45歳で「心が折れる人」と「もう一花咲かせる人」の決定的な違いとは?臨床心理士解説

45歳で「心が折れる人」と「もう一花咲かせる人」の決定的な違いとは?臨床心理士解説
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昇進の壁、体力の衰え、親の介護——40代は人生の「中間決算」とも言える時期です。ここで心が折れる人と、新たな可能性を拓く人。その違いは才能ではなく「レジリエンス(逆境力)」にあると臨床心理士は指摘します。科学的に証明された、今日から始められる心の筋トレ法をお伝えします。

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なぜ45歳前後で人は心が折れやすくなるのか

「もう若くない」「今さら新しいことなんて」——40代半ばになると、こんな言葉が心に浮かぶ瞬間が増えていきます。実はこの現象、単なる気の持ちようではなく、脳科学的・心理学的に説明できる現象なのです。

臨床心理士によれば、45歳前後は「中年期の危機(ミッドライフクライシス)」とも呼ばれる時期。この年代では、脳の前頭前野(計画・判断を司る部位)の可塑性が若い頃より低下し始める一方で、扁桃体(不安や恐怖を処理する部位)の反応性は維持されます。つまり、新しいチャレンジへの意欲は下がりやすいのに、失敗への恐れは以前と変わらず強いという、アンバランスな状態になりやすいのです。

さらに、心理学では「自己複雑性(Self-Complexity)」という概念があります。若い頃は「仕事」「趣味」「友人関係」など複数のアイデンティティを持っていますが、40代になると多くの人が「仕事」や「親としての役割」に偏りがち。一つの領域でつまずくと、自己全体が崩れたように感じてしまうのです。

「45歳で折れる人と花開く人の違いは、生まれ持った強さではありません。レジリエンスという“後天的に鍛えられる筋肉”を持っているかどうかなんです」と臨床心理士は語ります。

臨床心理士が教える「レジリエンスを鍛える5つの習慣」

レジリエンス(逆境力)とは、困難に直面した時に回復し、成長する力のこと。ポジティブ心理学や神経科学の研究により、この力は日々の習慣で確実に強化できることが分かっています。今日から始められる5つの実践法をご紹介します。

習慣1:「3行ジャーナル」で認知の歪みをリセットする

毎晩寝る前に、以下の3つを書き出す習慣を作りましょう。

  1. 今日うまくいったこと(どんな小さなことでも)
  2. 自分が貢献できたこと
  3. 明日への小さな期待

これは認知行動療法(CBT)における「認知再構成法」を応用したものです。人間の脳は、ネガティブな出来事を5倍強く記憶する「ネガティビティ・バイアス」を持っています。意識的にポジティブな事実を記録することで、このバイアスを修正し、脳の神経回路を書き換えていくのです。

ペンシルベニア大学のセリグマン博士の研究では、この習慣を3週間続けた被験者の幸福度が有意に上昇し、その効果は6ヶ月後も持続したと報告されています。

習慣2:「マイクロ・チャレンジ」で前頭前野を活性化

大きな目標を掲げるのではなく、毎日「ほんの少しだけ新しいこと」に挑戦する習慣(マイクロ・チャレンジ)を作ります。

  • いつもと違う道で通勤する
  • 初めての料理を一品作る
  • 5分だけ新しいアプリを試してみる

新しい経験は、神経の働きを助けるBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促し、前頭前野を活性化させ、挑戦に必要な計画や判断をする機能をサポートします。そして「新しいことにチャレンジできた」という体験は、脳に「まだ成長できる」というシグナルを送り、「自分もまだまだできる」という自己効力感を育みます。これが困難から立ち直るレジリエンスの土台となるのです。

習慣3:「セルフ・ディスタンシング」で感情を客観視する

逆境に直面した時、感情に飲み込まれそうになったら、自分を第三者視点で観察する「セルフ・ディスタンシング」に取り組んでみましょう。

  • 「太郎は今、上司に叱られて落ち込んでいる」
  • 「花子は、プレゼンの失敗を引きずっているな」

一人称ではなく三人称で自分を語ることで、扁桃体の過活動が抑制され、前頭前野による冷静な判断が可能になります。このようにネガティブな思考や感情から距離を取る技法は「認知的脱フュージョン」とも呼ばれます。

習慣4:「ソーシャル・ポートフォリオ」を多様化する

仕事以外の人間関係を意識的に増やしていきます。

  • 月1回、趣味のコミュニティに参加
  • オンラインの学習グループに入る
  • 地域のボランティアに関わる

自己複雑性を高めることで、一つの領域での失敗が自己全体を揺るがさなくなります。長期追跡研究でも、人生の満足度を最も左右するのは良質な人間関係であることが示されています。

習慣5:「セルフ・コンパッション」を実践する

失敗した時、自分を責めるのではなく、親友に接するように自分に優しく語りかける「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」もおすすめの方法です。

  • 「誰でも失敗する。完璧な人間なんていない」
  • 「今はつらいけど、これも成長の一部だ」

セルフ・コンパッションが高い人ほど、失敗後の回復が早く、新しい挑戦への意欲も維持されることが分かっています。一方、自己批判は長期的には心理的疲弊とバーンアウトを招きます。

レジリエンス習慣がもたらす脳と心の変化

1. ストレス反応の柔軟化

ストレスに対して過剰に反応するのではなく、適度に反応し、素早く回復するパターンへと変化していきます。

2. 脳や神経系の機能の向上

前頭前野と海馬(記憶を司る部位)の神経結合が強化され、45歳を過ぎても学習し適応する力が維持されます。

3. 人生の意味づけの再構築

逆境を意味のある経験として再解釈する力が育まれ、より深い人生の充実感につながります。

なお、レジリエンスは一人で耐える力ではありません。助けを求めること、休むことも、レジリエンスの重要な要素です。

45歳からの人生は、まだ半分以上残っている

人生100年時代。45歳はまだ折り返し地点にも達していません。ここから「もう一花咲かせる」かどうかは、日々の小さな習慣の積み重ねにかかっています。

45歳のあなたは、経験という最高の武器を手にしています。あとは、それを活かすレジリエンスという「筋肉」を鍛えるだけ。今日から始めましょう。あなたの人生の、最も美しい章は、これから始まるのです。

参考文献・出典

  • Seligman, M. E. P. (2011). Flourish. Free Press.
  • Kross, E., et al. (2014).Self-talk as a regulatory mechanism: how you do it matters, 106(2), 304-324.
  • Neff, K. D. (2003). Self-Compassion: An Alternative Conceptualization of a Healthy Attitude Toward Oneself. Self and Identity, 2(2), 85-101.
  • Linville, P. W. (1987). Linville, P. W. (1987). Self-complexity as a cognitive buffer against stress-related illness and depression. Journal of Personality and Social Psychology, 52(4), 663-676.
  • Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2004). Target Article: "Posttraumatic Growth: Conceptual Foundations and Empirical Evidence".Psychological Inquiry, 15(1), 1-18.Waldinger, R. J., & Schulz, M. S. (2010). Psychology and Aging, 25(2), 422-431.
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  • 日本ポジティブサイコロジー医学会 https://jphp.jp/

監修/佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。

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