母乳じゃなきゃダメ?約半分のママはミルクを活用!先輩ワーママと助産師が母乳神話の思い込みを解説
「母親として/妻として/社会人として、こうあるべき」——『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)の著者であるみなさんが悩みを共有したところ、そのような無意識のバイアス・思い込みに悩んでいたことに気づいたそうです。本書は無意識のバイアスの正体を明らかにし、真に正しい知識や先輩ワーママの経験談を提示し、無意識のバイアスから抜け出すためにそっと背中を押してくれます。第1回は「産まれたら出るんじゃないの!? VS母乳神話」を抜粋してお届けします。
【正しく知る】いま悩んでいるあなたが知っておきたいFACT
初めての育児。生まれたその日からぶつかる大きな壁「母乳」。そもそも「母乳がいい」というけど、なにがいいのか、そして本当に母乳じゃなければいけないのか ? その気持ちはどこから来るのか? 母乳育児のメリット・デメリットに関する正しい知識を得て、考えてみましょう。
<実は簡単じゃない母乳育児>
● 出産したらすぐ母乳が出ると思いきや最初は出ないし、赤ちゃんも飲むのが下手
● 乳首が切れて痛いし、最初はかなりの苦痛を伴う
● なにもしなくても出る人もいれば、どんなにがんばっても出ない人もいる!
● 母乳育児推進、ミルク推進など分娩病院によっても違いあり
● ママのおっぱいの形(乳頭の大きさや長さ)と、赤ちゃんの相性という問題もある
<母乳のメリットを正しく知ろう>
まずは実際に母乳にはどんなメリットがあるのか、正しく理解してみましょう。
(赤ちゃんのメリット)
1 お母さんと肌と肌が密着できることで安心感を得られる
2 母乳から免疫細胞がもらえる
3 母乳自体へのアレルギーを起こしにくい
4 乳幼児突然死症候群を予防できる、といわれている
(ママのメリット)
1 子宮収縮を促し、産後の回復が早くなる
2 赤ちゃんとの愛着形成に役立つ
3 ミルク代が要らない・手間がかからない
4 産後の体重回復のしやすさ、乳がん・子宮体がん予防など
一方で、こんなデメリットも……
(赤ちゃんとママのデメリット)
1 飲んでいる量がわからず不安になる
2 授乳間隔が短く大変
3 長時間は預けられない
4 乳房、乳頭トラブルが起きることがある
5 ママは自分の食べ物・薬に気を使わないといけないというプレッシャーに襲
われやすい
6 赤ちゃんのビタミンDが不足しがち
7 最後は卒乳&断乳問題も
8 母乳が軌道に乗らないこと自体にプレッシャーや罪悪感を抱えがち
●母乳育児でなければ本当にダメ?
▼母乳育児をしたい? しなければいけない?
母乳で育てたいという気持ちはとても自然だし素敵なこと。でも、母乳で育てないと「いけない」という思い込みが強くなると、母乳育児が軌道に乗らないことがつらくなるかも。「母乳で育てなければいけない」というのは誰の気持ち? いつの間にかそう思うようになっていた? 誰かから「母乳がいいよ」と言われた?
こういった観点から、自分の性格や環境、生育状況にあった方法を見つめ直してみると「母乳で育てたい」のは自分の本心なのか、「母乳じゃなくちゃ」というバイアスなのかに気づけるかも!
▼助産師さんからのメッセージ
伊藤麻衣子さん
助産師。産後うつになりかけた経験から、「よりよい夫婦のパートナーシップづくり」を支えるサポーターとしても活動
母乳育児を軌道に乗せるには「とにかく吸わせ続ける」が基本。しかし、ママの状況は人それぞれ。母乳は血液成分でできているので、妊娠中から貧血があったママや出血の多い帝王切開のママは、おっぱいが出にくく、産後 1 カ月すぎくらいから母乳育児の軌道に乗ったケースもあります。
また、「産後メンタル問題」(P18)でも触れたように、ホルモンの急変によるメンタルの落ち込み、食欲不振・水分不足など、母乳育児のベストな環境が整っていないママも多いです。そのような心身共に危機的状況の中、「母乳は努力すれば出るかもしれない。でも、この状況でそこまでがんばる必要がそもそもあるのか」は、前述のメリット・デメリットを比較したり、産後のライフスタイルをイメージしながら、妊娠中にパートナーと一緒に検討してみて。里帰り出産などご両親のサポートをお願いする場合は、自分たちがどのように育てたいかを伝えたうえで、ご両親の希望とすり合わせるのもオススメ。ミルクでも OK だし、罪悪感も不要です。周りのバイアスに振り回されずに、自分の希望・状況・ライフスタイルにあった選択をしてくださいね。
●実際、みんな母乳育児で育ててる?
実際、ママたちが母乳・混合・ミルクのどの方法で授乳期を過ごしていたのかを調査したデータを見ると、「混合」と「ミルクのみ」のケースを合わせて約半分のママがミルクを活用して育児をしているのがわかります。
●母乳育児を軌道に乗せるには?
