産後は「全部つらかった」完全なるワンオペ期を超えて、50代の今。田中千絵さんが語る「卒母」のこと

 産後は「全部つらかった」完全なるワンオペ期を超えて、50代の今。田中千絵さんが語る「卒母」のこと
Naoki Kanuka(2iD)
磯沙緒里
磯沙緒里
2023-11-01

心と体が大きく変化する”更年期”。年齢とともに生じる変化の波に乗りながら生き生きと歩みを進める女性たちにお話しいただくインタビュー企画「OVER50-降っても晴れても機嫌よく」。第7弾は、デザイナーの田中千絵さんにお話を伺いました。前・後編に分けてお届けします。

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デザイナーとしてだけでなく様々な活動をされている田中千絵さん。仕事人として、母として、多忙な日々を送りながらも笑顔を絶やさず軽やかに50代を過ごされている様子が魅力的です。今年に入って「卒母」について発信され、話題となっています。そんな卒母のことや更年期のこと、思い描いている将来について、お話しを伺いました。

やりたいことや楽しさに突き動かされ仕事と育児を両立してきた

ーーデザイナーとしてご活躍されながら、私生活ではお二人のお子さんを育て、お忙しい日々をお過ごしかと思いますが、その中でも臨床心理学を学ばれたり、金継ぎなど趣味の時間を大切にされたりと、活動的で生き生きとした様子が印象的です。現在はどのような過ごし方をされていますか?

田中千絵さん(以下田中さん):忙しいの感じ方もそれぞれだと思いますが、私の場合は楽しいと思って取り組む仕事が多いので、忙しさに追われる感覚は薄いかもしれません。過集中なところがあるのでよく考え た後にパパッと作業に取り組むようにして、隙間の時間でゆっくりしたり、疲れたら休んだりしています。

1日の過ごし方としては、意図的になるべく朝は家から離れるようにしています。エネルギーのある朝の時間は貴重。近くのコーヒーショップで仕事のイメージを固めたり、仕事のデータをつくったり、午前中のう ちに外でデスクワークをしておくんです。そうすると、「午前中のうちにこれだけやったから大丈夫」って いう安心感に繋がります。午後は人に会ったり、制作の時間に充てたりして、夜は早く寝るようにしています。

ーーどれくらい早く寝るようにしているんですか?

田中さん:今は21時には寝ています。以前は子供に付き合って遅くまで起きていたんですけど、子供ももう大きいし、私が付き合う必要はないと思って、私の受付時間は21時までにして、私が必要なことがあればそれまでに連絡してもらうようにしました。他にも色々変えたんですよ。

家計についても、子供に一定額を渡してしまって、子供たちも自分の予定に合わせて食材を買い物しています。全員分の食事を用意していた頃はロスが出ていたのですが、自分で管理してからは無駄がないんです。自分が食べたい時に食べたり、節約のタイミングも各自。一人暮らしのスキルにもなるので模索しながらやってもらっています。もしも間違えて予算を使い切ってしまっても、家にもお米や卵があるし私もいるから飢えることはないしね。私も老後の練習にもなるしと思って、同じ予算で模索しています。そして時々、私から餃子やハンバーグ食べ放題とか企画します。子供たちがひとりでは作らなそうなメニューは、たまにあると喜ばれるからすぐに完食。前みたいにたくさん作って子供が残したものをお母さんがひとりで悲しく食べることがなくなりました。

ーー心理学の勉強はそういった日常の隙間時間でされていますか?

田中さん:心理学はコロナの時期にぎゅっと学びました。今は勉強を続けながら、新たな取り組みも始めています。心理学を学んでいく過程で出会った児童精神科医や臨床心理士、言語聴覚士の方々とSST (ソーシャルスキルトレーニング)を実施するウェブのプロジェクトがあって(現在休止中)。私もコーチとして保護者やASDの子供にセッションをするような活動に参加させていただきました。そのプロジェクトでの発見が多く、その流れで仲良くなった臨床心理士さんとか児童精神科医の先生とこの秋、NPOを立ち上げたんです。「お母さんを孤独にしない」NPO。日本は「恥」の考え方が強いので、お母さんが家の中のことを外に出すのは恥ずかしいとされる文化だからつい抱えがちなんですよね。だから孤独になりやすい。 子供が小さくても思春期でも、どのフェーズでもそれなりに悩みを抱えていたりトラブルを抱えていたりするから、そういうことを広く相談できる人たちが欲しいと思うんです。NPOでは実務は福岡の専門家チームが福岡で実施して、それ以外のオンラインでできるデザイン提供や、広報活動など、中のことを一緒にやっています。

