回避依存性とは? 人間関係に苦しさを感じ“逃げたいけれど、誰かに依存してしまう”心理

回避依存性とは? 人間関係に苦しさを感じ“逃げたいけれど、誰かに依存してしまう”心理
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石上友梨
石上友梨
2025-04-29

「人と関わるのは苦しい」「誰かと一緒にいたいのに、すぐに疲れてしまう」——そんな思いを抱えている人は、実は少なくありません。一見、人との距離を保ちたいように見えるけれど、内側では強くつながりを求めている。そんな矛盾した心を抱えるのが「回避依存性」と呼ばれる心理傾向です。

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回避依存性があるAさんの話

20代の女性Aさんの話です。Aさんは学生時代から「人といるのが苦手」と感じていて、社会人になった後はできるだけ一人で過ごすようにしていました。しかし、週末や夜になると急に不安になり、SNSで誰かの反応を待ったり、特定の友人に連絡をし続けたりします。会話の中で否定的な反応があると、すぐに傷ついてしまい、その人と距離を取ろうとする一方で、「嫌われたくない」「見捨てられたくない」という気持ちも強くまた連絡を取ってしまいます。

このように、回避依存性を持つ人は、対人関係において“距離を取りたい”という欲求と“つながっていたい”という欲求の間で揺れ動くことが特徴です。

回避依存性とは

回避依存性とは、病気の名前ではなく性格のような心の傾向のことです。自分に対する評価が非常に低く、人からの批判や拒絶に対して強い恐怖心を持つ傾向があります。周囲の人と深く関わることに不安を感じ、傷つくことを避けようとしますが、その一方で、誰かに必要とされたり、受け入れてもらいたいという強い欲求も存在しています。

このような傾向は、元々生まれ持った気質だけではなく、幼少期の環境とも関係しています。たとえば、人から否定される経験を繰り返すと「自分は価値のない存在だ」といった信念が育まれやすくなります。また、いじめや人間関係のトラウマなど、他人との関わりの中で傷ついた経験が積み重なることで、「人と関わるのは危険だ」という思い込みが形成されやすくなります。しかし、一方で私たちは根源的に人と繋がりたい欲求、集団に所属したい欲求があります。そのため心の中に矛盾した思いを抱えることになります。

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回避依存性による日常の困り事

回避依存性の傾向は日常生活の中でも様々な形で現れます。たとえば、職場で不満があっても自分の意見をうまく言えず、上司や同僚に判断を委ねがちになること。恋愛では、相手に強く依存しながらも、距離が近くなると不安になり、自ら関係を壊してしまうことも。SNSでは過剰に「いいね」やメッセージの反応を気にしてしまうけれど、リアルな場では人と目を合わせるのが苦手……というケースも少なくありません。

回避依存性に気づいたら

もし自分自身にこのような傾向が見られたとき、どうすればいいのでしょうか。まずは、自分の心の傾向や行動パターンに気づくことが大切です。なるべくリアルタイムで「いつものクセが出ている」と気づけるようになりましょう。そして、そんな自分を否定せずに、「クセが出る時もあるね」「それだけ辛いこともあったしね」と受け入れます。矛盾した二つの気持ちがあるのはおかしいことではありません。焦らずに、自分が安心できる関係を一つひとつ丁寧に築いていきましょう。また、必要であればカウンセリングや心理療法など専門的なサポートを受けるのも有効です。

スキーマ療法で回避依存性にアプローチする

スキーマ療法は回避依存性のような深い心の傾向や、長年続いてきた生きづらさに対して有効な心理療法のひとつです。

1. 「スキーマ」を理解する

スキーマは幼少期から形成された深い思い込みや信念のことです。たとえば、回避依存性の人が持ちやすいスキーマには以下のようなものがあります

見捨てられ不安(人の期待に答えないと見放される)
欠陥/恥(自分は価値がない存在だ)
分かってもらえない/愛されない(誰も自分のことを分かってくれない)

こういったスキーマを特定するために、セラピストと一緒に過去の経験を振り返ったり、心理テストを使ったりします。

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2. 「モード」を理解する

スキーマ療法では、ストレスを感じた時の心の状態(=モード)にも注目します。

例えば、以下のようなモードがあるかもしれません。

傷ついた子どもモード:寂しくて不安な気持ちになる
回避モード:人と関わるのを避ける
批判者モード:自分を責め「こんな自分じゃだめだ」と否定する

このように、自分の心の中の登場人物たち(モード)を理解し、それぞれの声や反応を丁寧に観察していきます。

3. スキーマやモードを変えていく

スキーマ療法では、過去の傷ついた記憶に優しくアクセスし、過去に満たされなかった感情(寂しさ、怒り、怖さなど)を今の自分やセラピストが「癒す」イメージワークなどが使われます。

例:幼少期の自分が人に拒絶された記憶を思い出し、その場に「健康な大人の自分」が登場して、子ども時代の自分を抱きしめるイメージをする。

4. 新しい行動の練習

自分のスキーマやモードに気づけるようになってきたら、少しずつ「今までとは違う行動」を試していきます。

たとえば:

言いたいことを少しずつ人に伝えてみる
他人に頼らず、自分で決める練習をする
頼りすぎてしまう関係を、少しずつ対等な関係にしていく

などがあります。

回避依存性は、決して「弱さ」や「わがまま」ではありません。それは、これまでの人生で身につけた“自分を守るための手段”だったのです。だからこそ、自分を責めるのではなく、少しずつ心のクセを見つめ直し、必要に応じて変えいきましょう。

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