【レビュー】女性"活躍"ではなく女性"活用"?私たちは皆、資本主義という災害の被災者である
『生きるためのフェミニズム パンとバラと資本主義』(タバブックス)の著者で社会学者の堅田香緒里氏は、「女性のため」と喧伝されがちな「女性活躍」の実態は、「資本主義のため」「経済のため」であり「女性活躍ではなく女性活用だ」と喝破している。
女性活躍推進法は、「女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進」するために作られたもの(※1)であり、女性をいかに経済活動に組み入れるかが主眼となっているものだ。しかしそこでは、経済活動に従事した際に、誰が家庭内のケア(育児、介護、看護)に重視するのかという視点は抜け落ちている。また、男女の賃金格差といった不平等の解消はおざなりだ。現状の不平等を放置した上で、女性の労働を推進することは、女性にケアも賃労働も担わせ、過重労働をさらに推し進めることになりかねない。
日本のシングルマザーの現状を考えると、著者の主張は真っ当なものだとわかる。
現状、約半数のシングルマザーが相対的貧困に苦しめられている。ふたりにひとりという先進国でも類を見ない貧困率を叩き出しているのは、彼女たちが働いていないからではない。シングルマザーの雇用率は87.8パーセントとOECDの中ではもっとも高い。先進国のなかで、日本のシングルマザーは最も働きものであり、最も貧しいのだ。(※2)
女性活躍が女性のための号令であるならば、まずは女性の貧困減少に取り組むべきだが、現状そうはなっていない。資本主義の根幹を支える育児を無償で引き受けながらも、低賃金労働に従事してくれる彼女たちの存在は、資本主義にとって有難い存在であり、十分すぎるほどに「活用」できている。それゆえ、変化は必要ないと目されているのだろう。
なぜこんなことになってしまったのだろうか? 堅田氏は言う、「私たちはみな、資本主義という恒常的な災害の被災者である」と。
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