「夫婦でお金の話をして得られたメリット」パートナー間でお金にオープンになるコツとは【経験談】

 『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)より
『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)より

『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)には、無理をせず、楽しくお金を貯めるヒントが描かれています。家庭でお金を貯めるとなると、パートナー間で話し合いが必要ですが、なかなかお金の話はしにくいもの。作者のくぼさんに夫婦でお金の話をするコツについてお話しいただきました。ほか「自分への投資」というお金の使い方や、25歳で結婚した頃から家計管理に向き合ったことのメリットもお伺いしています。

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夫婦でお金の話をするコツとは

——夫さんはお金の話が好きで自分からしてくれるとのことですが、夫婦でお金の話をしにくい場合も少なくないと思います。お金の話をするコツはありますか?

お金の話を嫌がる人はいますよね。夫がコーチングの資格を持っているので聞いてみたのですが、話すコツとしては相手を否定する言い方ではなく、相談するスタンスを取ることが重要だそうです。「こういうのってどう思う?」という聞き方をすると、気持ちがほぐれる方もいらっしゃると思うんですね。

うちの場合も、最初は私がお金に関して無頓着で、何を言われてもピンときていなかったのですが、夫が時間をかけて現状の説明をしたうえで、どう思う?と聞いてくれて。これってどういう意味なのかな?と聞くと、夫が事前に色々なことを調べていて、投資のパターンなどをいくつか話してくれました。なので相手があまり乗り気でない場合は、一度色々と調べたうえで、家族にとって良いプランをいくつか考えてから話した方が導きやすいと思います。

本でも紹介したのですが、夫は「人生シート」と呼んでいる年表のようなものを作ってくれて、お互いの人生をともに俯瞰して見られるようにしてくれていたので、お金が未来の生活の安心と安定につながるんだということを実感することができました。

銀行口座については「見せて」といっても見せてくれないと思いますし、余計に心を閉ざされてしまう可能性もあると思います。勇気が必要かもしれませんが、自分から開示することも一つの方法です。うちの場合は夫が最初からフルオープンだったので、私もオープンにすることへの抵抗感がなくなっていきました。

1番大切なことはお金に対する価値観を近づけていくことだと思います。一緒に人生を歩んでいく中でお金の話は切っても切れません。可能であれば、若いうちからお金の話をすべきだと思いますし、私は夫婦の会話のメインがお金の話でも良いと思うくらいです。

漫画
『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)より

——お金の話はしにくいけれども、夫婦関係が良好な場合に、何かきっかけを掴めるタイミングはあると思いますか。

「保険を見直してみない?」と提案してみるのは一つの方法だと思います。保険会社に行くとライフプランを作って見せてくれることもあって。そうすると実際に今後どれくらいのお金が必要になってくるかもわかってくるんですよね。

お金の話を日常会話として、楽しく話せるようにするのもポイントです。うちは夫婦2人でビュッフェに行くときに人生シートを持って行って、食べながら「この時期にはこうしていたいよね」という話をしていました。

「自分への投資」というお金の使い方

——作中には義理のお母さんが、結婚を機に退職したくぼさんがキャリアを持ち続けることの背中を押しつつも「専業主婦を含めくぼさんが選んだ選択肢を応援する」とおっしゃっている場面がありました。25年前に結婚されたとのことで、当時は「男は仕事/女は家事育児」の性役割分業も強かったと思うのですが、どう感じましたか。

私は1996年に大学を卒業し、就職した先が百貨店でした。当時、四年制大学卒業の女性の社員は幹部候補生というイメージで「女性で管理職を目指しているなんて偉いわね」と言われて。別の企業に一般職として就職した友人には「結婚相手を探すために入社する」といういわゆる“腰かけ”の考えの人も結構いましたし、当時は社内でも長く働いている女性も少なく「女性はサポート業務で十分」というような考えも強かった時代でした。

エンジニアで土日休みの夫とは休みが合わなくなってしまうので、結婚を機に私は百貨店を退職しました。辞めた後に何をするかは全然考えていなくて、転職活動もせず、主婦の仕事についてぼんやりと考えていましたね。そんなときに義理の母に会ったときに今後の仕事について聞かれました。

「しばらく主婦をやろうかと思っています」と話したら、「まだ20代なんだからいろいろな選択肢がたくさんある。そのうえで主婦になるのならいいけど何も考えないのはもったいない」と言われて。義母自身の経験も話してくれました。義母は音楽講師で義父よりも稼いでいたときもあったそうです。当時は60代で世間一般では定年退職している年齢ですが、元気にバリバリ働いていました。

「女性だから働かずに夫に養ってもらおう」と考えるのではなく、自分で自由に使えるお金を自分で生み出した方がいいし、主婦をするにしても、あなたができる何かを考えないともったいない。人生はあっという間だからね!」と言われました。義母は80代の今も現役で働いていて、足腰も丈夫。私たちよりも体力があることにも驚かされます。義母を見て、女性の生き方に対して固定観念があったことに気づきました。