出産前は「母乳は赤ちゃんが生まれたら勝手に出る」と思っているママがほとんど! でも実際は、母乳育児を軌道に乗せるまでにはいろいろな苦労があります。母乳育児を望む場合は産後直後の対応が重要。産院に相談しておくと◎。
母乳育児を考えている人や悩んでいる人には、母乳育児の準備や、先輩ママのさまざまなパターンなどを丁寧にまとめた「妊娠中のママとパパに読んでほしい しあわせ授乳サポートブック」(ピジョン株式会社/URLは参考文献ページに掲載)がオススメ。母乳育児を頑張りたいママはぜひ読んでみて。
●母乳で困ったときの相談先
「母乳育児が思うように進まない」「おっぱいが張って痛い」「スムーズに卒乳したい」など、母乳関連で困ったときの相談先には、以下のようなところがあります
・病院の母乳外来
・病院の乳腺外来
・近くの助産院(桶谷式など)
自宅近くで気軽に相談できる、助産院や母乳育児相談室などはホームページがないなど見つけづらいことが多く、ママ友ネットワークから教えてもらえることも。保健所や児童館のスタッフに相談してみるのもおすすめです。
【対処する】こんなときはどうした? 先輩ワーママの体験談
CASE 1:完全ミルク育児になったけど結果的に満足です
なぜか母乳じゃないとダメだと思い込んでいた私。産院でも「絶対に出る」と言われてかなりがんばったけど、ほとんど出ず。退院後も母乳外来に何度も通いましたが、あまり出るようにはなりませんでした。出ないおっぱいに吸い付いて泣いている子どもを見ては、泣いていました。結局完全ミルクになったけど、ミルクはパートナー、実母、義母、みんながあげることができて私も楽だったし、みんなもミルクを飲む赤ちゃんの顔を幸せそうに見て喜んでいたので、ミルクでよかったです!
CASE 2:なんとなく混合育児になりました
母乳で育てるものだと思っていたけど、産院で体重を量ると母乳の量も足りないようだったし、なんとなく流れでミルクを足していて、卒乳までそんな感じでした。哺乳瓶を洗うのが大変な夜中は母乳で、たくさん寝てほしいときの寝る前や、預けて出かけたいときや休みたいときはパートナーや一時預けに預けてミルクをあげてもらう、といいとこ取りができたと思っています。
CASE 3:最初からミルクを活用しようと決めていた!
出産前からできるだけ早く復職しようと考えていたので、保育園に預けることも考えて、ミルク中心にいこうと決めていました。産院もミルクに肯定的で、院長先生も「僕はミルクで育ったけど、こんなに元気」というおじいちゃんだったので、安心してミルク生活を始められました。子どもと一緒にいるときに、「おっぱい〜」と言われたらくわえさせてみましたが、出ていたかはわからない……。
CASE 4:がんばって完全母乳育児にしたけど……
産院が母乳育児推進だったのでそのまま完母へ。子どもが母乳を飲んでいる顔が大好きでがんばりました。ただ、大変なことがすごく多かったです。助産師さんには「最初が肝心」といわれ、完全母子同室で入院中からすでにげっそり。軌道に乗るまでは胸が張り、乳腺炎になりかけて助産院に駆け込んだり。月齢が進んでも、胸が張るので長く預けることもできず、夜もパートナーに授乳を任せられない……。寝る時間の確保が大変でした。軌道に乗って授乳間隔が空いてからは子どもが哺乳瓶拒否になってしまい、離乳食が始まるまではやはり長くは預けられませんでした。保育園に入るための断乳も大変で、助産師さんに断乳スケジュールを組んでもらい、2 カ月かけて徐々に断乳しました。哺乳瓶を消毒する必要もなく、夜中も寝ぼけながら添い乳ができるし、お出かけの時も荷物が少なくて済むのはとても便利でした! 私は母乳ライフに満足していますが、あそこまでつらい思いをしてがんばらなければいけなかったかと思うと、次の子はどうしようか悩みます。
【対処する】パートナーの巻き込み方!
その1:幸せなミルクタイムを分け合おう
搾乳をして夜間の授乳を代わってもらうことや、ミルクをあげてもらうことはパートナーにもできること。多くのパートナーが「自分にもおっぱいがあれば寝かせてあげられるのに、子どもをあやせるのに」と無力感を覚えています。授乳の時間はママと赤ちゃんのふれあいの時間、つながりを感じるかけがえのない時間です。それはパートナーにとっても同じ。愛しい時間をおすそ分けしてもいいかも。
その2:母乳じゃなくてもいいんだよ、と伝えて
パートナーに情報や意見がなく、世の中にあふれたバイアスを頼りに発言している可能性が高いです。自分の思う授乳スタイルをパートナーと共有し望むサポートや言ってほしくない言葉を伝えておきましょう。
<まとめ>
●母乳でもミルクでも大丈夫
●大事なのはママと赤ちゃんの心と体の健康
●周りの声や母乳神話に惑わされず
母乳とミルクのメリット・デメリットを知って、自分と赤ちゃんのスタイルにあった「ちょうどいい」を探していこう
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