産後の夫婦危機…どこまでが尊重でどこからが隔絶?出産後に夫と話し合って気づいたこと【経験談】

 『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)より
『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)より

平日はテレビ局で働き、土日に副業として漫画を描いている真船佳奈さん。新作『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)では妊娠中の心身の変化から、無痛分娩の経験、出産直後の心境の変化、コロナ禍での出産でスマホでの検索を頼るしかなく孤独であったこと、夫とのすれ違いなどを描いています。寄り添ってくれるような本でありながらも、ギャグたっぷりの笑えるコミックエッセイです。後編では夫との衝突と修復のコツ、子どもを産んでから感じる社会の目線、制作への思いについて伺いました。

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出産後はよりコミュニケーションが重要に

——出産後の夫さんとの衝突も描かれていました。修復のコツを教えていただけますか。

女性は10か月否が応でも体が変化していき、ホルモンバランスの変化で心も過敏にもなって、どうにかこの子を生かさなければならないと責任を感じやすいがゆえに、「私は赤ちゃんのことだけを考えているのに」と視野が狭くなってしまう傾向にあると思うんです。

私でも産んでから初めて実感が湧いたくらいなのに、夫はお腹に赤ちゃんがいたわけでもなく、生活が変わるわけでもなく、突然目の前に誕生するわけです。子どもが生まれても自分のペースを変えない人も中にはいますが、基本的には子どものことをかわいいと思っているし、家庭を支えたいと思っている。妻をないがしろにしようとは思ってはいないものの、自分は産んでもいないし、妻は視野が狭くなっていて蚊帳の外……という感じで、どうしたらいいのかわからない人も多いのだと思います。

「どこまでが尊重で、どこからかが隔絶なのか」と漫画にも描いたのですが、私が丁寧にやりたいと思っている以上、夫は私のやりたいように任せたほうがいいのではないかと思っていたようです。ここは夫の立場の人からの共感の声が多かったです。

私も夫に介入してほしいけれども、介入されまくるのも微妙なところで、母乳が出なくて悩んでいたときにネットで1分で調べたような情報を言われたりすると、「散々調べたよ!母乳が出ない方にはわかんないんだ!」って言いたくなっちゃう気持ちもありました。

本来は出産前よりもコミュニケーションが必要だったのに、今までと同じノリで接していたらすれ違いが生じてしまう。今まで以上に何をしてほしいか、何をしてほしくないかをお互いに伝えあって生活に落とし込んでいくしかないと思います。

漫画
『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)より

——『今日もわたしをひとり占め』では結婚後も一人の時間を大切にしていることを書いていましたが、出産後はいかがでしょうか。

お互いに一人の時間がないときついので、今でも一人の時間は大切にしています。離れている時間があるからこそ子どもをかわいいと思えるときがあって……たとえば一時保育に子どもを預けて迎えに行くと、めちゃくちゃかわいく見えるという経験はみなさんあると思うんです。

私も夫も毎日ずっと一緒にいると疲れてしまうので、お互いに飲み会があるときはそれぞれが子どもをみるようにしています。実家の近くに引っ越したので母の手も借りています。私は漫画を描くことがリフレッシュなので、週に2日は漫画を描く作業に充てさせてもらっていますし、本の締め切り前などはベビーシッターさんに依頼して漫画を描くのに集中したこともありました。

今は仕事も復帰したので、出社時間にイヤホンで音楽を聞いたりランチに行ったりする時間を楽しんでいます。会社に行くのが楽しみですね。

——子連れに親切な人がいる一方で、子連れに冷たい人もSNSを通じて可視化されやすくなっていると感じます。真船さん自身は子どもを産んでから感じた社会の目線や出産前後のギャップはありましたか。

子どもが小さいときはいつ泣くかわからなくて、爆弾を抱えているような感覚で、1時間の外出でもすごく怖かったです。幸い誰かに「静かにしろ」みたいなことを言われた経験はないのですが、SNSなどを見ていると、子連れを迷惑だと思っている人の存在を認識してしまって。電車やバスで子どもが泣いちゃったらどうしようとビクビクしているのですが、外出せざるをえないから乗っているところもありまして……これは今でもヒヤヒヤしてしまうんですよね。