——その後、くぼさんがやりたいことに向き合い、Webサイトの制作について勉強したいという答えを出されました。そのとき夫さんが「浪費じゃなくて投資」「学べるチャンスがあるからもったいない」と学校で学ぶことを応援している場面も素敵でした。

私はWEB制作に関する知識もない上にPCを仕事で使ったこともありませんでした。夫はすぐに「学校に行って勉強しなよ」と言ってくれました。仕事をするのだったら基礎的な知識は身に着けていく必要がある。ある程度話が通じる人じゃないと仕事を振れない。だから勉強をすることは無駄遣いじゃなくて必要な経費・投資だから、今後のためにも絶対に学校に行くべきだ、と。

学費が100万円くらいで、正直そんなお金は自分で持っていなくて躊躇していましたが、夫が「全部払うから」と。「家族のお金だから貸すわけでもなく、自分自身の投資としてやるべき」と言ってくれて。このとき「投資」という自分自身の可能性を広げるためのお金の使い方を初めて知り、驚いた記憶があります。

それでも自分がそんな大金を使っていい人間だと思っていなかったので「バイトで学費を貯めてから学校に行こうかな」と言ったら、夫には「その時間が一番もったいない」と言われました。「お金が貯まってからだとやりたい気持ちが薄れるかもしれない。バイトでいっぱいいっぱいになってそういう毎日にすり替わっちゃうから、やりたいと思ったときにすぐにやらないとダメだよ」と背中を押してくれました。

勉強
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若い頃は漠然と「なんとかなる」と思っていた

——夫さんと出会ってから考え方が変わったことが描かれていますが、それまではお金や貯金についてどのように捉えていましたか。

何も考えていませんでした。入った給与はほぼ全部消費していたので、貯金は全然なかったですし、税金のことも何も知らなくて、天引きされている金額もどういうものが引かれているかすら把握していませんでした。世間にある「多くを求めないことが美しい」という空気を感じて生きてきましたし「守銭奴」という言葉があるように、お金の話をすることはすごく汚いイメージも持っていました。

両親は「お金は天下の回りもの」という言葉をよく使っていて。本来は「金銭は1か所にとどまっているわけではなく、今手元にある人もいつか失うこともある。逆に今持っていない人も手に入れることもある」という意味なのですが、親は「お金は循環していて、いつかは自分のところに戻ってくるから入ってきたお金は使うべきだ」という謎の解釈をしていました。大人になってもその考えを信じて、入ったお金はどんどん使っていましたね。

漠然と「なんとかなる」という意識はあって、先々のことまで考えていなかったです。年老いていく意識もなかったですし、いつか病気になることも想像していなくて、ずっと今のままという感覚で生きていました。老後に近づいてから「どうしよう…」となっていたかもしれません。

——結婚した25歳から家計管理をされて、どのようなメリットを感じていますか。

前提として、主体は夫であって、私は徐々に覚えていったところがあって。今でも夫にやってもらっている部分は大きいですが、やっていることは共有してくれるので自分でもわからないままにせず、質問したり調べたりするようにしています。

メリットは、調べればお得に暮らせる方法がいっぱいあると知ったことです。家計のことだけでなく、全然知らなかった税金や国の制度などについても、長い時間をかけて触れて学んでいきました。

国もお得な制度を作ってくれているのですが、手続きが必要で面倒なことも多いので、壁が高いですよね。NISAやiDeCoもお得な制度ではありますが正直面倒です。しかし面倒でなくて簡単に得られるものは利益も大したことがないものです。面倒くささを乗り越えた人だけが得する仕組みが世の中には多いと思います。

先々のことをよく考えるようにもなりました。私は年金の知識もなく、老後のことを全然考えていなかったのですが、夫は20代で人生が有限であることを実感するためにエンディングノートを書いていました。老後を楽しく過ごしていくためにはお金が必要で、そのために準備できることがありますし、定年前でないとできないことも多々あります。家計管理をすることで、お金の仕組みを学んで、よりよく生活しようという気持ちにもなりました。

『理系夫の家計大作戦』の中には、私自身が長い時間をかけて知っていったお金に対する知識と基本的な考え方を詰め込んでいます。正直なところ、結婚する前からこの本の内容を知っていたら、どれだけ良かっただろうかと思いながら描いていました。私自身が全く理解していなかった人だったので、できるだけ読みやすくわかりやすく描いたつもりです。自分自身の人生を守り、よりよく導く手助けになれば嬉しいです。

『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)
『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』(はちみつコミックエッセイ)

【プロフィール】
くぼこまき

クルーズ・ビュッフェ好き漫画家。 
著書6冊『理系夫のみるみる片付く!整理収納術』『参道めし』『クルーズ、ハマりました! 』等

■公式サイト:http://www.kubokomaki.com/

■X(旧Twitter):@kubokomaki

■Instagram:@kubokomaki
 

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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