「私は弱い人間だと思っていた」PMDD(月経前不快気分障害)で低用量ピルを服用して|経験談


生理前に頭痛やむくみ、食欲の変化、イライラ、肌荒れなど、さまざまな不快な症状が現れるPMS(月経前症候群)。精神的な症状が重い場合は、PMDD(月経前不快気分障害)といいます。漫画家で、『生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞く PMS・PMDD攻略法』(KADOKAWA)の作者である、なおたろーさん自身も、PMDDの症状に悩まされた経験を持っています。インタビュー後編では、PMDDを軽減させるために行ったケアや、PMDDをきっかけとした日常での性教育の取り入れ方などを伺っています。
PMDDの対処方法
——PMDDに気づいてからはどんな対処法をされたのでしょうか。
気づいてから1か月以内で、婦人科を受診したので、セルフケアだけでやり過ごした期間はほとんどないです。むしろ低用量ピルを服用してからは、ピルの休薬期間と寒暖差や気圧の変動が激しい時期が重なると、不調を感じやすいこともわかったので、夏でもカイロを腰に貼ったり、温かい飲み物を飲むようにしたりと、セルフケアをするようになりました。
それまでは「自分のことはどうでもいい」という感覚があったのですが、自分がPMDDであることがわかってから、自分のことを知ろうと思うようにもなって。自律神経の乱れにも弱いことがわかって、心療内科でお薬をもらったり、なるべく感情の波がゆるやかになるよう意識するようになりました。
——なおたろーさんご自身の経験として、低用量ピルを飲み始めてすぐに変化を感じたのでしょうか?
1シート目から、今までならメンタルが落ちてくる時期なのに、全然不調を感じなくて、飛び跳ねていましたし、うれしくて家族に「聞いて聞いて!」と説明していました。なので、もっと早く飲んでいればよかったとも正直思いました。
ピルを飲む前は、生理前の2週間と生理が始まってからの1週間は、何かしら不調を感じていたので、元気な時期が1か月の中で1週間程度しかなかったんです。でもその1週間の明るい自分が「本来の自分」という感覚はあって。一方、不調を感じる期間が長いので「私はメンタルの弱いダメな人間」という認識でいました。
ピルを飲み始めてからは、ホルモンに振り回されている「いつもとは違う自分」を、「本来の、普段の自分」がコントロールできているような感覚を得ることができました。
意外とある日常生活での性教育の機会
——PMDDの症状がつらい中で、家族とのコミュニケーションが難しかったことはありますか?
PMSやPMDDについてちゃんと知る前から、生理前に不安定になるのはよくあることという知識はあって、夫に話していたのですが、夫は生理を経験することがないので、私一人の症状を聞いてもピンとこなかったみたいで「早く病院行きなよ」と言ってたんです。
正論ではあるのですが、婦人科へ行くにも色々とハードルや葛藤がありますし、メンタルが不安定な状態でそう言われたことで「非難されている」と受け取り、余計に荒れてしまって。このときのことは夫には申し訳ないと思っているのですが……。
その後「病院でお医者さんからこういう説明をされた」と説明したら、夫も納得したみたいで。もちろん夫が最初からすっと理解してくれたらラクでしたが、経験できないことである分、仕方ないとも思っています。なので、病院へ行く前であっても、ホルモンの仕組みを説明するなど、明確なソースを示すと、理解しやすいのかもしれないと思いました。
——お子さんとはいかがでしたか。
PMDDの症状が出る時期は、子どもの言葉を右から左に流してしまったり、子どもが何を言っても棘のある返答になってしまったり、まともに子どもと向き合えなくて……本当に申し訳なかったです。
ただ、生理が終われば、子どもを公園に連れていって、子どもと一緒に遊ぶのも楽しいですし、イヤイヤ期も「そういうものだよね」と受け止められていました。「本来の自分」なら、そうやって子どもに余裕のある接し方ができるのに、PMDDの時期には難しかったです。
自分でPMDDのことがわかってからは、息子たちにも教えてもいいだろうと思って、「人にもよるんだけど、女性は体調が悪くなる時期があって、怒りやすくなったり、落ち込んじゃったりするんだよね。ママは特にそうなりやすくて……」という話をすることもあります。
——日常の中で、性教育を行っているのですね。
長男が年長の頃には、そういう話をし始めていたかと思います。たとえば、生理中に一緒にお風呂に入っているときに、湯船に入れないわけではないものの、出血が多いのでやめておこうと思うタイミングがあって「今日はやめておくね」と話したら、子どもから「なんで?」と聞かれるので、そこから「実はママは今血が出る時期なんだよ」と説明したり。幼稚園の時期はざっくりとした話をして、その後、ナプキンを買うときに話すこともありました。
特に長男は知らないことへの興味が大きいので、積極的に質問をしてきて、それに答えているような感じです。次男はそこまで聞いてこないので「知ってる?女性っておまたから血が出ることがあるんだよ」と切り出して話のきっかけを作ったり、「男性と女性の身体の違いはなんでしょう?」みたいにクイズ形式で話したり。最近はPMSやPMDDについてテレビで特集していることもあるので、「これママと同じだよ」と話すこともあります。
「性教育」というと、硬いイメージを持ちがちですが、子どもがテレビCMを見て「さらっさら~のサラサーティ♪」と歌い出すこともあるので、「それって何か知ってる?」と話し始めたり、意外と日常生活の中で話せるタイミングはあると思います。
——子どもがCMのフレーズを口ずさみだしたら、慌ててしまったり、つい「恥ずかしいからダメ」と言ってしまいそうです……。
私自身、小学生のときに『ちびまる子ちゃん』の漫画を読んでいて、生理の話が出てきたことがあって。昭和の頃の話なので、漫画の中では、男子には隠して、お父さんにも言わないで……といった感じで描かれていたんです。
当時、私はまだ小学校低学年で、自分もまだ生理がきてないのでわけがわからなくて。父親に「生理って何?」とぽろっと聞いたら、「大きくなったらわかるよ」と濁されたんですよね。
そのとき「なんで今教えないの」とムッとしたことをよく覚えていて。
私自身は先延ばしにされてしまった経験から、父親への信頼度が下がってしまった部分もありました。なので、話す時期や言葉選びはあるかもしれませんが「そんなに先延ばしにする必要はなくない?」と思っていて、子どもに聞かれたことは答えるようにしていますね。

