がんばることに疲れていませんか?完璧主義の心の仕組みと意外な背景|心理師が解説
「まだまだ頑張らなきゃ」「こんな出来じゃダメだよね」そうつぶやきながら、今日も夜遅くまで仕事や家事に向かっている――そんな自分に、心当たりはありませんか? 周囲からは「いつもきちんとしてるね」「真面目だね、えらいね」と言われるけれど、本当はいつも心が張りつめていて、疲れてしまっている。もしかしたら、それは「完璧主義」の影響かもしれません。
完璧主義とは
完璧主義とは、自分自身や周囲に過度に厳しい目標を設定し、「常に完璧でなければいけない」という思いに縛られてしまう心の傾向です。「ミスしたらどうしよう」「ちゃんとしていない自分には価値がない」――そんな思いから、終わりのない努力を続けてしまいます。
完璧主義の先延ばし癖
完璧主義には「先延ばし癖」があることも多いです。
1. 「完璧にやらなきゃ」のプレッシャー
完璧主義の人は、「中途半端な出来ではダメ」「失敗は許されない」と無意識に思い込みやすいです。その結果、“最初の一歩”が異常に重たくなります。例えば、レポートを書こうと思ってもうまく書ける自信がないから後回しにしたり、掃除をしようとしても完璧にやる時間がないから手をつけなかったりします。
2. 失敗を回避したい心の防衛
「もしやってみてうまくいかなかったら、自分には価値がないと証明されてしまう」という恐れから、無意識に「やらないことで自分を守る」という行動になります。
3. 取りかかれない自分に、さらに自己嫌悪
先延ばしすると、「ダメな自分だ」「やっぱり私は意志が弱い」と責めてしまい、さらに動けなくなる…という悪循環に。
完璧主義のAさんの話
会社員のAさん(30代女性)は、同僚からの信頼も厚く、いつも仕事に真剣に取り組みます。しかし、Aさんの内側では「もっと丁寧にまとめられるはず」「納得いくまでやらなきゃ」という声が止まらず、資料作成やメール文面を何度も見直しては深夜に帰宅することが日常になっていました。
せっかくの休日も疲れで寝込んでしまい、楽しみにしていた友人との約束もキャンセルすることが増えてきます。「こんなんじゃダメだ…私はもっとちゃんとできる人間のはず」と、自分を責める日々。周囲から見ると“しっかり者のAさん”ですが、本人はいつも「まだまだ足りない」と感じているのです。
なぜ私たちはこんなにも“完璧”を求めてしまうのか
完璧主義には、育ってきた環境や、これまでの経験が深く関わっていることがあります。たとえば、子どもの頃「100点じゃないと褒めてもらえなかった」「失敗すると怒られた」という経験が繰り返されると、「私は“ちゃんとできているとき”だけ愛されるんだ」という思い込みが心の奥に根づいてしまうことがあります。また、子供の頃に優等生で周囲から「できる人」と期待されることで、ますます失敗が怖くなり、自分の中で理想がどんどん高くなっていくこともあります。
完璧主義は、一見すると「真面目」「努力家」として肯定的に見えるかもしれません。ですが、心の内側では、「ミスしたら終わり」「ちゃんとやらないと見捨てられる」といった不安に支配され、自分にも他人にも優しくなれなくなっていくことがあります。実際、完璧主義が強い人は、自己評価が低くなりやすく、「できたこと」よりも「できなかったこと」にばかり目が向いてしまいます。その結果、慢性的な不安、疲労感、人間関係の緊張など、心と体にじわじわと負担がかかっていきます。
完璧主義は悪いことではない
ここまで読んで、「もしかして、私もそうかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。完璧主義は決して「悪い性格」ではありません。それは、「がんばってきた証」であり、「大切にされたかった気持ちの裏返し」でもあります。ただ、もし今、「しんどい」「息が詰まる」と感じているのなら、少しだけ、心を緩めるヒントを知ってもいいのかもしれません。完璧でなくても、あなたの価値は変わりません。そして、あなたの「できたこと」に目を向ける日が、きっと少しずつ増えていきます。
次回は、そんな完璧主義の心とやさしく付き合う方法についてお届けします。
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