一緒にいると疲れる…気力を吸い取る人「エナジーバンパイア」の対処法【メンタルケアの専門家が解説】

 一緒にいると疲れる…気力を吸い取る人「エナジーバンパイア」の対処法【メンタルケアの専門家が解説】
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友人や職場に一人はいる、エナジーバンパイアと呼ばれる人。我慢してつき合い続けると、人間関係で多大なストレスを抱えることに。エナジーバンパイアの性格を理解し、上手くつき合う方法をメンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんがアドバイスします。

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もしかして自分も!? 自覚しにくいエナジーバンパイア

―最近よく耳にする「エナジーバンパイア」とは、どんな人ですか?

「エナジーバンパイアは心理学の用語ではありませんが、吸血鬼のように他者のエネルギーを吸い取る人を表す言葉として使われています。大きくわけると『自己中心的な人』と『依存的な人』の2タイプがあると考えられます。一緒にいる相手は自分の世界を浸食されて感情やペースが乱れてしまい、なんか疲れるという感覚に陥っていきます。

次のチェックテストで、8項目中4つ以上あてはまる人は要注意。苦手と感じていたあの人がエナジーバンパイアだったり、自覚していなかったあなた自身もそうであるかもしれません。早速チェックしてみましょう」

「エナジーバンパイア」チェックテスト

〈自己中心型〉

自己中心
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・自分の話ばかりして人の話を聞かない

・人の気持ちに共感できない

・自分の利益のために人を利用する

・常に自分の都合で動き、人の都合に配慮しない

〈依存型〉

依存
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・人の自由を奪い、束縛する

・人の世話を焼きすぎて、相手の自立を阻害する

・いつもネガティブな雰囲気を人に押しつける

・自分で決断せず、人の意見ばかり求める

人を疲れさせる性格を形作っているものとは

―自己中心的、依存的な性格は、どうして生まれるのでしょうか?

「性格が形成される背景は人それぞれなので一概には言えませんが、生きてきた環境、あるいは今いる環境に影響を受けていることもあります。たとえば、周囲の人に甘やかされていた、グループ内で女王様気分でやってきたなど、環境的にわがままが許される立場が続いてきた人は、人の気持ちを思いやれず自己中心的になりがち。また、友達の輪に馴染めないことが多かった人は、一人でいることに不安を抱え続けやすい。そうなると自分が信頼した人を、この人なら私の気持ちを楽にしてくれると強く思い込み、関係に依存しやすくなります」

―しかし、一人でいるのが不安という気持ちは、依存的でない人も抱くことのある感情ですよね。

「確かにそうですが、孤独が嫌で人とつながりたい気持ちと、パーソナルな時間や空間を持ちたいという、両方の気持ちを人は持っています。適度に一人を楽しみ、適度に人ともつながれる人は、バランスが取れていて人間関係のストレスを溜め込みにくいもの。しかしずっと孤独な人は、人間関係に飢餓感を感じやすく、依存心が生まれやすいと言えます」

―そう考えると、エナジーバンパイアは心に重りを抱えている人と言えますね。

「自己中心的な人も、依存的な人も、根底にあるのは『不安』だと思います。それ以外の人にとっても、今の時代は悲惨な事件や事故、感染症や自然災害など予測不可能なことが起こり、時代のスピードも速すぎてついていけず不安を抱えやすい。なかでも自己中心的な人、依存的な人は特に不安が強く、その気持ちを自分でどうにかするのではなく、他者に満たしてほしいと思うから相手のエネルギーを奪うことになります。

自己中心的な人が抱える不安を煽っているのは、称賛欲求です。きれいだね、すごいねと人に褒められないと自分に価値がないように思えて不安になり、いつも称賛してくれる人を求めてしまう。依存的な人の場合、一人では何も決められないことへの不安や、一人で行動することの恐怖感が強すぎて安心できない。だから、心を許せる人と常につながっていないと精神的に不安定になる傾向があります」

自分を守り、相手を怒らせないためには「線引き」が大切

―身近なエナジーバンパイアの存在によって、精神が疲れ果ててしまった場合、どのように距離を取るのが適切でしょうか?

「バウンダリーという概念を知っていると、つき合うのが楽になります。バウンダリーは境界線という意味で、壁ではなく柵や紐で作った縄張りのようなもの。一緒にいると疲れるけど安易に関係を切れない間柄の場合、壁を作るとバリアができて、相手をシャットダウンしてしまうので反発を生むことに。自分と相手の領域を守れて、なおかつ相手が見えるから困ったとき手を差し伸べられるのがバウンダリーの良いところ。バウンダリーにはさまざまな種類があり、ここでは友達、職場の人、家族の境界線の引き方を見ていきましょう」

線を引く
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友達の場合

つき合う時間を限定し、「時間の境界線」を引くことが大事。たとえば、12時にランチの約束をしたら「この後、予定があるので14時まで一緒に過ごそうね」と2時間で帰ることを前提に会う。また、22時以降は相手からのLINEは見ないなど、時間の線引きを明確にしておきます。

職場の人の場合

職場では「責任の境界線」をしっかり引くことを意識します。エナジーバンパイアな人は、気分本位で行動する傾向が強いので、「ここまでは自分でやってください」「やってみてわからない点は相談してください」と伝え、周りがフォローしすぎないように心がけて。

家族の場合

一緒に住んでいると曖昧になりやすい、「空間の境界線」を引くのがポイント。たとえ小さくても、家族それぞれが一人で過ごせる空間を持っておくと距離が取りやすくなります。

―職場や家族は難しいけど、つき合いを終わらせていい相手もいるはず。相手を怒らせず、つきまとわれず縁を切るには?