「そういうものがある」と知ってもらえたら
——PMDDの症状に悩まされる中で、周囲の反応で傷ついたこと、逆に助かったことはありますか?
「生理は病気じゃない」「みんなつらいものだから」といった感じで、自分のつらさを聞いてもらえないのはつらかったです。「この人と関係を続けていくのは無理かも…」と私の方から心がシャットダウンしてしまいました。
助かったことは、「そういうものなんだね」と受け止める反応をしてもらえたことです。今回、書籍には「こういう仕組みで、こういう時期に排卵が起こって……」と詳しく描きましたが、そこまで正しく理解していなくても「PMDDというものがあって、人によってはとてもつらいらしいね」というふうに思ってもらえれば、私はうれしいです。
同時に、私はPMDDの一当事者の立場としては、「わかってもらう」だけでなく、自分で症状と向き合って、自分のことを受け入れたり、対応策を考えたりすることも大切だと思っていて。人それぞれ背景はあるとは思うものの、「生理前だから仕方ないじゃん」と、ただ開き直って、一方的に相手に負担をかける言動をするようなコミュニケーションには疑問があるので、私自身は、一緒に歩んでいくための努力は必要だと考えています。

【プロフィール】
なおたろー
『うつだと思ったら生理が原因でした』でプチ大賞受賞。2児の母。ブログやXにも自身のPMDD体験記や子育てについての漫画をアップしている。
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