「女としてナイ」「男としてどうなの」無意味で不平等な決めつけ、もうやめませんか?#とびきり自分論

Cho-Hikaru

「女としてナイ」「男としてどうなの」無意味で不平等な決めつけ、もうやめませんか?#とびきり自分論

誰かが決めた女性らしさとか、女の幸せとか、価値とか常識とか正解とか…そんな手垢にまみれたものより、もっともっと大事にすべきものはたくさんあるはず。人間の身体をキャンバスに描くリアルなペイントなどで知られる若手作家チョーヒカル(趙燁)さんが綴る、自分らしく生きていくための言葉。

それはいけすかない飲み会だった。

新進気鋭の若い作家Aとその仕事の関係者を集めた懇親会、という体ではあったが要はみんながその作家に媚を売って持ち上げまくるという会だった。まだコロナのコの字もない頃だったので、都心某所の居酒屋で私たちは密をしていた。いい感じにみんなの脳みその機能が停止してきた頃、会話がより下世話になっていく。

「いや、Aさんはなんで女いないんすか!?」

恋愛対象が異性であるとの決めつけとか、恋人がいないのはおかしいみたいな空気感とか、いろんな気持ち悪さの詰まった一言を誰かが発した。まあ別にいいんですけど。私も恋人について聞いてしまうことはあるし、こんなもんですよね飲み会って。

「うーんいい人がいないんですよね」

「あ、めちゃくちゃ理想が高いとか!?」

「いやいやそんなことないですよ〜」

どうでも良すぎてゾーンアウトしてしまう。あー、日本酒うまいな、うまい水だな。酒盗をクリームチーズに乗せたやつめっちゃ合うな〜。

「じゃあタイプは!?」

「え〜、あ〜…あれですね、腕毛が生えている人はちょっと女としてナイ(笑)」

カタッ

勢いで箸を机に置いてしまった。

場は「あ〜!なるほど〜!」と共感の笑いで包まれている。

落ち着け落ち着け、ここは友人間ですらない飲み会。会話に期待している方がおかしい。この人たちと長く付き合っていくかもわからないし、ことを荒立てずニコニコしてこの場をくぐり抜け……られん!!!!!!!!!

「なんでですか?」

作家からかなり遠い席に座っていたので結構なボリュームで発した。予想外の反応にみんな顔に混乱がよぎっている。

「女も男も毛は生物的に生えますよね?なぜ女性だと毛を剃ることが義務だと?あ、生理的に毛が無理なんですか?あれ?でも腕に毛…生えてらっしゃいますね???あれ?じゃあもしかして剃毛は女だけに強制されるべきだと?不思議!なんでですか!?」

自分でも意地の悪い畳みかけ方をした自覚はあります。アルコールの助走も効いてスタートダッシュが早くなってしまった。でも、存在する意味をなさない不平等なルールで誰かを「女として無い」と笑う場に、混じりたくなかった。海外に行けば男女関係なく腕毛も脇毛も生えていても気にしない国がごまんとある。その程度のものなんです。それをさも「女として当然」だと、自分の狭い視野をひけらかして。自分でやりたいと思ってする剃毛も化粧も全然いい。だけど、謎の性別ルールで他人を貶める要素として使うのはやっぱりおかしい。ちなみに私は毛のビジュアル自体が好きでは無いので剃毛もします。

「いやいやチョーさん落ち着いて、ただの好みだから」

「そうそう、好みは人それぞれでしょ……」

「いや、でも『女としてナイ』とおっしゃってましたよね?それは単純な好みではなく女性は剃毛して然るべきという固定観念からですよね?その意識自体おかしいと思いませんか?」

この辺りで飲みの場の空気は地獄と化しており、なんだこの痛い女はという視線を全身に受けた私は喫煙所に先輩に連れゆかれちょっと泣いたりした。

こんな場は今まで何度もあった。女性に対しての発言だけでもない。「女の子だから乱暴な言葉遣いは…」「女の子の部屋汚いと引いちゃう」「女捨ててるなー!」「えー男としてそれはない」「男が奢らないとかあり得なくない?」「○○歳でまだ結婚してないの?」そういう違和感を、場の空気を悪くしたくない一心で飲み込んできた。私もそういう言葉を発してしまったことが何度もある。でもふと思うのだ。誰かが「それおかしくないですか?」と言わなかったら、これって一生変わらないんじゃないか。違和感に声をあげる人、気付く人が一定数になってようやく風向きが変わるんじゃないか。誰かがいつかどうにかしてくれる、なんて起きないんじゃないか。

もう「ああいうこと言うとめんどくせえやつに絡まれるんだな」くらいの認識から始まるのでいい。そもそもディスカッションが行われるべき事象であると意識されるだけでいい。生きているだけで大変なのに、より私たちを生きづらくしている意味不明なルールを少しずつでいいから壊していきたい。焦らない。でも絶対に黙らない。

ライター/趙燁(チョー ヒカル)

1993年東京都生まれ。2016年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され、衣服やCDジャケットのデザイン、イラストレーション、立体、映像作品なども手がける。アムネスティ・インターナショナルや企業などとのコラボレーション多数。国内外で個展も開催。著書に『SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ』『ストレンジ・ファニー・ラブ』『絶滅生物図誌』『じゃない!』がある。twitterinstagramでも発信。

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