【体験談】夫婦のコミュニケーション、貯金、健康管理…「人生後半戦」の不安をなくすために備えたこと
防災・老後の資金・健康……今後のことを考えなくてはと思いつつも、先送りしてしまったり、しばらく見直していなかったりしませんか?これまでも「やめてみた」シリーズで、ご自身の生活や心身と向き合ってきた、漫画家のわたなべぽんさん。今回『やっとこっかな 近い未来のためにちょっぴり備える』(幻冬舎)では、コロナ禍をきっかけに、人生の後半に向けて色々と備えた経験を描いています。家事分担の話し合いもしている本作。夫さんとのコミュニケーションで大切にしていること、そして「やっとこっかな」を実践して得た心境の変化について伺いました。
中年期に夫と穏やかに暮らすために
——本書の中では、夫さんと家事分担の話し合いもされています。過去の作品でも、よく話し合いをされていますが、思っていることを伝えられる関係性をつくるために、今までどんなことをしてきたのでしょうか?
「お互い干渉しないように」ということは、以前から話し合っていることです。服や髪、趣味や意見が合わなくても、夫の好きなものは好きなものとして尊重します。
どうしても意見しなくてはいけない場面では、感情から伝えるのではなくて、実際にやってほしいことをシンプルに伝えるようにしています。たとえば、私ばかりバタバタと家事をしていて、夫は何もせずにぼーっとしているような時間があって、イラっとしたとき、「暇ならゴミ捨てぐらいやってよ」「こんなに私が忙しいのわからないの?」とつい嫌味まじりなことを考えてしまうことも。そういうときに、そのまま気持ちを口に出すのではなくて「私は今手が空いてないから、もし手が空いてるのだったら、ゴミを捨ててきてほしい」と伝えます。
——心を許している相手だからこそ、うっかり感情が先に出てしまうこともあると思うのですが、出てしまったときにどうフォローしていますか?
感情を出してしまうことはありますね。そういうときは「こういうことで、腹が立っちゃってごめんなさい」と素直に伝えるようにしています。他者の行動にイライラすることはあるものの、友達だったら、夫にやるように当たらないと思うんです。だから友達にしないことは夫にもしないように、と意識しています。
——過去の作品を含めて、夫さんの一言が読者として刺さる瞬間もありました。
夫は鋭いことを言うので、普段からグサグサと刺さることばかり言われていたら、ちょっと耐えられないかもしれないですが(笑)、私がああでもない、こうでもないと答えの見えない中でずっと悩んでしまうこともある中で、ズバッと言ってくれるのは助かっていますし、ありがたいですね。
たとえば『もっと、やめてみた。』(幻冬舎)で描いたように、3年間の通院を続けて、色々な歯のトラブルを治せたのですが、こんなに歯が綺麗になったのは赤ちゃん以来だったんです。というのも、母は育児があまり得意なタイプではなく、歯みがきをきちんと教えてもらえなくて、たまに磨いてくれるときには、虫歯をこすられるのが痛くて、歯が痛いことを親に隠していたくらいでした。実家を出てからも生活がカツカツで、歯の治療は後回しにしてしまって、30代後半になってやっと治療に向き合うことに。
こんなになってしまったのは、母のせいだと思っていたのですが、どこかで変えられるタイミングはあって、人のせいにしていた部分はあったんですよね。とはいえ、子どもの頃からもっと歯が綺麗だったら、こんなに時間もお金もかからなかったんじゃないかな……とモヤモヤが残っていたのですが、夫が「考えを変えるにはきっとそれくらい時間が必要だったんだよ」と言ってくれて、自分の気持ちに折り合いをつける時間が必要だったのだと、この時間は無駄ではなかったんだと、夫の言葉で肩の荷が下りた感覚がありました。
——穏やかに一緒に暮らしていくために、大切にしていることはありますか?
よく話をすることです。その時々でどう思ったかを共有していくことで、後々の会話につながる気がしているので、一緒に見たり聞いたりしたこととか、ちょっとしたテレビの話題でも、「これはこう思う」という話をマメにしています。
——中年期に入ってから、夫さんとのコミュニケーションに変化はありましたか?
私たち夫婦は、周囲からは「仲良しでいつも一緒」と言われることが多くて、以前は二人一緒に行動することが多かったのですが、最近はお互いに一人で出かけることも増えてきました。かといって、会話をすることが減ったわけではなく、一人の時間も大切にするようになった感じです。
私は今、映画館に行くのが好きで、少し気になったものを片っ端から見ていくのですが、夫は前評判を調べたうえで、自分が興味のある作品をピンポイントで見に行くタイプなので、夫のことはなかなか誘いづらい。だから映画も一人で見に行くことが増えました。
お互い、ちょっとした外出だけでなく、1泊か2泊程度、泊まりがけで出かけることもあるのですが、出先から「こういうご飯を食べてるよ」など、お互いマメに連絡をしますし、帰ってからも「今日はこういうものを見たんだよね」と話すことも多くて。ずっと一緒に行動していると、同じ話を確認することばかりになりがちなので、お互いがそれぞれ見てきたものを、持ち寄って話をすることが増えて、それはそれで楽しいですね。
「やっとこっかな」を実践して
——本書で描かれている「60歳までにやっておきたいことリスト」はどのくらい実践できましたか?
ほとんどできているのですが、親の介護の話だけはまだ進めていないです。夫側の親の介護については、ざっくりとした話し合いはしています。私の実家は母だけ残っているのですが、弟と一緒に暮らしていることもあって、任せっきりで、母とも弟とも話はできていません。
それ以外は、夫との家計を完全に別にしていて、各々で貯金をしていますし、保険については、リストを機にどれくらい手厚いものが必要なのかを夫とすり合わせができました。
健康管理については、私はもともと病院がすごく苦手で、悪化してからでないと行かないタイプなんです。だから健康診断もあまり行っていなかったのですが、最近は区の健康診断には行くようにしていて、今年の秋には初の人間ドックに行く予定です。
——「やっとこっかな」を実践した前後で、どんな気持ちの変化がありましたか?
「社会人」とは言えないような大人として生きてきて、何も備えずに来てしまったのですが、気がついたらこの年になっていました。何も準備してこなかったことで感じていた不安が、「やっとこっかな」をすることで、心が軽くなりました。
——本書の最後の方で、更年期症状についても少し触れていました。
今のところ、はっきりと更年期の症状が現れているわけではないので、特別何かをしているわけではありません。
母の更年期の症状が重くて、親子で体質が似るといった話を聞くこともあったので、自分も苦労するのではないかと不安だったのですが、前ほどは不安に感じていないんです。私はご近所付き合いを結構していて、仲良くしている人に年上の方も多いので、この間も「もう更年期きた?」「私はまだ」といった会話をしました。相談しようと思ったらできることが安心感につながっています。
※後編に続きます。
【プロフィール】
わたなべぽん
漫画家。山形県出身。第6回コミックエッセイプチ大賞・C賞を受賞しデビュー。
既刊に、累計50万部突破の「やめてみた。」シリーズや『自分を好きになりたい』(幻冬舎)のほか、お片づけコミックエッセイ『ダメな自分を認めたら 部屋がキレイになりました』、『人見知りの自分を許せたら生きるのがラクになりました』(KADOKAWA)など。
現在はこよなく愛する西荻窪に暮らす。
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