世界的心理学者ラム・ダスが考える「死を受け入れること」
内側へ進んで行く
朝食後、私たちは2階へ上がった。2階にはラム・ダスのベッドとバスルームとオフィスがある。そこには壁一面の本、友人たちの写真、(私たちがマハラジと呼んでいる)導師の写真を飾った祭壇、電話、インターホンがある。介護人のラクスマンがラム・ダスを車椅子から大きなリクライニングチェアーに移して、毛布をかけた。朝マントラを詠唱したときに焚いた白檀のお香のかおりが、ここまで上ってきていた。
私はラム・ダスに単刀直入に尋ねた。「これまでも死について多くのことを書いたり語ったりしてこられましたが、死に近づきつつある今、何か新たにわかったことはありますか」
ラム・ダスは目を閉じ、長い間黙っていた。どんな言葉が出てくるのか見当もつかなかった。「私はマハラジに寄り添っている。自らの肉体から自分自身を遠ざけている」
「具体的にはどうしているのですか」
「自らの目で、意識で、そして魂で確認している。肉体は滅びつつあっても、魂は延々と進み続ける。私は自分の内側に向かって、魂に向かって進み続けているんだよ」
「それはこれまでとは違うことなのでしょうか」
「肉体の死期は近づいているが、私は死ぬ気がしない。肉体がどうやって…どうやって死を遂げるのか興味があるんだ」
私たちは笑った。
そして、ラム・ダスはこう言った。「長年、現象としての死について考えてきたけれど、自分自身の死については考えなかった… 今、現象としての死と自分の死を知性ではなく心でつなぎ合わせようとしているんだが、愛に満ちた意識をもってすれば恐れることは何もないことがわかったよ。死は単に私の修行の最終段階になるんだ…」
ラム・ダスは長い間黙って海を見つめていた。私たちはこれまでも死に関する話をしてきた。ただ、これほど率直に個人的な話しをしたことはなかった。声に出して言ってみると、物事は変わる。
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