体毛をどうするかはあなた次第|体毛にまつわるボディポジティブを考える

 体毛をどうするかはあなた次第|体毛にまつわるボディポジティブを考える
Photo by Billie on Unsplash

ボディポジティブはプラスサイズな体型だけのものではありません。ありのままの身体を愛し、自由をつらぬく方法のひとつに、体毛にまつわるボディポジティブがあります。

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タブーをくつがえす動き

体毛を取り巻くタブー視や脱毛の習慣は、アメリカでは19世紀に入った頃から始まり、現在の日本でも体毛の手入れは「エチケット」として処理することが当然になっています。

日々の生活で電車に乗ると頻繁に脱毛の広告が目に入り、女性は常に体毛を無くさなければならないような錯覚に陥ります。

体毛を処理したほうが快適だったり見た目が良いと思うのは個人の自由ですが、生やす自由やありのままでいる自由を表現する人も現れています。

2019年、NIKEが広告で脇の毛が生えたモデルを起用した際、賛否両論の議論が起こりました。その反応の多くは、女性は体毛など生えていてはいけないという戸惑いが感じられました。

19世紀の初期からはじまった体毛のタブー視に女性が異議を唱え始めたのは、フェミニズムのスローガン「My body, my choice(私の体、私の選択)」やヒッピームーブメントが盛り上がる1970年代に始まりました。

1972年に出版されたフェミニズム雑誌「Ms.」で『体毛──最後のフロンティア』という記事を掲載し、そのときもナイキの広告同様に物議を醸しました。女性に脱毛を押し付けて、ありのままの女性の姿を許容しない社会への批判でした。

体毛の自由に関する問題提起は現在も「毛深いフェミニスト」という文化的なシンボルとして女性たちに支持され続けています。

 

さらに、マドンナと娘のローデス、ホールジーなど女性をエンパワーする著名人も体毛を処理していない姿をポジティブに表現しています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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男性と女性で異なる毛のタブー

日本で日常的に見かける電車の「毛」にまつわる広告は、女性向けには「身体の脱毛」を、男性向けには「頭髪の育毛」を推奨している違いがあります。男性にとって健康や生活の支障がなくても、頭髪が薄いことは「治療対象」として煽られています。

ロンドンのプラスサイズのモデルBen Whitは、体型だけではなく薄毛もポジティブに見せるためのモデル活動をしています。彼は率直に頭髪が薄くなることに対しての世間の偏見について発言をし、男性たちの共感を得ています。

男性が自分の身体について語ったり表現する方法が限られている状況で、彼のような存在が現れたのは時代の変化と言えます。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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頭髪の問題は女性にもあります。髪は女性らしさ、アイデンティティ、自尊心と結びつけられがちで、頭髪を失うことに対して当事者がスティグマ(不名誉な烙印)として捉えてしまうことがあります。

モデル兼ウィッグデザイナーのジーナ・ターナーは、持病で9歳から頭髪が抜け始め、12歳でスキンヘッドの状態になりました。TV番組に出演し、有名ブランドのモデルを務めて髪があってもなくても、自分を愛し自分が好きであるというメッセージを積極的に伝えています。

 

男性の体毛のお手入れについても見せ方が変化しています。
世界的に有名な電気シェーバーブランドのフィリップスは、"All in one for all you need"のキャンペーンで、体毛の手入れが手軽にできる製品の魅力を伝えるため、画一的ではない多様な体型や体毛を持った男性を登場させました。プラスサイズの人、毛深い背中の人、ネイルをした美意識の高い人など男性性にいろいろな形があることを伝えています。

 

他者のジャッジは気にしない

これまでにあげた体毛にまつわるポジティブな動きからわかるのは、体毛の悩みがある場合、「一般常識」に合わせて隠したり処理するよりも、まず自分自身がどのように悩みと向き合っているか考えてみることが重要かもしれないということです。

「なぜ気になるのか?」「自分にとってどんな意味があるか?」を考えた結果、どうするかはあなた次第ですが、自分で判断することは不自然な「他人軸」よりもずっと良いことです。

ソーシャルメディア上の投稿や広告、そして街の広告で、「一般常識」に合わせて自分の身体を「アップデート」しなければならないように思わされています。ですが、ボディポジティブやボディニュートラルなどの新しい価値観に出会えるのもソーシャルメディアの良い点です。

日本でもファッションの領域でプラスサイズのモデルたちが活躍しているように、「体毛」についてポジティブなメッセージが日本で増えてくる日は近いかもしれません。

参考書籍:「脱毛の歴史: ムダ毛をめぐる社会・性・文化 (東京堂出版) 」レベッカ・M. ハージグ

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AUTHOR

中間じゅん

中間じゅん

イベントプロデュースや映像制作を経て、ITベンチャーに。新規事業のコンセプト策定から担当。テクノロジーとクリエイティブをかけ合わせた多様なプロジェクトの設計に参画。社会課題やジェンダーの執筆活動を行う。



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