研究結果が示唆【日常生活に潜むぜんそくのリスク】「ガスコンロ」が小児ぜんそくに関連している!?

 研究結果が示唆【日常生活に潜むぜんそくのリスク】「ガスコンロ」が小児ぜんそくに関連している!?
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山口華恵
山口華恵
2024-05-16

花粉やハウスダスト、黄砂などが、子どものぜんそく症状を悪化させる原因だということは広く知られている。しかし、最近の研究結果で、ガスコンロでの調理が、実はぜんそくの発症や悪化と関連している可能性があることが示唆された。

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ガスコンロを使うと有害なレベルの二酸化窒素にさらされる

新しい研究によれば、アメリカの4千万以上の家庭にあると推定されるガスコンロやプロパンコンロが子どもたちのぜんそくを引き起こしている可能性があるということが示唆された。自宅でガスコンロやプロパンコンロを使う人々は定期的に有害なレベルの二酸化窒素にさらされているという。

二酸化窒素への暴露の多くは、化石燃料を燃やす自動車によるものだが、研究者たちは、ガスコンロやプロパンコンロから出る汚染物質が現在の小児ぜんそく患者の原因のひとつになっていると推定している。最新の研究で、約20万人の小児ぜんそくの症例のうち、25%に相当する約5万人がガスコンロやプロパンコンロからの二酸化窒素による長期間の暴露と関連していることが明らかになった。2022年の調査でも、アメリカ国内における小児ぜんそく患者の13%がガスコンロに起因していた。二酸化窒素は、高温でガスが燃焼されると生成される。高濃度の二酸化窒素を長期にわたって吸い続けると、気道の炎症や呼吸器系の問題を引き起こし、ぜんそくの症状を悪化させ、子どもの肺の発育低下や早期死亡につながる可能性がある。

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二酸化窒素は気道の炎症や呼吸器系の問題を引き起こす

学術誌「Science Advances」に掲載された今回の研究は、ガスコンロから排出される二酸化窒素とぜんそくとの関連性を初めて定量化したものである。スタンフォード大学の教授で今回の研究のリードサイエンティストであるロブ・ジャクソン氏は、「ガスコンロ使用後1時間以内に寝室で汚染物質濃度が健康基準値を突破し、コンロを消した後も数時間その状態が続くとは予想していなかった」と想像以上の深刻な影響について述べている。 

スタンフォード大学とハーバード大学の研究チームは、アメリカ国内の約100軒の家庭で二酸化窒素の濃度を測定するためにセンサーを使用した。窓が開いているか閉じているか、バーナーが低い位置にあるか高い位置にあるか、レンジフードがオンかオフかなど、さまざまなポイントをチェックした。彼らは、ガスコンロとプロパンコンロの使用によって二酸化窒素への暴露量が4ppb増加し、これは屋内外の暴露に関する世界保健機関の基準の75%に相当する。また、二酸化窒素の暴露量は、面積の小さな家、料理を頻繁に行う家、キッチンから屋外に空気を排出するためのフードがない家など、より小さな家庭では高くなる傾向があることが報告されている。

キッチンから離れた部屋でも、ガスコンロをつけている間や止めた後の数時間は、健康基準値を超える濃度になることが多い。ガスコンロによる影響を軽減するため、まずは調理時にレンジフードを使用したり、調理中および調理後に窓を開け、空気を入れ替えたりすることを心がけたい。

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出典:
Gas and propane stoves linked to 50,000 cases of childhood asthma, study finds
People with gas and propane stoves breathe more unhealthy nitrogen dioxide

Gas stoves and asthma in children

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山口華恵

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。



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