「なんか疲れる人」になってしまう人の共通点。臨床心理士が教える、知らずに相手のエネルギーを奪っている5つの習慣
「あの人といると疲れる」と思われているかもしれない——そんな不安を抱えていませんか? 実は、悪気なく相手を消耗させてしまう人には共通のパターンがあると臨床心理士は指摘します。自分では気づきにくい「疲れる人」の習慣と、今日から変えられる関わり方をお伝えします。
なぜ「疲れる人」になってしまうのか——その心理的メカニズム
「自分は普通に話しているつもりなのに、なぜか人が離れていく」「相手のためを思って言っているのに、距離を置かれる」——そんな経験はありませんか? 日本の臨床心理の現場では、こうした悩みを抱える相談者は決して少なくありません。
臨床心理士によれば、「疲れる人」の多くは悪意があるわけではなく、むしろ相手を気遣っているつもりなのだと指摘されます。では、なぜ善意が相手を疲弊させてしまうのでしょうか。
心理学的に見ると、人を疲れさせる行動の背景には「不安」や「承認欲求」などが隠れていることが多いとされています。自分が不安だからこそ相手に多くを求め、認められたいからこそ相手の反応を過度に気にする——この無意識のパターンが、相手のエネルギーを奪ってしまうのです。
認知行動療法の視点から見ると、これは「認知の歪み」の一種である「心の読みすぎ」や「べき思考」と関連しています。「相手はこう思っているはず」「こうあるべき」という思い込みが、相手の境界線を侵してしまうのです。
また、脳科学的には、過度なコミュニケーション要求は相手の前頭前野(理性的判断を司る脳の部位)を疲弊させます。前頭前野が処理できる情報量にも限りがあるので、常に気を遣わされる状態は、相手の認知リソースを消耗させてしまうのです。
さらに日本の文化的背景も影響しています。「空気を読む」「相手に合わせる」という文化の中で、「関係性を悪化させたらどうしよう」や「相手が本当は嫌な思いをしていたらどうしよう」といった自身の不安を相手への過剰な配慮や確認という形で表現してしまうケースが多いと、臨床心理士は指摘します。
「疲れる人になってしまうのは、性格の問題ではなく、不安や孤独感という感情の表現方法が適切でないだけな場合もあるのです」と臨床心理士は語ります。
臨床心理士が指摘する「疲れる人」の5つの習慣と改善のヒント
日本の心理臨床の現場で実際に観察される、「疲れる人」に共通する行動パターンと、その改善法をご紹介します。
習慣1:「確認」が多すぎる
【こんな言動】
- 「これで大丈夫?」「怒ってない?」と頻繁に聞く
- LINEの返信が遅いと「何か気に障ること言った?」と追加メッセージを送る
- 会話の後に「さっきの話、どう思った?」と何度も確認する
【なぜ疲れるか】 相手に「常に自分を気にかけ、言葉を選んで対応しなければならない」というプレッシャーを与えます。このような言動は「再保証を求める行動(Reassurance Seeking)」と呼ばれており、不安障害やうつ病、愛着障害の特徴的な行動パターンの一つとされています。
【改善のヒント】 確認したい気持ちが湧いたら、まず深呼吸を3回。「確認せずに別のことをしてみる」というルールを自分に課してみましょう。多くの場合、待てば不安は自然と収まります。これは認知行動療法における「行動実験」の技法です。
習慣2:アドバイスを求めながら否定する
【こんな言動】
- 「どうしたらいい?」と相談を持ちかける
- 相手が提案すると「でも」「だって」と否定する
- 「そうは言っても無理」「あなたにはわからない」と反論する
【なぜ疲れるか】 相手は「助けたい」という善意でエネルギーを使っているのに、それが無駄になる体験をします。これを「イエス・バット法」と呼び、対人関係を疲弊させる典型的なコミュニケーションパターンとされています。
【改善のヒント】 アドバイスを求める前に、本当に求めているのは解決策なのか、それとも共感なのかを自分に問いかけましょう。共感が欲しいなら、「解決策じゃなくて、ただ聞いてほしいんだけど」と最初に伝える。これだけで相手の負担は大きく減ります。
習慣3:「私は/私も」で話を奪う
【こんな言動】
- 相手が体験を話すと、すぐに「私もね」と自分の話に切り替える
- 相手の話が終わる前に「それ私も経験あって」と遮る
- 「私の方がもっと大変だった」と比較する
【なぜ疲れるか】 このような行動を繰り返してしまうと、 相手は「自分の話を聞いてもらえていない」「自分の体験が軽んじられている」と感じ、不信感を抱かせてしまう要因となります。
【改善のヒント】 相手が話している間、心の中で「この人は今、何を感じているだろう?」と問い続ける習慣を作りましょう。自分の体験を話したくなったら、相手の話を最後まで聞いてから「そんなことがあったんだね」「私はこんなふうに思ったよ」など相手の発言に対してリアクションをしたうえで、短く簡潔に自分のことについて伝えるようにしましょう。
習慣4:ネガティブな話題ばかりを持ち込む
【こんな言動】
- 会うたびに愚痴や不満、悪口を延々と語る
- 「疲れた」「しんどい」「最悪」が口癖
- ポジティブな話題を振られても、すぐネガティブな方向に戻す
【なぜ疲れるか】 脳科学的に、ネガティブな感情は伝染しやすいことが分かっています。相手の扁桃体(不安や恐怖を処理する脳の部位)も反応しやすくなり、会話後も疲労感が残ります。こうしたことの積み重ねがストレスとなり、疲れへと繋がってしまうのです。
【改善のヒント】 愚痴を言いたい時は、最初に「今日は愚痴を聞いてもらってもいい?15分だけ」と時間を区切って許可を取る。そして必ず、最後に「聞いてくれてありがとう。おかげで楽になった」と感謝を伝える。境界線を明確にすることで、相手の心理的負担が大きく軽減されます。
習慣5:相手の時間と都合を考えない連絡
【こんな言動】