「その場合、相手を攻撃すると、反撃されやすくなるので要注意。人間関係は接触が増えると好意を持たれやすくなるため、共感しあえるようなことを繰り返すとおつき合いの温度が上がっていきます。その逆を行き、LINEを即レスしない、笑顔ではなく真顔で接するなどして、相手から元気がない、つまらないと思わせておつき合いの温度を下げるのが効果的。急冷だと相手を怒らせかねないので、徐々に下げていくとエナジーバンパイアと上手にさよならできますよ」

―では、エナジーバンパイアを相手に、トラブルなく「断る」秘訣とは?

「何でも受け入れるのではなく、困ったときは断るのが大事。受け入れるだけの人は甘く見られやすく、断らないとエナジーバンパイアの行動はエスカレートしてしまいます。人間関係は合わせ鏡のようなものなので、受け手の対応は非常に重要。適切なアプローチはエナジーバンパイアに気づきを与え、本人が自力で変わろうとする目覚めにもつながります。

断るときのコツは、自分と相手の両方の気持ちを大事にしながら、自分の意見をしっかり伝える、アサーションというコミュニケーションスキルが有効です。たとえば、エナジーバンパイアな人にからかわれ、それに対して攻撃的な言動で返すと、相手は防御のためにさらなるからかいを仕掛けてきます。なので、『からかいたくなる理由があるのだろう。でも、私はあなたの言動ですごく傷ついている』と、相手の気持ちを受け止めつつ、自分の考えを伝えます。『あなたは良くない』と相手を主語にすると聞き耳を持たないので、『私は、こう思う』と自分を主語にして思いを伝えるのがポイントです。

ただし、アサーションで意見を数回伝える程度では、相手は自分が迷惑をかけていることに気づかないかもしれません。アサーティブに接してもしつこくされるときは、相手の話を聞き流す、LINEを既読にしないなど、相手を突き放さざるを得ない場面もあるでしょう。そうは言っても、最初から突き放すと人間関係に亀裂が入ってしまうので、段階を踏んで実践してみましょう」

衝突を生む性格は改善できる。「気づき」こそがその一歩

―エナジーバンパイアの多くが無自覚だからこそ、周囲のエネルギーを奪ってしまっていると思うので、「自分はエナジーバンパイアかもしれない」と考えてみることも必要ですよね。先ほどのチェックリストなどで、もしかしたら…と思った場合、どんなことに気を付けて周囲と接するようにしたらよいでしょうか?

「人の性格は意識次第で変えることができるので、本人が自分で努力をすること、または第三者が気づきを与えることで、改善を試みるとよいと思います。本人の努力で変わるには、まず自分の言動への『気づき』が重要。『もしや、私って人のエネルギーを奪ってる?』と気づくだけで大きく前進できます。次に、自己中心的、依存的な言動をとりそうになったら『セーブ』してみる。自分のことだけ考えて相手の自由を奪い、苦しめていたかもしれないと思って立ち止まってみましょう。セーブできたら、さらに次の3つの行動を意識します」

①自分の不安を人に甘えることで満たそうとしない

不安をすぐに放出せずに一旦、自分の気持ちをお腹に抱えて消化する時間を持ちましょう。まずは消化期間を1日設けて、徐々に気持ちが整理されて、じわじわと自然に不安が消化されるのを感じてください。そして、消化しきれず残った困り事を人に相談します。その際、相談相手に感謝の気持ちを持つことも忘れないで。気持ちをサポートしてもらう相手に手間をかけていると自覚し、ありがたいという気持ちが芽生えると謙虚になり、エナジーバンパイア度が下がっていきます。

②自分の支えになるものを持つ

資格を取る、趣味に取り組む、自然の多い場所でゆったり過ごすなど、誰かに頼らずにできるものであることがポイント。買い物などの消費活動、ゲーム、アルコール、甘い物といった依存しやすいものはNG。

③自分で自分を満たせるようになる

②のような楽しみを持ち、一人でいても充実感を味わえる時間を増やす。

「他者と程よい距離感が保てると、誰といても相手の気持ちを害せずに過ごせるようになります。もしかしてエナジーバンパイアになっている?と思う時は、これらを意識して過ごしてみていただきたいです」

●教えてくれたのは・・・大美賀 直子さん
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、「こころと人生と人間関係」のベストバランスを提案するカウンセラー、作家、セミナー講師として活動する。『アメリカ式子育てマジックフレーズ』(KADOKAWA)、『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)などストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 公式HP(mentalcare555.com) 

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取材・文/北林あい

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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