ーー素敵な活動ですね。デザイナーのお仕事をされながら心理学の勉強とNPO法人の活動。やっぱりお忙しそうです。笑

田中さん:あと、今は本を書いています。ラジオもやっていますね。でも昼寝もしていますよ。チャンネルがたくさんあると私にはちょうどいいんですよね。ずっとデザインの仕事だけだとちょっと息が詰まっちゃう。

ーー色々とやることがあっても落ち着いて過ごされている様子が印象的です。

田中さん:「こうありなさい」という考えが強い環境で育ったから、そこにがんばって適応させてきたので、そのがんばりが今役立っているのかもしれません。 そんな私でも子供が小さい時は完全にワンオペで大変でした。仕事をしていると、やっぱりやりたいことや楽しさがあるので、それに支えられて動いていました。やらなきゃいけないことがあるから、家事は素早く終わらせてしまうようにしたり、なんとかできる方向に組み込んでいくというか。

田中千絵
photo by Naoki Kanuka

子供が小さかった時のような頑張りは、50代では難しい

ーー産後のホルモンバランスの乱れは感じましたか?

田中さん:産後はやはり初めてのことだらけで混乱していてつらかったですね。若かったから自分の体のつらさは見ないようにしてもどうにかやれたのですが。

ーー産後は思うようにいかないことが多いと思いますが、どのようにしてご自身を保っていましたか?

田中さん:時々、子供と一緒に泣いていました。そしたら子供が泣き止んだりして。笑 混沌としたままずっとやっていましたね。精神的には今よりずっと幼かったと思うし、落ち着いているわけがないんですよね。仕事があったからなんとか自分に戻れる時間があったけど、あとは混沌としていましたね。

ーー混沌としていた時期はお子さんが小学校に上がるくらいまでですか?

田中さん:そうですね。小学校に入ると少し落ち着く時期があって。子供の成長とともに大人がいれば私が出ていてもお留守番ができるようにもなるんですよね。その時期新しい色々な人に会いたかったので、なんとか工夫していました。 日本にはいまだに母親が自分のことは後回しで子供や家族に尽くす「母性神話」が強い印象がありますが、 私はそういうものから脱却したいと早いうちから思っていたんです。人との付き合いを辞めたくなかったし、仕事もたくさんはできなくても細々とでもいいから続けたいと思っていました。今でもそれは大事なこ とだと思います。やめないで続けている方が、私らしかった。うちの子供はたまにお願いすると自分でごはんを作ることを楽しんでいました。私が仕事で出かけていると、「ご飯炊いておいたよ」と言ってくれるとかね。子供も早くから家事に興味を持ってくれたので、私も助けられました。

ーーやるべきことがたくさんある時、どんな工夫をしていますか?

田中さん:「よし!この洗濯を5分で終わらせるぞ!」と負荷をかけるとか、工夫しながらやっていましたね。やりたくないことだから、だったら早く終わらせるしかないと思って。気合いでしかないです。ミッションをぎゅっと詰めて、気合いで乗り切っていました。

子供が小さい時はケアしてあげないといけないから、がんばりも必要だったし、それはそれでよかったと思うんです。でも、50代に入ってもそのやり方でいけるかっていったら絶対に無理だと思うんですよね。元々そんなにエネルギーがあるほうでもないんですけど、40代後半からどんどんエネルギーがなくなっていったし、老眼も気になるようになってきた。デザインって細かい字も見なきゃだけど、「あれ?見えないかも?」って。私が見たくないから見えないのか、老眼で見えないのか。年齢とともに、やっぱり色々ありますよね。

*後編に続きます

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磯沙緒里

磯沙緒里

ヨガインストラクター。幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。学生時代にヨガに出合い、会社員生活のかたわら、国内外でさまざまなヨガを学び、本格的にその世界へと導かれてインストラクターに。現在は、スタイルに捉われずにヨガを楽しんでもらえるよう、様々なシチュエーチョンやオンラインでのレッスンも行う。雑誌やウェブなどのヨガコンテンツ監修のほか、大規模ヨガイベントプロデュースも手がける。



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