- 深夜や早朝に長文LINEを送る
- 既読無視を責める
- 「今、大丈夫?」と聞かずに一方的に話し始める
【なぜ疲れるか】 心理学における「境界線(バウンダリー)の侵害」の典型例です。相手は「自分の時間をコントロールできない」というストレスを感じます。これを「関係性における非対称性」と呼び、対人関係トラブルの主要因の一つとしています。
【改善のヒント】 連絡する前に、「今、相手は何をしている時間帯か?」を想像する習慣をつけましょう。緊急でない限り、「お時間ある時で大丈夫です」と添える。相手の時間を尊重することは、相手の存在を尊重することです。
「疲れる人」から「心地よい人」への変化
これらの習慣を意識し始めると、どのような変化が起きるのでしょうか。
1. 人間関係の質が向上する
臨床心理士の報告では、これらの行動を改善した相談者の多くが、「友人からの誘いが増えた」「職場の雰囲気が良くなった」と語ります。相手が安心して関わる関係性が築けるようになるのです。
2. 自分自身も楽になる
意外に思われるかもしれませんが、相手への過度な気遣いをやめることで、自分の不安も軽減します。認知行動療法では、「再保証を求める行動が、かえって不安を強化する」ことが知られています。確認をやめることで、不安の悪循環から抜け出せるのです。
3. 本当の親密さが生まれる
境界線を適切に保つことで、依存ではなく相互尊重に基づいた関係が築けます。日本のアタッチメント理論研究では、健康的な関係性には「適度な距離」が不可欠であることが示されています。
ただし、重要な注意点があります。
「疲れる人」であること ≠ 人間としての価値が低い
これらの習慣は、多くの場合、不安や孤独感の表れです。自分を責める必要はありません。気づいたところから、少しずつ変えていけば十分です。
相手の問題を自分のせいにしない
一方で、誰かに「あなたは疲れる人だ」と言われても、すべてを真に受ける必要はありません。相手との相性や、相手側の問題である可能性もあります。複数の人から同じ指摘を受けた時に、初めて自分のパターンとして検討すればよいのです。
臨床的な支援が必要な場合もある
もし、これらの行動が「不安障害」「愛着の問題」など、より深い心理的課題から来ている場合は、一人で改善しようとせず、臨床心理士やカウンセラーに相談する、医療機関を受診することも選択肢です。専門家のサポートを受けることは、決して弱さではありません。
「疲れる人」を卒業するのは、今日からでも遅くない
「自分は疲れる人かもしれない」——そう気づいたあなたは、すでに変化の第一歩を踏み出しています。気づくことができたということは、変わる力があるということなのです。
明日、誰かと話す時、少しだけ意識してみてください。「確認したい」と思った時に、一度だけ深呼吸をする。「私もね」と言いたくなった時に、「それで、どうだった?」と聞き返す。その小さな選択の積み重ねが、あなたの人間関係を、そして人生を、少しずつ変えていきます。
大丈夫。人は何歳からでも、関わり方を学び直せます。そして、その学びは決して遅すぎることはありません。今日のあなたが、明日の誰かにとって「会うと元気になれる人」になる——その可能性は、もうあなたの中に芽生えているのですから。
参考文献・出典
日本語文献・専門書
加藤諦三(2016)『「気づかい」のレッスン』PHP研究所
水島広子(2015)『「自分の居場所がない」と感じたときに読む本』大和出版
杉山崇(2019)『「心の専門家」が教える 人間関係のトリセツ』ディスカヴァー・トゥエンティワン
岡田尊司(2018)『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』光文社新書
下園壮太(2014)『「疲れない心」をつくる習慣』青春出版社
学会・専門機関
日本認知療法・認知行動療法学会 https://jact.umin.jp/
日本臨床心理士会 https://www.jsccp.jp/
日本心理学会 https://psych.or.jp/
日本カウンセリング学会 https://www.jacs.gr.jp/
英語文献(日本でも広く参照されているもの)
Joiner, T. E., et al. (1999). "Reassurance seeking, stress generation, and depressive symptoms." Journal of Abnormal Psychology, 108(4), 540-548.
Brown, B. (2012). Daring Greatly: How the Courage to Be Vulnerable Transforms the Way We Live, Love, Parent, and Lead. Gotham Books.
Linehan, M. M. (2015). DBT Skills Training Manual (2nd ed.). Guilford Press.(弁証法的行動療法:邦訳『弁証法的行動療法実践マニュアル』誠信書房)
参考Webサイト
厚生労働省 こころの耳 https://kokoro.mhlw.go.jp/
日本うつ病学会 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/
国立精神・神経医療研究センター https://www.ncnp.go.jp/
監修/狩野淳
臨床心理士/公認心理師。2013年に心理学部を卒業後、大学院で発達・臨床心理学を学び、臨床心理士/公認心理師を取得。福祉事業所に勤務し、子どもと保護者を対象とした心理支援を行う。ABAやCBT、ブリーフセラピーを用いた実践的な支援を提供している。
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