【経験談】うっかり婚から10年…私たち夫婦が「家事育児」を分担しなくてもいいと考える理由

 『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より
『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より

『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)には、24歳で交際3カ月のパートナーとの間に子どもができ、相手のことが十分にわかってなく、貯金も少ないという計画的ではない“うっかり婚”をした、こいしさんの経験談がコミックエッセイとして描かれています。前編では、元々「働きたい」という思いの強かったこいしさんに、キャリアへの思いを中心に伺いました。後編では、家事・育児を分担したいという思いが強かったものの、心境の変化があったというお話をしていただきました。

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「共有」よりも「衝突を減らすこと」を大事にしたい

——家事・育児をパートナーと分担することを理想とされていましたが、実際はどのような状況だったのでしょうか。

最初は10:0で私が担っていて、2人目が生まれてからは、きっちり分担したわけではないものの、夫が自分で「これをやったほうがいい」と思ったことを自分でやるようになりました。

ただ最近は分担することの面倒さも感じています。二人でやるようになると、お互い気になることもあるんですよね。私は「最悪、家事はしなくても死なない」と思っているので、個人的には機嫌良く過ごしていてほしいという思いが強くて。

うっかり結婚
『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より

——前編では今後、フルタイム労働も視野に入れていることをお話しされていましたが、それでも家事負担がご自分に偏っていてもよいというお考えなのでしょうか。

そもそも極力家事をやらなくていいと思ってるんですよね。家事分担は報連相が上手なパートナー同士だと上手くやっていけると思うのですが、私は結構ハードルを感じていて。

私の世代は「男性は仕事、女性は家事育児」の性別役割分業の中で育ってきているので、男女で家事の当事者意識に差が生まれやすいと思うんです。その中で共有していくことの負担が大きく感じるんですよね。

かといって、夫が何もできないというわけではなく、仮に私が事故や病気で入院しても、家は回ると思います。それに夫は子どもと同じ目線で遊ぶのが得意で、私は子どもの相手があまり上手ではないので、その点、役割分担としてお互いに無理がないとは感じています。

どんな状態がラクかは人によって違うので、夫婦で共有したい人もいれば、衝突を少なくしたい人もいるのではないでしょうか。

——こいしさんが「衝突を減らすこと」を重視しているのは、どんな理由があるのでしょうか。

私自身、子どもを叱るときに、別に嫌なことがあって、くさくさしていたときがありました。それに気づいてからは、まず自分の気持ちを整える意識をしているんですね。でもおそらく夫はそれが苦手で。夫に対して「今、怒ってるけれど、本当は別のことでイライラしてるよね?」という話もしたくないんです。

4人家族なので、それぞれ外で色々なことがあって帰宅します。全員が少しずつ嫌なことがあったら、すぐに殺伐とした雰囲気になってしまうので、不機嫌な人を一人でも減らしたいんですよね。特に子どもは、学校で嫌なことがあって我慢して帰ってきて、家で爆発することも珍しくありません。子どもの対処だけでも大変なので、さらに大人同士のイライラの原因を家庭内で作りたくないんです。

家のことが女性に負担が偏りがちなのは夫のせいではなく、社会のせいだと思います。子どもの事情で男性が仕事を休むことを快く「行ってらっしゃい」と言える会社はまだ多いとは言えないと思いますが、それは“男性社会”の問題。だからこそ、夫と喧嘩するのはもったいないと思ってしまうんです。日々を心地良く過ごすために、自分がやってしまった方が私にとっては楽なんですよね。あくまで私が自分が多く担うことをつらくないと思っているだけなので、どういう選択がベストかは、自分の状態やパートナーがどんな人かにもよると思います。

一番は文句を言わない便利家電に頼ることだと思います(笑)。働いて時短家電を買って、家事負担を減らすのがいいですね。

妊娠したばかりの頃、色々な家庭のケースを知りたかった

——読者さんからはどのような反響がありましたか。

感想と一緒に自分の家庭の事情を話してくれる人が多かったことが印象的でした。みなさんが書いてくださったことは、妊娠したばかりの私が知りたかったこと。自分が人に聞きたかったけれども聞けなかった家庭の事情を「自分の場合はこうでした」と私は本にしようと思ったんです。

親になってから知り合った人と、家庭の込み入った話をいきなり始めるのはハードルが高いと思います。SNSという匿名だからこそ言える部分はあったのではないでしょうか。みなさんのお話を伺って、家庭によって色々な事情があると改めて感じました。

——最近は、日本で子どもを産むことを不安に感じている人も少なくないですが、こいしさんは準備をしていない状況で結婚・出産を経験して、どのように感じていますでしょうか。

まず、経済的なことはずっとついて回る問題で、今でもお金のことは不安です。

独身の友達は「こんなに未来が明るくない国で子どもを産むのがかわいそう」と言っていて、気持ちはわかりますし、私も子どもが大きくなったときに大丈夫かなと心配しています。子どもの選択肢が増えるよう、子どもには英語を勉強させたいとは思っています。

一方で、コロナ禍で考えたこともありまして。私たちが子どもの頃とは全く違う2、3年を子どもたちは過ごしました。友達と遊ぶ機会が減りましたし、外遊びが制限されて、行事もできなくて、私は子どもたちをすごくかわいそうだと思っていたんです。

でも本人たちは元気で、友達とゲームのオンライン対戦で楽しんだり、タブレット端末を自由に使ったりと、私たちが子どもの頃にはなかったメリットがたくさんあるんですよね。

親は心配になりますが、その時代に合わせて子どもが育っていく部分もあるのだと感じました。私たちが子どもの頃も「昔は良かったね」と言う人はいましたが、“昔”を知る術はないんですよね。そのときどきで、たくましく生きていってくれるだろうと思っています。

『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)
『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)


【プロフィール】

こいしさん
愛媛県出身、山口県在住の二児の母。
出産を機に漫画を描き始める。
現在SNSでエッセイ漫画を更新しながら、イラストレーター・コミックライターとして活動中。
クスっと笑えてゆるっと可愛いイラストが得意。  
WEB漫画や広告漫画、PR漫画、書籍カットイラスト等のお仕事募集中。

■X(旧Twitter):@4comapic
■Instagram:@4comapic

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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