出産産後に対する印象「大変」83%に対し「幸せ」は 51%|調査から見えた産前産後の重要課題とは
一般社団法人日本リカバリー協会が参画企業とともに立ち上げた「産後リカバリープロジェクト」は、全国の20~69歳の667人への産前産後の課題に関するアンケート調査と10万人の調査から作成した「産後リカバリー白書」をもとに、参画・協賛企業、産前産後に関わる有識者、また参画企業の株式会社ベネクスのアスリートアンバサダー2名も参加し、「産前産後10の重要課題 2023」の内容を決定。産前産後に関するアンケート調査から、どのような課題が見えてきたのでしょうか?
「産前産後10の重要課題」
1. 妊娠中と比べて産後の情報が少ない
妊娠中はサポートも厚く安心感がありますが、自らで自分に合った情報を見つけざるをえないことが多い産後。しかし正しい情報や自分にあった情報を見つけるのは難しく、また、まだまだ情報量自体も不足しています。産後ケア(日帰り)の利用状況についてきいた質問では、ほとんどが「知っている」と回答しましたが、実際に「利用した」のはわずか1割「知らなかった」と回答した人の内、「知っていれば利用したかった」と答えた産後女性が約7割にのぼりました。
2. 「休めない」意識は産後1.5倍に
心や体が悲鳴を上げていても、とにかく「休めない」のが産後。時間、人手、気持ち、お金などさまざまな事情が考えられ、それは一つではなく、複数が絡み合っていることで、「役割があり、休めない」と諦めざるをえない状況に陥っているのではないでしょうか。
3. 回復が十分でないまま社会復帰せざるをえない
30年前と比べて、ワーキングマザーは大きく増加。仕事への意欲から、経済的になど、産後数か月で仕事復帰する女性も少なくありません。育休は原則として子どもが1歳になるまで認められていますが、「回復していない」と感じたまま復帰せざるをえないケースもあります。
4. 産後の体のケアの満足度が低い
「お腹の赤ちゃんのため」と、妊娠中は自分自身の体のケアに熱心だったにもかかわらず、出産した途端、お世話に追われて自らをかえりみる余裕がなくなってしまう産後。調査では、リカバリーの状態に「不満足」であると回答した産後女性が約6割という結果でした。
5. 核家族・一人親世帯などで頼れる人が少ない
産後女性の状況の困難さが語られるとき、仕事との両立と共に、“孤育て”問題が多く挙げられます。2021年の調査では、三世帯同居率はわずか13%。産前産後調査でも、頼れる人の少なさや、孤独感に疲弊しているという切実な声が多く寄せられました。
6. 妊婦歯科健診の受診率は3割
市区町村にもよりますが、妊婦健診同様、母子手帳と共に渡される妊婦歯科健診の受診票。使用率はわずか3割程度だそうです。妊娠中の体の変化が引き金となって起こる妊婦歯周病は、アルコールや喫煙、高齢出産などと比較し、早産・低体重児出産に約7倍の影響があると言われます。こうした情報の不行き届きや受診率の低さは、産前の大きな課題ではないでしょうか。
7. 今や5人に1人の帝王切開出産。心のケアへの理解不足
帝王切開出産は30年前から倍以上に。この数字に、「人ごとではない」と気づかされる人も多いでしょう。帝王切開出産の内、およそ6割が分娩中に急きょ決まる緊急帝王切開だと言われます。体の痛みはもちろんのこと、「やっぱり自然に生みたかった」など、気持ちの整理のつかないまま出産後何年も過ごす女性も少なくないそう。心のケアへの理解や対応が必要とされています。
8. パパ育休へのモヤモヤ
今回の調査で「職場や自宅で協力体制を得られているかどうか」を聞いた項目、「不満足」と答えた産後女性は7割という結果に。パパ育休制度に関しても、取得への理解や期間、時期などに対しさまざまな声が寄せられ、企業や団体それぞれの体制にあった内容作りが求められています。
9. 男性の産後うつが見過ごされている
ホルモンバランスの変化や疲労などにより、出産後の女性が陥りやすくなる産後うつ。近年の研究で、パートナーである男性も産後にうつ状態になることがわかってきましたが、男性の産後うつに対する情報や理解は十分とは言えない状況です。
