【レビュー】女性"活躍"ではなく女性"活用"?私たちは皆、資本主義という災害の被災者である

 【レビュー】女性"活躍"ではなく女性"活用"?私たちは皆、資本主義という災害の被災者である
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「家庭の天使」の死後の世界

女性が「家庭の天使」でなくなった世界、それは、スウェーデンのように、9割の男性も育休をとることができ、(男女関わらずケアに従事する必要があるため)過労死するほどの労働が求められていない世界かもしれない。

ただし、資本主義の論理に突き動かされ、「ケア労働はできるだけ安く外注することが正義」という方向に進んでしまえば、結果的に移民の家事労働者(主に女性)や経済力のない女性にしわ寄がいくことになる。さらに出産も外注することになれば、代理母(貧しい地域の女性)が出産という命がけの労働を担うことになるだろう。経済競争力が弱まっている日本の女性が、将来的に、移民家事労働者、代理母になる選択を迫られ、資本主義という災害をモロに食らう可能性も、ゼロではない。

資本主義による災害が今後縮に向かうか、拡大するかは未知数だ。ただ、女性活躍を謳いながら女性の貧困に口をつぐむようなやり方は、被害の拡大の後押しに他ならない、という点だけは明らかだろう。

生きるためのフェミニズム
『生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義』堅田香緒里・著(タバブックス)

※1 女性活躍推進法特集ページ 厚生労働省

※2 Japan pays a high price as it goes down market  ASIA TIMES

※3『男たち 女たちの恋愛 近代日本の自己とジェンダー』(田中亜衣子著、勁草書房)
明治時代に「夫婦愛」という言葉が誕生し、夫のためにケア労働を引き受けるのは愛だという価値観が作られた。

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原宿なつき

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。「wezzy」にてブックレビュー連載中。



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