スマートフォンを使用する高齢者は認知機能の低下率が低い?研究結果が示唆
デジタル機器の使用は高齢者の認知機能の低下を抑制し、認知症のリスクを軽減する可能性があることが明らかになった。
新たな研究において、デジタル機器を日常的に使用している高齢者は、使用頻度が低い人よりも認知機能の低下率が低いことが判明した。この研究では、デジタル機器の使用について調査した57件の先行研究のデータを分析した。データには40万人以上の成人が含まれ、平均年齢は69歳で、全員が認知機能の検査または診断を受けていた。そしてこの分析の結果、コンピューター、インターネット、スマートフォンの使用が認知機能障害の悪化につながるという証拠は見つからなかった。むしろ、これらのいずれか、もしくは組み合わせの使用が、認知機能障害のリスク低下と関連していることがわかった。
デジタル機器の使用は、認知機能障害発症リスクの58%の低減と関連性が見られた。また、デジタル機器を使用する50歳以上の人では、年齢とともに生じる認知機能の低下率が26~30%低いことが確認され、害を及ぼすのではなく、むしろ有益であることが示された。
テクノロジーの利点
問題解決能力の向上
現在の高齢世代は、コンピューター、インターネット、スマートフォンといった最初のテクノロジーの革新に幼少期を過ぎてから接した世代となる。テクノロジーの利用はソフトウェアの更新や接続不良の解決等、適応能力や問題解決能力が求められ、認知的にチャレンジが必要なものとなる。使い慣れず心地よくない時もあるかもしれないが、それは脳を鍛えている証拠かもしれず、脳にとっては有益である可能性があると、この研究の共著者でベイラー大学心理神経科学部准教授のマイケル・K・スカリン博士は述べる。
社会的つながり
ビデオ通話、メッセージアプリは、家族と定期的に会えない人が社会とのつながりを保つ手助けとなる。単に話すだけでなく相手を見ることもでき、瞬時にやり取りが可能であるため、孤独感を軽減するチャンスがより増えるとスカリン博士は言う。社会的つながりの強さと高齢者の認知機能は関連性があることがよく知られている。
自立のサポート
認知機能の低下により日常生活の自立が失われているかどうかも、認知症の診断基準の一部となる。リマインダー機能、GPS、オンラインバンキングなどのツールは、認知機能の低下にもかかわらず、高齢者が自立を維持するためのサポートになる可能性もある。
健康的なテクノロジーの利用を
運転中の操作や対面でのコミュニケーションの欠如等、デジタル技術の使用によって起こり得る負の影響をしっかりと認識した上で、高齢者の健康的なデジタル技術の利用を促進することが、認知機能の健康に有益であるとスカリン博士は述べる。
「親や祖父母がデジタル技術から遠ざかっているなら、見直してみる価値があるでしょう。スマートフォンやタブレットで写真、メッセージ、カレンダーアプリを使えるようになるかもしれません。 まずは簡単なことから始めて、習得する間は辛抱強く接することが重要です。」と言う。しかし、スカリン博士らは「テクノロジーが高齢者の脳にとって『必ず良い』か『必ず悪い』という単純な答えはない」と注記している。例えば、デバイス機器の使用時間が過多になり、座りっぱなしになってしまうと脳の健康が損なわれる可能性があり、ソーシャルメディアの利用は高齢者への誤情報への曝露を引き起こす可能性があることも述べている。
また、この研究は因果関係の証明にはなるものではない。分析対象となった各研究では異なるアプローチや測定方法がとられていた。例えばある研究ではスマートフォンの使用について測定を行い、また違う研究ではソーシャルメディアの使用について測定を行っていた。しかし、職業、教育、および社会経済的地位などの要因を考慮した後も、リスクの低減は依然として維持されたと報告されており、デジタル機器の使用頻度と認知機能に何らかの関連性がある可能性が考えられ、今後の研究でのさらなる調査が期待されている。
出典
https://www.sciencealert.com/using-tech-as-you-get-older-could-help-reduce-your-risk-of-dementia
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