臨床学会(2011)こころほっとニュースNo.2

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