【小児科専門医が解説&先輩ママ体験談】発達がゆっくりなのが不安になる。平均より遅くても大丈夫?

 【小児科専門医が解説&先輩ママ体験談】発達がゆっくりなのが不安になる。平均より遅くても大丈夫?
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「母親として/妻として/社会人として、こうあるべき」——『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)の著者であるみなさんが悩みを共有したところ、そのような無意識のバイアス・思い込みに悩んでいたことに気づいたそうです。本書は無意識のバイアスの正体を明らかにし、真に正しい知識や先輩ワーママの経験談を提示し、無意識のバイアスから抜け出すためにそっと背中を押してくれます。第2回は「寝返り、はいはい、つかまり立ち......いつが正解!? 発達マウント」を抜粋してお届けします。

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『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)より
『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)より

【正しく知る】いま悩んでいるあなたが知っておきたい専門家のお話

三宅 芙由さん
小児科専門医・産業衛生専門医

子どもの健やかな成長に直接影響する、発達・発育はママにとって大きな悩み事の1 つ。寝返りやハイハイなど、できることが増えていく過程を見るのはとてもうれしい反面、なかなかできるようにならない、平均より遅いと不安になるものです。赤ちゃんの発達や発育についての向き合い方を専門家に聞いてみました。

ハイハイ
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Q:「寝返り」「ハイハイ」......みんなより遅くても大丈夫?

人間の脳が発達するスピードは、あらかじめある程度プログラムされています。赤ちゃんはお母さんのおなかの中から、外の世界へ出るという急激な変化に適応して、視覚、聴覚、嗅覚さらに触覚、味覚などの感受性を豊かにし、心も身体も発達していきます。育児書やインターネット上の情報を見ると、典型的な発達パターンが記してありますが、それ以外にもはるかにたくさんのパターンが存在しています。そしてそのスピードは、一人ひとり異なります。どんな子どもも「脳の発達」が「運動の発達」につながり、伴って「神経の発達」があることによって、頭に近い所から徐々に自分の意思で動かせるようになっていきます。

【「運動の発達」の順番】

1 「首」 目で物を追うことから始まり、顔を向けられるようになります。これが、「首すわり」です。
2 「手」 触りたいものに手を伸ばし始め、腰を使って「寝返り」ができるようになります。
3 「足」 足を動かせるようになり、つたい歩きから、だんだんと上手に歩くようになります。

「運動の発達」の月齢の目安のグラフ
『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)より

<平均は気にし過ぎなくていい>

 グラフの横棒の半分にあたる部分が「平均」といわれている月齢です。ただし、半分ということは、50%の子ができており、50%の子がまだできていないという状態です。そのため、平均とされる時期にできていなくても、心配は不要です。当然のことながら、早くできる子もいれば、ゆっくり発達する子もいます。「運動の発達」には、月齢の幅があるということを知っておくことが大切です。

<乳幼児健診は適切な月齢に受診しましょう>

乳幼児健診は小児科医らによる発達のチェックが行われる重要なタイミングです。日ごろ気になっていることを質問してみる機会としてもおすすめ。乳幼児健診の実施時期はお住まいの自治体によって異なりますが、「1歳 6 カ月」と「3 歳」の健診は法的に義務付けられているため、すべての自治体で実施されています。そのほかにも自治体から案内が届く月齢の乳幼児健診は必ず受けるようにしましょう。「1 カ月」「3 ~ 4カ月」健診は多くの自治体で実施されており、さらに「6 ~ 7 カ月」「9 ~ 10カ月」健診を実施している自治体もあります。こういった時期は、それぞれの発達のチェックポイントとしても大切な時期として位置付けられています。

Q:「運動の発達」の順番が違っていても大丈夫?

「ハイハイ」をしないで立って歩く子がいることは、昔から知られています。「ハイハイ」はみんなが通る道ではなく、通らない子もいます。そのため、「発達の目安」のグラフに「ハイハイ」は入っていません。「ハイハイ」をしない子は、背這いで移動したり、お尻をすって移動する傾向があります。あなたのお子さんが「ハイハイ」をせず歩き始めたとしても、発達にはいろいろなパターンがあり、子どもの特性の 1 つであると考えるとよいでしょう。
 自分が移動したいという気持ちが「ハイハイ」につながります。動きたいという気持ちがある子にとっては、動きやすい環境を準備してあげるとよいでしょう。また、「ハイハイ」をたくさんさせようと、おもちゃなど手に届きそうなところで遠ざけてしまうことは避けましょう。

【対処する】こんなときはどうした? 先輩ワーママの体験談

CASE 1:寝返りよりハイハイが先だった!
周りの子は、3 ~ 4 カ月で寝返りをし始めていましたが、うちの子は一向に寝返りをする気配なし。寝返りやうつ伏せの練習をさせてましたが、全然寝返らない。ズリバイをしているお友達のかたわら、先に腰が据わりずっとお座りの娘。うちの子は大丈夫かしら? といつも心配でしたが、結局先につかまり立ちをして、最後に 9 カ月位で寝返り&ハイハイを同時に習得しました。単にうつ伏せの姿勢が嫌で、できるけど必要性を感じていなかっただけのようです。

CASE 2:話さなくて心配だったが、一気に言葉が溢れた
発達が早い子は、1歳後半くらいからぺらぺらと2 語文でお話をしてくれていました。うちの子は、2 歳後半になっても「アンパンマン」と「いや !」がメインで、単語での指図のみ。かなり心配されましたが、3歳になった途端、一気に今までため込んできた言葉があふれてきました。言葉の習得も個人差があるのですね。

CASE 3:1歳半でも歩かない......
1 歳をすぎたあたりから歩き始めるお友達がいる中で、我が子はいつまでたってもハイハイばかり。伝い歩きはするものの、支えなしでのあんよが 1 歳半をすぎてもできませんでした。区の 1 歳半検診でも、総合病院の受診を進められて、心配はMAX に......。病院でリハビリを行い、2 歳前にはスタスタと歩けるようになりました。今では運動会のかけっこで 1 番を獲るほど、元気に走り回っています。

【対処する】パートナーの巻き込み方!

その1:一緒に児童館や健診に行ってもらおう
児童館や健診などで他の子を目にする機会の多いママは、我が子との発達の違いが気になりやすいもの。違和感を拭えない時は、パートナーにも同行してもらい、感じていることを共有してみよう。

その2:専門機関での受診はパートナーと
健診での指摘やどうしても気になることがあれば、専門機関の受診を。継続的な通院が必要になるケースもあるので、可能な限りパートナーにも同席してもらい、一緒に話を聞くようにしよう。

<まとめ>

●発達&発育は個人差が大きく、赤ちゃんがみんな同じペースで成長するわけではないから心配しないで!
●検診は必ず受け、問題なければ気にしすぎなくてOK
●それでも大幅な遅れや違和感がある場合は、専門機関で検査を

『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)の書影
『先輩ワーママと考える 仕事と育児のちょうどいいをみつける本』(ハガツサ)
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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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