——そんなに恐怖心を抱かれているのですね。実際にそういった場面に遭遇したときに味方でありたいと思うのですが、どうされたら嬉しいでしょうか。

子どもが泣いているときに「うちも同じくらいの孫がいるんだよ」と言ってくれるおじさんやおばさんがいたり、ニッコリ笑いかけていただくだけでも「私たち親子も乗っていてもいいんだ」と安心できるところがあると思います。

私も子どもを産む前は子どものことをかわいいと思っていても、勇気がなくてそういうアクションは起こせなかったので「いても大丈夫」という雰囲気だけでも出していただけるとありがたいと思います。

子どものことを知る機会がない社会

——真船さんはテレビ局での勤務を漫画にした作品でデビューされていますが、今回、妊娠・出産をテーマにされたのはどのような理由があったのでしょうか。

実際に妊娠・出産したことで知ったことが色々とあって。今まではどうしても自分ごととして考えられなかったんです。「子どもが生まれたら、たくさん泣いたり寝なかったりして大変なんだろう」くらいのイメージはあったのですが、いざ妊娠してみると体が自分のものでなくなる感覚でした。全然知らない世界に足を踏み入れた気分で、絶対に記録を残しておきたいと思いましたね。

さらにコロナ禍で誰にも会えない中での出産を経験し、スマホで検索するしか疑問点を解決する手段がなくて孤独でした。そういうときに寄り添ってくれる本があったらと思って、妊娠中にもたくさんメモをとっていましたし、分娩台の上でもメモしていたくらいです。

自分に起きたことを全て記録して、これから子どもを持つ人や、子どもを持ったことがなくて「子育てってどんなもんだろう」と思っている人を繋ぐような本にできたらという思いで制作しました。

——私は子どもがいないですし、子どもを産む予定もないのですが、すごく楽しく読めましたし、妊娠・出産・子育てについて初めて知ったこともありました。

子どもがどういうものなのかをなんとなく知ってくださるだけでも、社会の雰囲気は変わるだろうと思っていて。電車やバスで子どもが泣くことの話に戻るのですが、私は赤ちゃんが泣くことについて、コントールできないことは知ってはいたものの、2歳になってもこんなに言うことを聞かないことは子どもを持ってみて知ったことでした。

日本社会では「ちゃんとしつけていたらできる」と子どもを「小さい大人」だと思っている人が少なくない数いるように思います。確かに「鳴き声がうるさいですよね、ごめんなさい」と思うときもあるのですが、社会性を学んでいく前の段階の年齢では、自分の欲求のままに泣いて暴れて主張する子もいるし、したいことができないとなると、パニックを起こして泣いたりもしますし、そういう生態を知ってほしくて。「しつけ」というものをできるのも、ある程度の年齢以降のことだったりするのも、私は産む前までよくわかっていませんでした。

でも知らない人が悪いのではなく、知る機会がないんですよね。私も赤ちゃんを一度も抱っこしたことがないまま母親になりましたし、子どもと接する機会がなければわからないことだと思います。

——5秒ごとに笑わせられるくらいギャグが詰まった本で、楽しみながら子どものことを知ることができました。

子どもは今後も社会に常に居続ける存在で、一緒に社会を作っていく中で、知ってもらえたら親の立場としてはありがたいですし、知ることで腹が立たなくなったり許せたりすることもあると思います。なのでこの本を通して、みなさんに子どものことを知っていただけたら嬉しいです。

真面目な妊娠・出産本だとなかなか読んでもらえないと思いましたし、家族で、特に男性に読んでもらいたいと思い、制作しました。前半はギャグたっぷりにして、楽しく読み始められるようにしています。面白くないと読んでもらえないですが、面白いだけでもダメなので、後半にはシリアスな部分もあって、ジェットコースターみたいな一冊になっています。

『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)
『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)

【プロフィール】
真船佳奈(まふね・かな)

平日はテレビ東京、土日は漫画家として働く。
2017年『オンエアできない!〜女ADまふねこ、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)でデビュー。
既刊に『オンエアできない!Deep』(朝日新聞出版)、『今日もわたしをひとり占め』(サンマーク出版)。
 

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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