10.産後リカバリーは産前から始まっているという事実
「赤ちゃんのお世話で精一杯」「常に疲れている」「睡眠不足で頭が回らない」。自らのケアをする余裕のない産後の自分のために、そして赤ちゃんの健やかな成長のためにも「産前からの情報収集や準備が、産後リカバリーの大きな助けになる」ことを産前に知っておくことが大切だと考えます。
女性の出産・産後に対する印象は「大変」83.8%に対し「幸せ」は 51.4%
アンケート調査では、妊娠中と子育て中を除いた女性の出産・産後に対する印象は「大変」83.8%に対し「幸せ」は 51.4%という回答になりました。この結果から「大変そうだから」と、子どもを持つことを躊躇している人もいるかもしれないということがわかります。また、働く女性の増加や、家族形態の多様化など、数十年前とは社会が大きく変わり、産前産後に関しても、帝王切開で出産する人が5人に1人というデータ(※1)や、男性の産後うつが増えていると言われるなど、大きく変化していることもあります。
(※1)*厚生労働省:令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況
陸上競技・女子 100m ハードル:寺田明日香選手コメント
10代のころから出場した数々の国際大会では、子どもと手をつないで歩く海外の女性アスリートの姿を何人も見てきました。約15年経つ今でも、国内の女性アスリートの環境に大きな変化はなく、結婚もしくは出産を機に引退する女子選手がまだまだ多い状況です。競技や仕事のために大事なライフイベントをあきらめてしまうのはあまりにも悲しい。出産後も選択肢があり、周囲の理解や助けがある社会になればいいなと願っています。
【調査概要】
調査名:「産前産後に関するアンケート2023」
期間:2023年8月21日~9 月20日/調査対象:全国の20~69歳の667人/男性130人、女性537人(一般(妊活中含む)105人、妊娠中(マタニティ―期)26人、出産後(子ども年齢:0か月~2 歳未満)164人、出産後(子ども年齢:2年以上)195人)/調査方法:インターネット調査/調査項目:27問
調査名:「ココロの体力測定 2023」(「産後リカバリー白書」)
期間:2023年4月18日~5月23日/SCR 調査対象:全国の20~79歳の 10万人(男女各5万人)/調査方法:インターネット調査/調査項目: 10問
※疲労度合項目:厚生労働省「ストレスチェック」B項目を基に独自加工して、点数化
※集計データ:県・年齢を実際の人口でウエイト修正を行い活用
抽出対象:全国の20-49歳/女性:30,462人(マタニティー期:2,025人、生後 0-3か月:409 人、生後 4-6か月:668人、生後7-12 か月:831人、その他未就学児あり:7,110人)/男性:20,594人(マタニティー期:501人、生後 0-3 か月:166人、生後4-6か月:237人、生後 7-12 か月:252人、その他未就学児あり:2,935人)
情報提供/一般社団法人日本リカバリー協会
リカバリー(休養)リテラシーの向上で、一億総主人公化社会に。「とても疲れてしまったので明日会社(学校)を休ませて頂けませんか?」こんな相談を受けた場合、あなたはどのように応えますか。あなたの応えそのままが、日本社会の休養に対する考え方だと私たちは思っています。国民の2人に1人が疲労を抱えて生活を送っている現代において、休むことの大切さを伝え、その重要性についての啓発・教育などの実践に取り組むことで、社会の休養リテラシーの向上により人と休養の関係性を変え、さらに科学に裏付けられたソリューションの提案を行う休養市場を創造し、ヒトが元気に意欲的に生活できる社会(各個人が主人公のような社会)を一般社団法人日本リカバリー協会では目指しています。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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